Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

評伝 野上彌生子

2018-04-20 09:26:50 | 読書
岩橋 邦枝「評伝 野上彌生子―迷路を抜けて森へ」新潮社 (2011/9).

石井桃子 1907-1908 に続いて,野上弥生子 1885-1985 の評伝.大学で次男の野上茂吉郎先生,三男の野上耀三先生の講義を受けたので,この作家に興味があった.
著者 (岩橋) はなかなか野上彌生子に手厳しい. 裕福な家の出で,格下の野上豊一郎 (漱石門下,法政大学総長) を家庭教師から夫に格上げし,経済的な苦労とは無縁なザアマス夫人だが,戦時中は食料を買い占めたり...と,あまり付き合いたくない人種と思わせるように,わかりやすく描いている.隣の子が孫のところに遊びに来るのが教育上よくないと,鉄条網をはったりするのだ !!

尾崎真理子が石井桃子の評伝で,対象にベタ惚れ?なのと対象的.尾崎本によれば,石井は野上が苦手だったそうで,原稿を取りに行くのもヒトに押し付けていたという.

野上弥生子は大器晩成型という評価で,若い時の作品はつまらないが「迷路」「秀吉と利休」「森」などはちゃんと賞賛している.「森」は読んだ覚えはあるのだが,自分には合わない,と思った.

Amazon より,内容(「BOOK」データベースより)*****
夏目漱石の指導を受け、二十二歳でデビュー。生涯休むことなく小説を書きつづけ、百歳直前にしてなお傑作『森』をものにした野上彌生子。中勘助への秘めた初恋の想い。野上豊一郎との勉強仲間のような夫婦生活。六十八歳になってから恋文を交わしあった田辺元。死の瞬間までアムビシアスでありたいと願った彌生子の書き下ろし評伝。
*****

☆☆☆★
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評伝 石井桃子

2018-04-19 08:33:23 | 読書
尾崎 真理子 「ひみつの王国: 評伝 石井桃子」新潮文庫 (2018/3).
単行本は新潮社(2014/6).

内容(「BOOK」データベースより)*****
菊池寛に編集を学び、太宰治に恋され、「プーさん」を訳し、「ノンちゃん」を生み出した。石井桃子とは誰だったのか? 200時間におよぶインタビューと膨大な書簡をもとに仕事、生活、戦争秘話まで101年の稀有な生涯を描き尽くす。児童文学の巨星、初にして決定版評伝 ! *****

実家に居づらく自活を目指し,文藝春秋社で菊池寛のもとで働き,文春を離れてから「プーさん」を訳し,井伏鱒二に「ドリトル先生」を訳させる.「ノンちゃん..」が徴兵された男友達の間で回覧される.終戦と同時に開拓をはじめ肥桶をかつぐ (ほく的にはここがクライマックス).社員に村八分にされながら岩波少年文庫を立ち上げる,等々.小説「幻の朱い実」の実態が書かれ,石井が結婚しそうになったことにも触れている.石井桃子がこんな波乱万丈の生涯101年を送ったなんて,ちっとも知らなかった.

一次資料が随所に引用され,論文みたい.内容がびっちり詰まっているが,文章は読みやすい.石井への深い敬愛が感じられるが,対象が著者の手に余っている感もある.

写真も多数.おしゃれで可愛いと思うが,同時代同年代の異性からみたらどうだろう,わからない.
装丁には単行本と同様,しかし別なヘンリー・ダーガーの作品.

☆☆☆☆★
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ねこしんじゃった

2018-04-18 10:24:46 | 新音律
拙著「音律と音階の科学」で,ヨナ抜きソングの例として「猫踏んじゃった」をあげたのだ.その際,旧版そのままに階名をラソドミミとしたら,校正でラソミドド(ドは上のド)が正しいと指摘された.忘れていたのだが,この件は旧版出版直後の2007年に太田和孝さんから指摘されていた.

ご幼少のみぎり(戦争直後・裸足ではなを垂らしていたことだろう),これを歌っていた記憶がある.下の画像は wilipedia の「猫踏んじゃった」から転載したが,ポリフォニーの部分は歌唱力不足により,○で囲んだ下の方で歌っていた.歌詞は「猫死んじゃった」で,多分最初の3小節,せいぜい5小節くらいを繰り返しわめいていたのだと思う.

フラットがたくさんついているのは,子供が黒鍵だけで弾くため...でも楽譜なんか見ない方が,早く弾けるようになりそう.



その後1954年に伴久美子ちゃんのレコードが出たときは,こちらはすでに「猫死んじゃった」は卒業していた.しかし「踏んじゃった」という歌詞を聴いてかなり違和感があった.丘十四夫作詞とあるが,死んじゃったではまずいからと,苦心した結果だろう.おまけにやけに長い曲になっていたが,盤面には山口保治採譜編曲とある.



「猫ふんじゃった,猫ふんじゃった,猫ふんずけたぁら死んじゃった」という替え歌があるそうだ.歴史は繰り返す!

「猫死んじゃった」だけをわめいている分にはいいのだが,その後曲にはすぐにヨナ抜き音階には収まらない音(楽譜の矢印)が現れる.というわけで,新装版「音律と...」では猫踏んじゃったは姿を消す予定.
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月刊「日本橋」

2018-04-17 14:45:45 | 読書
美国屋のレジでもらったタウン誌.銀座のタウン誌「銀座百点」に比べると,金がかかってない感じ.レイアウトもダサいが,その分中身は濃いかもしれない.

冒頭の写真はカラーページの「逸品 ちらしずし・吉野鮨本店」.この吉野鮨で名がついたトロも入っている.水分の多い新米ではなく,古米を使った鮨飯の間にはかんぴょうを挟み,タネの下にはエビと白身のそぼろを敷き...
先日行ったときは休みだった !

毎号浮世絵が表紙だが,この号ではそれに続いて,特集「西洋音楽と日本橋」.明治42年に結成された,三越少年音楽隊をテーマに論文を書いた三枝まりさんがご登場.



南伸坊が西郷どん(せごどんと発音するらしい)に扮装し,西郷さんゆかりの地をうろうろした話とか,松山善三・高峰秀子夫妻の養女・斎藤明美さんによる親の結婚のはなしとか.「東京っこことば」の林えりこさんの連載のタイトルは「三文判ハ いくらだと たはけもの」.読みどころ満載.

また日本橋界隈をうろうろしたい !

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日本橋 うなぎ 美国屋

2018-04-16 09:42:55 | エトセト等
昼どき,目当ての吉野寿司がなぜか休みだったので,しかたなく高島屋の裏通りを日本橋方面に歩いて言ったら,美国屋があった.かっては高島屋と路地をはさんで反対側にあり,狭い土地の3階か4階建てで,うなぎの寝床を立てたみたいな建物だった.ビル建設で一時的に立ち退いているらしい.

昭和40-50年代は安くて行列ができる店だったが,今は落ち着いている.接客は昔よりいい.そのせいかうなぎも美味しくなった感じ.でも写真の1日 20 食限定 2200 円のうな丼は,量的には年寄り向き.たっぷりのお新香がよい.
壁に矢野顕子の LP が額装されていた.

コーヒーが飲みたくて隣の羅苧豆 (ローズと読む) へ.こちらもビル建設で移転してきたらしい.むかしはレトロで重厚な雰囲気があったと思うが,今は明るすぎて,店番のおばあちゃんともども,仮設避難住宅感なきにしもあらず.お店の人とシリア空爆について話したりして,下町感じゅうぶん.本日のサービス・フラジルは美味しかった.
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モース博士のティータイム

2018-04-15 11:05:51 | お絵かき


銀座 K.Itoya の,松本里見・銅版画展「ロマンティック」で,あまりロマンティックではない作品を衝動買い.1/100 なんて初めて !

このおじいさんは,大森貝塚の Edward Sylvester Morse (1938-1925) だろう.

作者はロックのミュージシャンでもあるそうだ.

会場は額縁売り場.かっこいい額縁多数.カタログをくださいと言ったら,カタログはないからスマホで写真を撮って行ってください,とのことだった.思ったほど高くない.
左はなんとなく撮ったリンゴビルの横側.

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Syzygy ライブ

2018-04-14 09:31:08 | エトセト等
4/12 神田神保町 視聴室。内装皆無だがライブハウスらしき空間。

昔、ハリー・パーチという純正律信者が、理論的に29音を計算し、しかしそれだけでは物足りず好きな音を隙間に追加して,オクターブ43音という音階を作った。それを実現したのがSyzygys、シジジーズのオルガン。アコースティックなオルガンは重量30kg もあるので,写真のライブ用は電子化されている.



だからシジジーズの音楽は、微分音律と純正律のふたつを備えている。冷水(しみず)ひとみ kb、西田ひろみ vln の2人組。バイオリンは純正5度調弦なら、オルガンに合わせることは、至難の技だが不可能ではないのだ。
しかし冷水さんの MC によれば,43 も音があっても,バイオリンの調弦をアラブ流にするとちぐはぐになるらしい.

終わってから冷水さんに「気持ち悪くならなかった?」と聞かれた。自分で微分音楽を作ったこともあるので、その心配がよくわかる。大音量で2時間も聴いたのは初体験で、確かに頭がボーっとなったが、不快感はなかった。
下の動画のように,BとCの間に数音が存在し、なかなかBからCにたどりつけなかったりすると、なまじの絶対音感の持ち主は頭がおかしくなるのかもしれない。

23年ぶりのソロライブとのこと。sumo 組曲, furacoco などCDで聴いた曲を、始めてリアルに聴いて感慨があった。新曲(曲名忘れました)もスイングしていた。
自分だったら、ドラマーに協力してもらい、計算機音源で音色も多様化したくなるところだが(ふるいCDはそういう方向もあったと思う)、そちらは潔しとされないのでしょうか。

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上京 墓参

2018-04-13 06:25:22 | エトセト等

妹は毎年来ていたが、こちらは何年かぶり。親不孝を叱りそうな親類は、皆亡くなってしまった。

屹立しているのは実は裏の御宅の墓石。うちのは手前の横長い長方形で、文字がわからない。
ツツジが野放図に綺麗。
石の隙間からススキが成長を始めつつあり、左の柘植の木が枯れていた。
櫛に加工できないものだろうか。

東京近郊の市営墓地。子孫もいないので、墓地返還を考慮中だが、信心深い浄土真宗の家庭で育ったJ子は、気が進まないらしい。102歳まで生きた義母も、そう言えば「わたしのお墓の前で…」という歌が大嫌いだったそうだ。
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東京の蕎麦

2018-04-11 20:44:52 | エトセト等

上京中. J子はお友だちと美味しいものを食べに行ったので,こちらはホテル周辺,芝界隈を徘徊.
更科布屋があったので,酒と野菜天ぷら,あとでよもぎ切り蕎麦.
酒は白瀧のつもりが白龍.こちらの目が悪くて読み違えたためだが ,甘すぎ.
変わり蕎麦は月替わり.よもぎ切りはとても美味でした.

4x4=16人座れろ大テーブルに4–5人.対角線のおじさんも,所在ない様子で,ビールで天ぷらだった.おんなどうしなら,「おともだち」になるんだろうが…
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吉野源三郎

2018-04-11 08:55:38 | 読書
「君たちはどう生きるか」が漫画化されベストセラーになっている.

小学校高学年の頃,おできができて数日外科に通ったことがある.ここに,戦前発行のこの本が置いてあった.他に読むものもなかったので,読んだと思う.コペルくんという名前や,挿絵は断片的に覚えているが,面白かったという記憶はない.
この歳で「どう生きるか」もないもんだが,漫画なら,流行が終わったら図書館で借りてみようか.

尾崎真理子「評伝 石井桃子 秘密の王国」新潮文庫(2018/4)
で,石井桃子が吉野源三郎のことを「理屈を非常に明確に人に話すことはできるけれど,洒落やなんかはまるで通じなかった」と言っている.岩波にいた吉野のもとに,「くまのプーさん」の原稿を持って行ったら,「訳した文章の『これはどういう意味ですか』っていちいち訊かれて,いちいちジョークの説明をしなくちゃならなくって...」

そうう真面目人間でなければ「どう生きるか」などという,ある意味恥ずかしい本を出したりするんだろう.
でも戦前の嫌な時代に書かれたこの本が,この嫌な時代の道徳の副教本になるのだとしたら,喜びたい.
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