【米大統領選】:「激突・民主2強」(上)戦略欠いた「中道連合」 バイデン氏10勝
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【米大統領選】:「激突・民主2強」(上)戦略欠いた「中道連合」 バイデン氏10勝
【ワシントン=岩田仲弘】米大統領選の野党民主党候補者選びで、三日の「スーパーチューズデー」に実施された十四州の予備選のうち、中道派のバイデン前副大統領(77)と左派のサンダース上院議員(78)が競り合っていたメーン州はバイデン氏が勝利を確実にした。米メディアが四日、一斉に伝えた。
2月29日、米サウスカロライナ州コロンビアで支持者を前に演説するバイデン氏(中央)と拍手を送るクライバーン下院議員(中央右)=ロイター・共同
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バイデン氏は十四州のうち十州で勝利。メーン州はサンダース氏の地元バーモント州に近く、事前の世論調査でも同氏がバイデン氏を引き離していた。二〇一六年大統領選の党候補者選びでも、クリントン元国務長官に圧勝していただけに手痛い敗北となった。
また、スーパーチューズデーから参戦した中道派の大富豪ブルームバーグ前ニューヨーク市長(78)は四日、候補指名争いからの撤退とバイデン前副大統領への支持を表明。声明で「私はドナルド・トランプに勝つ最適の候補の下で結集すべきだと信じてきた。昨晩の結果からそれはジョー・バイデンであることは明らかだ」と指摘した。
◆左派恐れ バイデン氏を消極的選択
「サンキュー、サンキュー、サンキュー、サウスカロライナ! 親友のクライバーンが私をここに連れてきてくれた!」
二月二十九日夜、米南部サウスカロライナ州コロンビア。壇上に上がったバイデン前副大統領はそう叫んで勝利宣言すると、傍らにいた一人の黒人男性とがっちり握手を交わした。
同州選出のジム・クライバーン下院議員(79)。州の民主党支持層の六割を占める黒人有権者に絶大な影響力を持つ有力者で、三日前にバイデン氏の支持を表明したばかりだった。
中道派のバイデン氏は、米大統領選の民主党候補者選びの序盤戦で続けて惨敗。最後のとりでの第四戦の同州でも、一時は左派サンダース上院議員に迫られるどん底状態だった。ぎりぎりで、クライバーン氏の支援を得て圧勝した。
この勝利をきっかけに、乱立していた他の中道派候補の撤退と支持表明を取り付け、一本化に成功。今月三日の「スーパーチューズデー」で驚きの復活劇につなげた。四日には新規参戦の大富豪ブルームバーグ前ニューヨーク市長も撤退とバイデン氏支持を打ち出さざるを得なくなった。
バイデン氏はもともと本命視されていた。経験や知名度、穏健な政策で中西部の中間層などから幅広い支持が期待でき、「トランプ大統領に勝てる候補」との位置付けからだ。サウスカロライナ州の支持者マイケル・エビンさん(49)は「人々を安心させ、まとめてくれる」と評価する。
だが、選挙戦が始まると、本選挙で重要となる中西部を含め、他の中道派候補に後れをとった。
「バイデン氏は年を取りすぎ、失言癖もある。若く新しい候補が必要だ」。初戦のアイオワ州で二月、同じ中道派のブティジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長(38)を支持する建築業のトーマス・ニッカーソンさん(46)は語った。
スーパーチューズデーでバイデン氏は、オバマ政権の遺産を生かして黒人票を確保し、中道派の「連合軍」結成で十四州中十州を制したが、本当に「勝てる候補」なのかと疑問視する向きもある。
中道派が急にまとまったのは、左派サンダース氏の強さを恐れ、慌てたからだ。バイデン氏に落ち着いたのは他の候補が伸び悩む中で消極的選択にすぎず、戦略なき結集ともいえる。
サウスカロライナ大のタッド・ショー准教授は「オバマ政権時代を評価する有権者はバイデン氏を支持するが、『結局何も変わらなかったじゃないか』と不満を抱く有権者を新たに引きつけるだけのエネルギーには乏しい」と指摘する。
スーパーチューズデーで勢いを得たのはバイデン氏に好材料だが、最大の目標である「打倒トランプ氏」への不安は尽きない。
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十一月の米大統領選で再選を目指す共和党のトランプ大統領に対抗する民主党の候補者選びは、中道派バイデン氏、左派サンダース氏の二強がせめぎ合う形となった。序盤の戦いぶりから今後の展開を探った。(アメリカ総局・金杉貴雄)
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 国際 【北米・米大統領選】 2020年03月06日 06:15:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。