【社説①】:ロシア憲法改正 領土解決の責任免れぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:ロシア憲法改正 領土解決の責任免れぬ
ロシアの憲法改正は近く実施される国民投票を経て、発効する見通しとなっている。
改憲によりプーチン大統領(67)は2024年の任期満了後も続投でき、最長で83歳になる36年まで大統領を続けられるようになる。
事実上の「終身支配」を認めることになれば、独善的な統治が長期間続きかねず、極めて危うい。
見過ごせないのは「領土の割譲禁止」が明記されたことだ。
北方領土返還への反対論がいっそう高まることは避けられまい。
改憲いかんにかかわらず、旧ソ連が北方四島を不法占拠した歴史的事実は消えない。法と正義に基づけば、旧ソ連の継承国ロシアは領土問題を解決する責任を負う。
自国の憲法を盾に、四島の返還を拒むことは認められない。
改憲の是非を問う国民投票は来月22日に予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期された。期日は国内の感染状況などを見て決めるという。
改憲案策定は事実上、プーチン氏が主導した。既に上下両院を通過し、憲法裁判所も合憲判断を下しており、国民投票で過半数が賛成し成立するのは確実な情勢だ。
留意すべきは、平和条約を巡る対日交渉の門は閉ざさない規定も盛り込んだことである。
一つは、隣国との国境画定作業の容認であり、もう一つは、ロシアが「旧ソ連の法的継承国」であるとあえて明示したことだ。
プーチン氏と安倍晋三首相は、平和条約締結後の歯舞、色丹両島の引き渡しを明記した日ソ共同宣言を基礎に、交渉を加速することで合意している。
法的継承国の規定は、日ソ共同宣言や日ロ首脳合意なども念頭にしたものであろう。
そこには、北方領土返還は認めないながらも平和条約交渉は続け、日本から経済協力を引き出したり、日米の安全保障協力をけん制したりする狙いが透ける。
ロシア政府は5月にモスクワで開く対ドイツ戦勝式典への出席を、安倍首相に招請している。
首相はプーチン氏に改憲の真意をただす必要があるが、式典出席は慎重であるべきではないか。
日ロは北方領土を巡る歴史認識を巡って対立し、それが領土問題解決の大きな障害となっている。
式典出席によって日本が大戦の結果を受け入れたと利用されるようなことがあってはならない。
コロナ禍も重なって日ロ交渉は停滞している。交渉戦略の再構築を急ぐべきだ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2020年03月30日 05:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。