路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【中山知子の取材備忘録・11.14】:純白スニーカーにはかま、あの大物は車で登場 衆院議員初登院・人生模様

2021-12-26 23:57:50 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【中山知子の取材備忘録・11.14】:純白スニーカーにはかま、あの大物は車で登場 衆院議員初登院・人生模様

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・11.14】:純白スニーカーにはかま、あの大物は車で登場 衆院議員初登院・人生模様」 

 先月の衆院選で初当選した新人議員97人を含む国会議員の「初登院」が、特別国会召集日の11月10日に行われた。新人議員にとっては初日の恒例セレモニーだが、今年はコロナ禍での初実施だった。

17年ぶりに国政復帰し、はかま姿で登院した立憲民主党の鎌田さゆり衆院議員(21年11月10日撮影)

 17年ぶりに国政復帰し、はかま姿で登院した立憲民主党の鎌田さゆり衆院議員(21年11月10日撮影)

 「開門!」の合図で国会の正門があくのは毎回、午前8時。早朝(または前夜)から一番乗りを目指す議員や大勢のメディアが集まる。今回もメディアの数だけは「密状態」だったが、例年なら正門の中に入ることができる親族などの同行者の数はかなり制限されたようだ。親族や秘書は1人ずつ。正門前で記念写真を撮影した後、議員を見送るだけの支援者や親族も多かった。

 国政選挙で当選した議員の初当選をこれまで何度も取材してきたが、それぞれの思いや決意をコスチュームに託す人も多い。

 はかま姿で登場したのは、選挙違反事件の連座制適用前に辞職以来、実に17年ぶりの国政復帰となった立憲民主党の鎌田さゆり氏(56=宮城2区)。百人一首競技かるたの元準クイーンで、はかまはタイトル戦での「正装」だ。「戦いに臨む際の、私にとっての正装です。(17年ぶりの国会は)初心にかえった気持ち。ただ緊張している初心ではなく、『やったろう』というような初心」。

おろしたてのスニーカーで初登院したれいわ新選組大石晃子衆院議員の足もと(21年11月10日撮影)
おろしたてのスニーカーで初登院したれいわ新選組大石晃子衆院議員の足もと(21年11月10日撮影)
れいわ新選組の大石晃子衆院議員(21年11月10日撮影)
れいわ新選組の大石晃子衆院議員(21年11月10日撮影)

 純白の白が際だつスニーカー姿だったのは、れいわ新選組で初当選した大石晃子氏(44)。大阪府職員時代、当時の橋下徹知事にもの申したことでも知られる。今回は選挙区(大阪5区)で敗北し、近畿比例ブロックで復活当選。全議員の中でいちばん最後に議席が確定した。白いスニーカーを選んだのは「国会でフットワークよく活動したいから。スーツにはヒールと思ったけれど、靴下とスニーカーじゃないと走れません」。れいわ山本太郎代表のネクタイも、党カラーのピンクが入ったレジメンタルだった。

 そんな中、新人の衆院議員ながら「大物」も。河村建夫元官房長官との自民党内公認政局をくぐり抜け、参院議員から鞍替えで衆院初当選した林芳正外相(60)。ほかの新人が徒歩やタクシーでやってくる中、大型ワゴンでさっそうと正門前に乗り付け車を降りた。

「新人衆院議員」として初登院する林芳正外相(21年11月10日撮影)
「新人衆院議員」として初登院する林芳正外相(21年11月10日撮影)

 実は参院と衆院は、バッジの色が異なる。悲願の衆院鞍替えで「ポスト岸田」の正式な資格も得た林氏は「新しいバッジをいただいて有権者の付託の重さを感じる」と、感慨深げな表情だった。

 新人議員以外は、正門ではなく別の門から車で入ってしまう議員がほとんどだが、「初心」に戻るためか、ベテランたちも正門を入る。日本維新の会とともに、キャスティングボーダーになりつつある国民民主党の玉木雄一郎代表(52)は、なぜか超短髪になっていた。「選挙の疲れが出て散髪中、ずっと寝ていて、気づいたらこんなことに」と笑いつつ「心機一転、初心にかえって頑張りたい」。

 一方、議席減で辞任した枝野幸男前代表の後任を選ぶ立憲民主党代表選に、出馬の意欲をみせる「なぜ君」小川淳也氏(50)は、正門から国会の中に入ることができないフリー記者らの呼びかけに応じ、1度門の中に入りながらわざわざ戻ってきた。「(代表選出馬に必要な推薦人)20人のハードルは低くない。あまり前のめりにならず、着実に」。まじめすぎるのが弱点ではないかと問われると「よく自覚しています」と苦笑しつつ「短所を、新しい時代の強みにしたい」と応じ、再び門の中に入っていった。

特別国会召集日、開門となった正門から中に入っていく衆院議員たち(21年11月10日撮影)
特別国会召集日、開門となった正門から中に入っていく衆院議員たち(21年11月10日撮影)

 衆院議員の任期は4年。しかし、衆院は「常在戦場」で、いつ次の衆院選が行われるか、解散権を持つ時の首相しか知らない。次の選挙の後、再び新たな任期を得て、国会議事堂に戻れる保証は、どこにもない。今回、快晴下での初登院では、さまざまな人生模様がみられた。新たな任期での初登院は、恒例のセレモニーである半面、次の衆院選へのスタートが切られた、緊張の瞬間でもある。【中山知子】

特別国会招集日、開門前の早朝の国会議事堂(21年11月10日撮影)
特別国会招集日、開門前の早朝の国会議事堂(21年11月10日撮影)
中山知子の取材備忘録

 ■中山知子の取材備忘録

◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・政局・「中山知子の取材備忘録」】  2021年11月14日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【中山知子の取材備忘録・11.07】:「幹事長敗北」乗り切った岸田首相 「同じ顔」からの脱却なるか枝野代表

2021-12-26 23:57:40 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【中山知子の取材備忘録・11.07】:「幹事長敗北」乗り切った岸田首相 「同じ顔」からの脱却なるか枝野代表

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・11.07】:「幹事長敗北」乗り切った岸田首相 「同じ顔」からの脱却なるか枝野代表 

 4年ぶりの政権選択の機会となった衆院選は終わったが、戦いの決着がついても、与野党ともに混乱、バタバタが続いている。

 自民党は、1カ月前に党ナンバー2の幹事長に就任したばかりの甘利明氏が衆院選で、党史上初めて「幹事長の選挙区敗北」というみっともなさから辞意を示し、岸田文雄首相も替えるほかなく、茂木敏充前外相を幹事長に据えた。

岸田文雄首相と甘利明・前自民党幹事長岸田文雄首相と甘利明・前自民党幹事長

 思えば、この1カ月あまりで、自民党の幹事長は二階俊博氏→甘利氏→茂木氏で、3人目だ。在職期間が5年を越え、「1強幹事長」を担った二階氏が安倍&菅政権で君臨してきたが、岸田氏が幹事長の任期制を掲げて党総裁選に打って出たことを機に、党内政局が始まった。これまで手を携えてきたはずの菅氏が「二階切り」に走ろうとして、事態はますます混乱。党内の絶妙なバランスを保ってきた重し(二階氏)を外せば、当然バランスは崩れる。菅政権崩壊のきっかけとなった。

 総裁選を経て新しい幹事長に就任したのが、甘利氏だった。直接、権力の座にはいないにもかかわらず影響力が取りざたされる「3A」の一角かつ、岸田氏の総裁選を支えた功労者。わかりやすい論功人事ではあったが、第2次安倍政権時代の16年1月、経済再生担当相辞任に発展した「政治とカネ」の問題がくすぶったままで、今回の選挙では「落選運動」を起こされる事態にもなった。

 権力が交錯する政治の舞台での人事は、「センスと政局観」がものをいう。2つのハーモニーがそろっていないと、危うくなる。幹事長人事に関して、甘利氏の起用は、別の人物が念頭にあったとされる「安倍氏のご意向」に反した格好の岸田カラーではあったが、結果論としては「あの時、違う人を選んでいたら…」の典型的なケースだ。

 新幹事長に就任した茂木氏は、総裁選で派閥を岸田氏支援でまとめた旧竹下派の事実上トップ。旧竹下派といえば、ここしばらく総裁派閥から遠ざかっているが、古くは旧田中派の流れをくむ元祖・主流派閥だ。茂木氏は安倍氏や麻生氏の「2A」とも関係が良い。党内基盤安定化を優先した人事なのは間違いない。

 岸田氏は「幹事長敗北」という大ピンチを現実的な判断で乗り切ったが、組閣に当たって「派閥均衡」と指摘された閣僚の中には、甘利氏同様に選挙区で敗れ比例復活した人もいる。「センスと政局観」が大事な人事手腕で、のっけからいささか不安な側面を露呈したのは否めない。

テレビ局のインタビューに答える立憲民主党の枝野代表(撮影・たえ見朱実)
テレビ局のインタビューに答える立憲民主党の枝野代表(撮影・たえ見朱実)

 一方の野党。立憲民主党が公示前議席を20近く減らし、枝野幸男代表は責任をとって代表を辞任することになった。前回の衆院選直前、小池百合子都知事による「排除発言」に対抗して結党し、世の同情論も追い風にして第1党を勝ち取った「創業者」だ。辞任には、創業者としてのじくじたる思いもにじむが、立民の系譜にある旧民主党時代からこれまで、枝野氏を含めて同じような顔ぶれが主要ポストをたらいまわしにしながら、党の体制を変え、新しい人材がいるはずなのにいないように見える、残念な対応が続いてきた。今回、後任代表に名前が挙がる人は、若手や中堅が多く、見慣れない顔ぶれの半面、ここでドラスチックに「党の顔」や体制が変われば、反転攻勢に向けた足がかりが築けるかもしれない可能性もある。その覚悟が示されるかどうかが、問われるチャンスになると思う。

 一大政治決戦だった衆院選は終わったが、永田町で話を聞くと、多くの人から来年の参院選が終わるまでは気を抜けないという声を聴いた。自民党は2007年に参院選で第1党を旧民主党に取られてから首相の1年交代や野党転落が続き、衆院と参院の勢力が「ねじれ」る混乱が続いた。07年参院選に敗れた安倍氏が、13年参院選でねじれ状態を完全に解消するまで、実に6年もかかったのだ。

 来年の参院選までは、もう1年を切っている。1つの政治決戦が終わり、また新たな決戦が始まる。【中山知子】

中山知子の取材備忘録

 ■中山知子の取材備忘録

◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・政局・「中山知子の取材備忘録」】  2021年11月07日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【中山知子の取材備忘録・10.25】:岸田首相に「ご祝儀」なし 参院補選痛い1敗 危機管理体制にほろこびも…

2021-12-26 23:56:20 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【中山知子の取材備忘録・10.25】:岸田首相に「ご祝儀」なし 参院補選痛い1敗 危機管理体制にほろこびも…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・10.25】:岸田首相に「ご祝儀」なし 参院補選痛い1敗 危機管理体制にほろこびも… 

 前回のコラムで書いた参院静岡、山口の2つの補欠選挙が24日、投開票された。新しい首相の就任後、初の補欠選挙はその後の政権運営の勢いを占うという指摘をしたが、岸田文雄首相率いる自民党は「当然2勝」(党関係者)といわれたものの、全勝を取り逃した。政権発足後、初の国政選挙で、10月31日に投開票を迎える衆院選の前哨戦。安倍晋三元首相の地元で保守地盤の山口では勝利したが、野党側が小選挙区でも議席を持つ静岡では、立憲民主党、国民民主党などが推薦した候補に敗れた。

参院静岡補選の応援のため、静岡市で街頭演説する岸田文雄首相(21年10月7日撮影)

 参院静岡補選の応援のため、静岡市で街頭演説する岸田文雄首相(21年10月7日撮影)

 補欠選挙に関する情勢調査では、山口では自民党の優勢が伝えられていたが、静岡では苦戦を指摘するデータも多かった。24日は深夜まで結果が判明しない接戦ではあったが、選挙は結果がすべて。結果的に、自民党は当選した野党候補に5万票近い差をつけられた。自民党が元々議席を持っていた選挙区だけに、票差以上に敗北感は大きい。

 自民党内には、1勝1敗イコール五分ということで、今回の敗北の衆院選への影響は最小限にとどまるという声もあるようだ。ただ、衆院選の前哨戦と位置づけられ、「リアル直近の民意」が示された戦いで、首相が選挙期間中を含めて2度、応援に入っての負けだけに、そう穏やかでもなさそうだ。

 岸田政権発足から3週間がたったが、いわゆる「ご祝儀ムード」はほとんどない。各社世論調査でも、発足時の支持率が6割を超えた前任者、菅義偉政権より2割ほど低い40%台の調査もあった。第2次安倍政権とは比べようもない。政権発足後の株価上昇という「ご祝儀相場」もなく、株価は下落し3万円台を割り込んだ状態が続き、「岸田売り」という言葉も飛び交った。

 首相は衆院選公示後、全国を遊説に飛び回っている。この選挙の結果が、自身の政権運営を左右するため必死な側面もあるだろうが、19日の公示日に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際、国際社会に緊張感が広がる中も、選挙遊説をすぐにはやめなかった。2カ所目を終えて打ち切って東京にとんぼ返りしたが、対応を批判した野党だけでなく自民党内にも首相の判断を疑問視する向きがあったと聞く。この際は、首相だけでなく松野博一官房長官も選挙活動で地元にいて、官邸では官房副長官が対応する事態に。ミサイル発射がなければ問題視される行動ではなかったかもしれないが、常に「有事」を念頭に行動しなければならない官邸ツートップの危機管理意識の現実を露呈する結果になった。

 翌20日、熊本・阿蘇山が噴火した際は、首相は前日の反省からか、自身のツイッターで「官邸に『情報連絡室』を設置し、情報収集をしています。状況に変化があれば随時報告が入る体制を取っています」などと投稿しながら、選挙遊説を続けた。幸い噴火に伴う人的被害などはなかったが、SNSで発信するだけでよかったのだろうか。

 衆院選公示後の2日間のできごとは、首相にとって「有事」の際の国のリーダーのあり方を、いきなり試されたケースだった。ただ、政界関係者に話を聞くと「首相にどこか危機感が感じられないのが、不思議だ」という声も聞いた。そんな中、結果がその後の政権運営を左右した「ジンクス」もある、補欠選挙での自民敗北。首相もさすがに、穏やかではないのではないだろうか。

 首相に対する期待が高まれば「ご祝儀」ムードも高まるはずだが、醸成する環境はまだ整っていないように感じる。衆院選は、いよいよ後半戦だ。野党の党首以上に、首相の一挙手一投足を国民は見ている。【中山知子】

中山知子の取材備忘録

 ■中山知子の取材備忘録

◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。

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【中山知子の取材備忘録・10.10】:山本太郎氏電撃出馬表明でざわつく東京8区 国政復帰へのはやる思い先行か

2021-12-26 23:56:20 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【中山知子の取材備忘録・10.10】:山本太郎氏電撃出馬表明でざわつく東京8区 国政復帰へのはやる思い先行か

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・10.10】:山本太郎氏電撃出馬表明でざわつく東京8区 国政復帰へのはやる思い先行か 

 「まず国政復帰」への、はやる思いなのだろうか。れいわ新選組の山本太郎代表の次期衆院選出馬に向けた動きが、思わぬ流れを見せ始めてきた。

街頭演説で衆院選東京8区への出馬表明をするれいわ新選組の山本太郎代表=21年10月8日撮影街頭演説で衆院選東京8区への出馬表明をするれいわ新選組の山本太郎代表=21年10月8日撮影

 山本氏は8日、定番のJR新宿駅南口で街頭記者会見し、19日公示の衆院選で、自民党の石原伸晃元幹事長のおひざ元、東京8区(7区に属しない杉並区)に出馬すると表明した。初めて国政に挑戦した2012年衆院選で出馬した選挙区であることを理由にあげた。当時は約7万1000票を超える票を取ったが、石原氏にほぼダブルスコアで敗北。「リベンジ。もう1度挑戦する。首を取らせてください」と訴えた。

 19年、参院選を前にれいわを結党。旋風を巻き起こし、比例代表で2議席を獲得したが、自身は目算が外れて落選し、参院議員のバッジを失った。昨年の都知事選に出馬し落選。今年の東京都議選にも候補を擁立したが、議席はゼロだった。街頭演説で多くの聴衆を集めて支持を拡大していく手法がコロナ禍でかなわず、永田町では存在感の薄まりも指摘されていた。

 国会議員の立場で発信していた経験との違いを、山本氏も実感していたはずだ。衆院選では、比例区での重複立候補という保険をかけるとも明かし「国会に帰らないとダメだもん。(自分が)国会をぴりっとさせないとダメでしょ」と、国政復帰への本音を隠さなかった。

 もともと「魅力ある旗の下での野党共闘」を掲げていた山本氏は今年9月、野党共闘を呼びかけてきた市民連合と野党4党の政策合意に参加した。当然、政策合意した他の野党との競合は避けるはずだが、東京8区では立民の女性候補、吉田晴美氏が15年末の公認内定以来、約6年近く活動。共産党も候補を立てているが、地元で話を聞くと「数日前に『吉田氏で一本化』が見えてきたところ」だったといい、山本氏の参戦表明は寝耳に水だった。

 吉田氏は、山本氏が東京8区参戦を表明した8日の朝も、駅頭に立って活動。しかし、山本氏の街頭会見と同時間帯で予定されていた夕方の活動は、急きょ中止となった。体調を崩したとする声もある。吉田氏がいない駅前には支援者が集まり「#吉田はるみだと思ってた」の青色の紙を手に、山本氏の出馬に抗議していた。

東京8区で活動してきた吉田晴美氏の支持者は「#吉田はるみだと思ってた」のカードを手に、山本太郎氏の出馬に抗議した=21年10月8日
東京8区で活動してきた吉田晴美氏の支持者は「#吉田はるみだと思ってた」のカードを手に、山本太郎氏の出馬に抗議した=21年10月8日

 支援者の1人は「怒り心頭だ。地元に根付いた候補がいるところに、どういうことだ」と声を荒らげ、立民の枝野幸男代表ら執行部のガバナンス(統治能力)も批判。れいわを含む野党4党と政策合意した市民連合の関係者は「市民をなめてはいけない。私たちの手でボトムアップの力をみせていこう」と訴え、山本氏の参戦に徹底抗戦する構えをみせ、異様な雰囲気が漂った。

 山本氏は「調整しないと、こんなこと(出馬表明)はできない。野党合意がある前から(吉田氏が所属する)立民側と話を進めている」と、調整ずみの上での参戦表明だと強調したが、どのレベルで調整が行われ、党と党の全体で根回しが完了していたのかどうか、まだ疑問が残る。それでも山本氏は「一本化して自民党候補を引きずりおろせるなら一本化、そうでなければ自由競争が基本。8区は一本化すれば(石原氏に)勝つ可能性がある」とした上で「8区で出られなくなった候補の支援者の思いは受け止めないといけないが、それ自体をけしからんという話にすれば野党共闘にはならない」と、自身への一本化の正当性をにじませた。「調整できるところ、できないところを調整し続けている」など、「調整」という言葉を何度も繰り返したのが印象的だった。

 選挙では時に、候補者を差し替えることはある。一方で、選挙は「足し算」で、はかれないこともある。17年衆院選で、立民と共産を合わせた票は石原氏に約1100票と肉薄。今回野党統一候補擁立の必要性が説かれる背景でもあるが、今回もそのままその数字となるかどうかは、分からない。小選挙区では、地元の人の支持や理解を得なければ当選はできず、混乱すれば、まとまるものもまとまらなくなる。

 「突拍子もないようで、現実的」。そう評されてきた山本氏だが、今回の東京8区参戦をめぐる動きは、現段階では混乱要因のままだ。新政権発足から投開票まで1カ月ない、異例の短期決戦となる衆院選。国政復帰を目指す山本氏にとって、東京8区は初めて出馬する選挙区ではないことも大事な要素なのだろう。それでも、出した答えは、野党間のつながりをかき乱す波乱要素になる可能性をはらんでいる。【中山知子】

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 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・中山知子の取材備忘録】  2021年10月10日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳】:「人権人権って馬鹿じゃなかろうか」問われる自民の人権意識/12.21

2021-12-26 07:02:10 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・被差別部落・ハンセン病患者・強制隔離】

【政界地獄耳】:「人権人権って馬鹿じゃなかろうか」問われる自民の人権意識/12.21

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳】:「人権人権って馬鹿じゃなかろうか」問われる自民の人権意識/12.21 

 ★17日、自民党政調会長・高市早苗らは中国念頭にした人権侵害への非難決議案臨時国会採択するよう幹事長・茂木敏充に求めたが「今はタイミングではない」と拒否された。高市は内モンゴルの人権問題に取り組む議員連盟会長の肩書で幹事長に申し入れたという。党三役がすり合わせもせず門前払いすることにも驚くが、本当に自民党他国人権問題うんぬんする立場だろうか。高市は「臨時国会こそはと思って公明党との文言の調整も含めてやってきた。大変悔しい。本当は(採択は)今のタイミングだ」とした。

 ★19日にはテレビで外相・林芳正が来年2月の北京冬季オリンピックへの対応について「人権の状況も含めて判断していくことになろうかと思う」とあいまいな説明をしている。一方で自民党タカ派は「人権人権ってばかじゃなかろうか」と発言するなど、自民党改憲案には「基本的人権」は割愛対象のようで自民党がそんなに人権に向き合っているとは思えない。森友学園事件で、財務省近畿財務局の元職員・赤木俊夫が公文書の改ざんを命じられたのを苦に自殺、妻が損害賠償を求めていた裁判で、財務省は訴えを認諾するとした。17日の朝日社説は「人間尊厳踏みにじるような政府対応に、強い憤りを感じる」と踏み込んだ。

 ★2013年8月、オスプレイ配備に慎重論を唱える琉球新報社説は「米軍の事件や事故が繰り返される日常では、心の傷を癒やすことも難しい。県民には最低限人権すら認められないのか」と書いたが、国内にも人権踏みにじられたり無視されたりしている事例が山ほどある。それを後回しに“政治的”に人権利用することは権力ご都合主義ではなかろうか。中国の人権を問うならば、国内にも同等の目を向けるべきだ。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2021年12月21日  08:02:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【森友文書改竄】:法曹界絶句…赤木さん裁判で国が「認諾」という非道を選んだ理由

2021-12-26 06:43:50 | 【公文書・国民の知る権利・国民共有の知的資源・情報公開・権力者による隠ぺい】

【森友文書改竄】:法曹界絶句…赤木さん裁判で国が「認諾」という非道を選んだ理由

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【森友文書改竄】:法曹界絶句…赤木さん裁判で国が「認諾」という非道を選んだ理由

 公文書の不正な書き換えを業務として強要され、それを実行したことを苦に自ら命を絶った赤木俊夫さん。公務員としての誇りをもって生きてきた夫が57歳で逝った。妻の雅子さんは「なにが起きたのかを知りたい」と、訴え続けている。

 上司だった元財務省理財局長・佐川宣寿(のぶひさ)氏に、話を聞きたかったがかなわず、国と佐川氏を訴える「裁判」という方法をとった。公判のなかで、「夫の身に何が起きたのか」がわかると期待したからだ。

 ◆法曹界が仰天した「禁じ手」の理由

 12月15日、国が全面的に非を認める「認諾(にんだく)」をしたことで、この裁判はあっけなく「終わって」しまった。

 「国が『認諾』したという報を聞いて、とても驚きました」

 そういうのは、京都大学大学院法学研究科の曽我部真裕教授だ。

 「赤木雅子さんが求めたのは、賠償金ではないでしょう。お金がめあてではなく、国家賠償請求の裁判という形で、真相を解明したかった。けれども国は、それを避けたかった。『認諾』つまり訴えの全てを認めてしまえば、それ以上裁判にはなりません。打算的な判断です。これには、なにか不純なものがあるんじゃないか、制度が悪用されたと感じます」

 赤木雅子さんは会見で「悔しい」と語り「国は卑怯だ」と批判した。そもそも、公文書改ざん、赤木さんの自死があったとき、国会での調査が「できなかった」経緯がある。この国では、国政調査権が機能していない。

 「ひとついえるのは、事件当時、安倍政権はあまりにも強力になりすぎていて、周囲が忖度をしすぎていたということ。その流れのなかで起きたことであるのは明白です」

 政権与党の力がこれほど強く、これほど長く続いていると、そんな「流れ」を止めることはできないのだろうか。

 「それに関して、日本は『ガラパゴス』なんです。海外にはそんな横暴を防ぐための制度があります。『少数派調査権』といって、国会議員の4分の1の発議で国政に関する調査ができる仕組みが、ドイツなど諸外国にはありますから。

 政権与党の協力、了解がないと国政を調査ができない日本の仕組みは見直すべきという議論があります」

 航空機の事故や、医療事故のような公共性の高い分野については、「調査委員会」が設置され「外部」の調査が行われる制度がある。しかし、今回のような個別の件ではそんな方法もとれない。今の制度では、国会の場で真実を調査することは難しいのだ。「国有地払い下げの問題や、入管での人権侵害についても同様」という。

 「そして別の観点からもうひとつ。これはそもそも、日本社会の普遍的な問題なんです。組織の命令には逆らえない、組織は命を守ってはくれない。ありえないことをやらされた赤木さんは、今回の認諾で、いわば『2度裏切られた』んです。これは、けっしてひとごとではなく、みんなに関わる問題です。雅子さんが実名を出して訴えていることはとても重要。声を上げていくことが大切だと思います」

 組織の利益が、個人の尊厳に優先する社会。たとえば今回の国家賠償請求を担当した国側の「訟務検事(しょうむけんじ)」つまり「中の人」もまた、「組織の人」だ。

 「国は、真相を究明させないためには、こんな突然の方針変更も厭(いと)わない。もし私が法務省の『中の人』だったら…良心が(とが)めます。しかし、勤め人である現場の訟務検事は、認諾を決めた上層部に従わざるをえないでしょう。法務省の職員たちも、組織の人ですから」

 赤木さんの裁判で、国側が一転して訴えを認め「認諾」したことの背景には、いくつもの矛盾や疑問が隠れている。

 「今、一部企業などでは個人を大切にする重要性が語られ始めています。が、やはりまだまだ、個人が組織の犠牲になるケースは少なくありません。

 私たちにできるのは、これくらいのこと、と我慢するのではなく、それぞれが声を上げること。理不尽があれば声を出す、もっと声を上げていくことしかないんです」

 ひとりひとりの決意や勇気で乗り越えていかなければならないのか。

 「今回の認諾には驚きしかなかった。前例がなかったわけではありませんが、法律関係者は一様に驚いたと思います。ここまでして拒否したかったことは何なのか。裁判だけでなく、国会の責任追及機能も正しく機能していません。見直すべき点はいくつもあります。

 そして、組織が個人を犠牲にしていく社会を続けていかないために、赤木雅子さんの勇気を高く評価しています」

 私たちには、もっとたくさんの勇気が必要なのだ。

 元稿:講談社 主要出版物 【週刊FRIDAY DIGITAL】 2021年12月25日 15:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【森友学園公文書改ざん】:妻が語る「夫はこのコードで首を吊った」 

2021-12-26 06:43:40 | 【公文書・国民の知る権利・国民共有の知的資源・情報公開・権力者による隠ぺい】

【森友学園公文書改ざん】:妻が語る「夫はこのコードで首を吊った」 ■真実を求めて国と佐川宣寿・元財務省理財局長を訴えた

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【森友学園公文書改ざん】:妻が語る「夫はこのコードで首を吊った」 ■真実を求めて国と佐川宣寿・元財務省理財局長を訴えた

 「夫は居間の窓の手すりにオーディオセットのコードを括り付け、もう1本をそれに引っ掛けた後、自分の首を思いっきり縛っていました。帰宅した私はその姿を見つけて、すぐに身体を抱き寄せたんです。顔には絶望と孤独が溢(あふ)れていました。身体はまだ温かったんですが……」 

   本誌の取材に答えた雅子さんが、スマホに入った俊夫さんの画像を見せてくれた。改ざんを強いられる前は、明るい性格で表情も豊かだったという

 ’18年3月7日を元財務省近畿財務局職員・赤木俊夫さん(当時54)の妻、雅子さんはそう振り返る。俊夫さんは森友学園をめぐる公文書の改ざんを指示され、実行したことを苦にして自ら死を選んだ。

 下写真に写っているのが、俊夫さんの命を奪ったコードである。

 事件から2年あまり、雅子さんは真実を求めて動き出した。国と元財務省理財局長・佐川宣寿(のぶひさ)氏を相手に損害賠償請求訴訟を起こしたのだ。俊夫さんは、改ざんは佐川氏の指示だと手記に書き遺している。7月15日には第1回口頭弁論が開かれ、雅子さんは堂々と意見陳述を行った。

 「本当は裁判なんかやりたくないですよ。佐川さんから直接、話を聞ければ私はそれで良かった。お手紙も出したのですが、相手にしてもらえませんでした。だからもう裁判しか手段がなかった……夫が手記に書いたことは本当なのか、なぜ佐川さんは改ざんを始めたのか、私はそれを知りたいだけです」(雅子さん・以下同)

 だが、第1回裁判終了後、菅義偉官房長官は公文書改ざん問題について「再調査は不要」という姿勢を変えることはなく、安倍晋三首相も記者団の問いかけに何のコメントも発さなかった。

 「再調査をすることはそんなに大変なことじゃないと思うんですよ。国側にはたくさんの弁護団がついていますが、そんなことにお金や時間をかけるんじゃなくて、再調査してほしいです」

 第1回の裁判を終えて雅子さんは、俊夫さんの墓前に報告をしたという。

 「『無事に終わったよ』と話したら、気持ちが落ち着きました。夫は多趣味な人でしたね。書道や落語、建築、音楽……髪型は大好きな坂本龍一さんのマネなんです(笑)。私はあんまり趣味がない。私の趣味は赤木俊夫なんです。今もそれが続いています。

 夫の言葉でよく覚えているのは、『人に合わせる必要はないんやで』。夫が亡くなって財務局の方がウチに来られた時、『妻のお前も組織の中にいるんだぞ』っていう空気を感じて、息苦しかった。でも、夫のあの言葉があったから、裁判をやろうと思えたんです」

 喧嘩はほとんどせず、冬には隣に座ってコタツに入るほど夫婦は仲が良かった。

 「『僕の雇用主は国民。国民のために働けることに誇りを持っている』と夫は近所の方に話していたそうです。国を相手に裁判を起こすことは大変なことですが、隣にいるべき人がいなくなったのに、このまま黙っているわけにはいかないです。いまは夫からバトンタッチされた気持ちで頑張ろうと思っています」

 次の口頭弁論は10月14日。雅子さんに対して、国は真摯に向き合うべきだ。

俊夫さんの首に巻き付いていたコード。指さしているのは雅子さん。コードの途中が切れている。これは雅子さんが身体を下ろすためにハサミで切ったからだ。
雅子さんは裁判に合わせ、『私は真実が知りたい』 (相澤冬樹氏と共著・文藝春秋)を発売

 『FRIDAY』2020年8月21・28日号より

  • 撮影:鬼怒川 毅(上)相澤冬樹(下)

 元稿:講談社 主要出版物 【週刊FRIDAY DIGITAL】 2020年08月27日 08:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記】:不都合隠しに巨額税金もいとわない卑劣…雅子さんが描いた国の代理人の顔

2021-12-26 06:43:10 | 【公文書・国民の知る権利・国民共有の知的資源・情報公開・権力者による隠ぺい】

【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記】:不都合隠しに巨額税金もいとわない卑劣…雅子さんが描いた国の代理人の顔

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記】:不都合隠しに巨額税金もいとわない卑劣…雅子さんが描いた国の代理人の顔

 「ふざけんな! と思いました。惨敗したような、大負けに負けたような気持ちです」

 ■国が「認諾」で裁判強制終了

 激しい思いが言葉になった。財務省公文書改ざん事件の原告、赤木雅子さん。改ざん事件で命を絶った夫、俊夫さんの死の真相を解明するため、国と佐川宣寿元財務省理財局長を相手に裁判を起こした。15日、大阪地裁で行われた非公開の協議で、国はいきなり「認諾」を申し出た。原告の請求金額を丸ごと認めて賠償金を支払い、裁判を終わらせる手続きだ。提訴から1年9カ月、国との裁判はあっけなく終わった。

会見する赤木雅子さん(提供写真)

  会見する赤木雅子さん(提供写真)

 原告の訴え通りに賠償を払うのだから、普通ならば原告にとって勝訴同然で、めでたい話ということになる。それがなぜ「ふざけんな」という言葉になるのか?

 赤木雅子さんはこの裁判でお金がほしかったわけではない。賠償を求める形にしないと裁判にならないから請求はしたが、本当に望んでいるのは真相の解明だ。改ざんはなぜ行われたのか? 夫が反対しても無理やりさせた責任は誰にあるのか? 改ざんした文書は森友学園との土地取引に関するものだ。この取引自体に問題があるのではないか?

 それを、裁判で資料を請求し、関係者に法廷で証言を求めて、真実を知りたかった。ところが認諾されてしまうと賠償の支払いで裁判は終わってしまう。証人の証言も実現できない。真相を解明されたくないから無理やり裁判を終わらせたのか?

うつむいて黙りこくったまま反応のない姿…(提供写真)うつむいて黙りこくったまま反応のない姿…(提供写真)

 ◆「あなた方の顔を忘れない」

 雅子さんは協議の席で国の代理人に語り掛けた。

 「夫は国に殺されたと思っています。何度も何度も殺されて、きょうまた殺されました」

 その間、国の代理人8人はじっとうつむいていた。雅子さんは思わず言った。

 「あなた方、私の顔を見てください。私もあなた方のきょうの顔を忘れません」

 赤木さんの言葉が終わると、国の代理人はそそくさと帰っていった。法廷を出たところで筆者は彼らに「国の代理人の方ですよね」と声をかけたが、誰一人何も言わず足早に立ち去った。

 雅子さんは彼らの一人の顔を法廷でスケッチしていた(写真)。うつむいて黙りこくったまま反応のない姿。雅子さんは法廷でこういう人たちと向き合ってきたのだ。

 さて、これですべてが終わってしまうのだろうか? そんなことはない。国との国賠訴訟は終わっても、まだ佐川元理財局長との裁判が残っている。改ざんを指示したとされる佐川さんとの裁判を通し、佐川さん本人や関係者の証言を求める道もある。

 闘いはまだ続く。臭いものにふたをしようとする相手の思い通りにはさせない。何としても真相にたどり着いてみせる。今回の裁判で国が支払う1億1000万円超の賠償金は、そのための軍資金となりうるだろう。

 それにしても、この賠償金の原資は税金だ。不都合なことを知られないためなら巨額の税金を使うこともいとわない。そんなことがあっていいはずがない。

 この国に暮らす心ある人々すべてに、この卑劣さと不条理を知ってもらい、「許せない」と声をあげてほしい。そう痛感した一日だった。

相澤冬樹
著者のコラム一覧
 ■相澤冬樹ジャーナリスト・元NHK記者

 1962年宮崎県生まれ。東京大学法学部卒業。1987年NHKに記者職で入局。東京社会部、大阪府警キャップ・ニュースデスクなどを歴任。著書『安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』(文藝春秋)がベストセラーとなった。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記】  2021年12月16日  15:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【疑惑】:安倍晋三が「赤木ファイル」を冒涜するツイート!「再調査される側」のくせに赤木さんの言葉を切り取り・自己正当化に利用

2021-12-26 06:43:05 | 【公文書・国民の知る権利・国民共有の知的資源・情報公開・権力者による隠ぺい】

【疑惑】:安倍晋三が「赤木ファイル」を冒涜するツイート!「再調査される側」のくせに赤木さんの言葉を切り取り・自己正当化に利用

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【疑惑】:安倍晋三が「赤木ファイル」を冒涜するツイート!「再調査される側」のくせに赤木さんの言葉を切り取り・自己正当化に利用

 まったく何様のつもりなのか。森友学園への国有地売却をめぐる公文書改ざんの経緯を記した「赤木ファイル」が開示されたことをめぐり、昨日24日、安倍晋三・前首相のTwitterアカウントがこんな投稿をおこなったからだ。

 〈赤木氏は明確に記している。「現場として(森友学園を)厚遇した事実はない」この証言が所謂「報道しない自由」によって握り潰されています。《秘書アップ》〉 

 よくもまあいけしゃあしゃあとこんな投稿ができたものだ。そもそも、「赤木ファイル」の存在が判明しても、自殺に追い込まれた赤木俊夫さんの妻・雅子さんが裁判でファイルの開示を求めても、何ひとつ動こうとせず無視してきたではないか。それをいまになって「赤木氏は明確に記している」って、どんな神経をしていたらこんなことをつぶやけるのか。

 その上、「報道しない自由」って、フェイクを撒き散らかすのも大概にしろ。テレビの報道はもちろん、安倍前首相の“天敵”たる朝日新聞毎日新聞も「赤木ファイル」に記された〈現場として厚遇した事実もない〉という近畿財務局側の意見を報じているからだ。

 だが、この投稿でもっとも看過できないのは、「赤木ファイル」を引用した「現場として(森友学園を)厚遇した事実はない」という言葉を安倍前首相が自己弁護のように使っていることだ。

 安倍前首相のこの投稿では、安倍応援団で数々のデマを流してきた産経新聞阿比留瑠比記者が執筆した産経新聞24日付記事の画像をアップ。そして、以下の箇所などにわざわざマーカーを引いて強調させている。

〈「現場として(森友学園を)厚遇した事実はない」
国会マスコミはこの点に関して、延々と売却に際して森友学園側への配慮や当時の安倍晋三政権への忖度があったと追及してきたが、赤木氏自身がそれを否定している。この言葉からは併せて、赤木氏が国有地の売却価格の減額自体に、特に問題はないと考えていたこともうかがえる。〉

 言っておくが、赤木俊夫さんは森友の公文書改ざんを強要された職員だが、国有地売却には一切かかわっておらず、その真相を知る立場ではない。しかも、阿比留記者は端折っているが、実際の「赤木ファイル」にはこう書かれているのだ。

〈本省の問題意識は、調書から相手方(森友)に厚遇したと受け取られるおそれのある部分は削除するとの考え。現場として厚遇した事実もないし、検査院等にも原調書のままで説明するのが適切と繰り返し意見(相当程度の意思表示し修正に抵抗)した。〉

 つまり、財務省本省は〈厚遇したと受け取られるおそれ〉があるという考えから改ざんの指示を近畿財務局に出しているのだ。そして、近畿財務局で改ざんがはじまった2017年2月26日、財務省本省がいの一番に削除を指示したのは、安倍前首相の妻・昭恵氏や、安倍首相麻生太郎財務相などの名前が出てくる記述だった。この事実からも「佐川宣寿理財局長が自分の答弁に合わせて文書書き換えを命じた」という安倍政権が繰り広げた主張はフェイクで、安倍首相が2月17日に国会で言い放った「私や妻がかかわっていたら総理も国会議員も辞める」という発言がすべてのきっかけになっていることは疑いようもない。

安倍晋三が「赤木ファイル」を冒涜する鬼畜ツイート! 「再調査される側」のくせに赤木さんの言葉を曲解・自己正当化に利用するフェイク拡散の画像1

安倍晋三Twitterより

 ◆改ざんの元凶にも関わらず、御用・阿比留瑠比記者のコラムを引用し野党に無理やり責任転嫁する安倍前首相

 また、阿比留記者の記事に安倍前首相がわざわざマーカーを引いた部分には、こんなくだりもある。

 〈この問題では昨年10月、赤木氏の元上司の音声データも公表されたが、元上司も証言していた。

 「安倍さんとかから声がかかっていたら正直、売るのはやめている」「忖度みたいなのがあるみたいなことで(記載内容を)消すのであれば絶対消さない。あの人らに言われて減額するようなことは一切ない」

 そして元上司は、改竄にまで追い詰められた理由をこう赤裸々に明かした。

「少しでも野党から突っ込まれるようなことを消したいということでやりました」

「少しでも作業量を減らすためにやった」

 むしろ、野党の国会での追及や資料請求、ヒアリング要請の洪水を避けるためだったと示唆している。野党やマスコミの描いた強引なシナリオは、完全に決壊したといえよう。〉

 「野党からの追及で仕事が増えるのが煩わしくて公文書を改ざんした」というのはネトウヨがよく持ち出す主張だが、改ざん前の決裁文書は3000ページ以上にもおよんでおり、これを細部にわたって改ざんするという大規模かつ骨の折れる作業がおこなわれたのだ。潔白ならばすべてそのまま出せば済んだのに、むしろ改ざんによって作業量は段違いに増えているのである。

 しかも、この「赤木氏の元上司」というのは近畿財務局の池田靖氏のことで、阿比留記者が記した会話の内容は赤木俊夫さんの妻・雅子さんに対して池田氏が改ざんについて説明したときのものだ。そして、池田氏は赤木さんとは違って国有財産統括官として国有地売却にも直接かかわっており、事実、森友学園の理事長だった籠池泰典氏と池田氏のやりとりを記録した音声データも残っている。

 そのやりとりがおこなわれたのは、2016年5月中旬から下旬。このなかで籠池氏が「(ゴミ撤去などの費用として)1億3000万円がうんぬんというよりも、ぐーんと下げていかなあかんよ」と要求すると、池田氏は「理事長がおっしゃる0円に近い金額まで、私はできるだけ努力する作業を、いまやっています」と返答。実際、その後、不動産鑑定士は土地評価額を9億5600万円と算出し、ごみ撤去費用を値引きして土地売却価格は1億3400万円となった。つまり、池田氏が明言したとおりに事は運んだのだ。

 森友側との国有地売却の交渉にはノータッチだった赤木さんは「厚遇した事実はない」という上司らの説明を信じていたのかもしれない。だが、このやりとり一つとっても、適正な取引がおこなわれたとは考えられないものだ。

 ◆国有地値引きのきっかけとなった昭恵氏めぐる記録、菅官房長官の改ざん関与めぐる記録はいまだ隠蔽されたまま

 しかも、近畿財務局が森友側との交渉でほとんど言いなりのような状態となったのは、これより前、2014年4月28日からだ。詳しくは過去記事を参照いただきたいが(https://lite-ra.com/2018/05/post-4027.html)、改ざん前文書を見ると、2014年4月28日まで近畿財務局は森友と距離をもった交渉をおこなっており、大臣経験者で関西では大物政治家として名を轟かせる自民党の鴻池祥肇参院議員(故人)の秘書が「口利き」電話を入れても近畿財務局はまったく動こうともしなかった。ところが、近畿財務局は2014年4月28日を境に森友側の要望をすべて聞き入れ、特例契約に「協力する」とまで態度を一変させる。そして、その日に何があったかと言えば、はじめて近畿財務局は昭恵氏と森友の関係を認識したのである。国有地売却にいたる経緯を時系列でまとめた改ざん前文書には、こう書かれている。

 〈なお、打合せの際、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください。』とのお言葉をいただいた。」との発言あり(森友学園籠池理事長と夫人が現地の前で並んで写っている写真を提示)〉

 この記述こそが前述したように財務省が近畿財務局にいちばん最初に改ざんさせたものであり、さらには2014年4月28日におこなわれた森友側との面談について近畿財務局が作成したはずの交渉記録を、政府は「見つかっていない」として公開していない。つまり、いまだに「隠蔽」されたままなのだ。

 ようするに、安倍前首相は自分の代弁者でもある昵懇の阿比留記者による記事によって「野党の追及がしつこいから改ざんがおこなわれた」などと責任転嫁を図ろうというつもりなのだろうが、そんなものはネトウヨの寝言でしかない。その上、このような自己正当化のために「赤木ファイル」を利用するとは、下劣としか言いようがなく、赤木俊夫さんと雅子さんへの冒涜にほかならない。

 だいたい、赤木さんが遺した言葉をそんなに重要視するのならば、真っ先に雅子さんが求めている第三者による再調査をおこなうよう麻生財務相に要請するのが筋だ。そして、その再調査によって、いまなお隠されたままの2014年4月28日の交渉記録、および改ざんがはじまる直前である2017年2月22日におこなわれた菅義偉官房長官と、財務省の佐川理財局長、中村稔・総務課長、太田充・大臣官房総括審議官(いずれも当時)の面談記録や、財務省本省内のメールややりとりを記した記録を開示し、あらためて国会で国民に説明をおこなうべきだ。

 実際、雅子さんは昨日24日におこなった会見で、こう訴えている。

 「麻生大臣、安倍昭恵さん、安倍元首相の名前も(ファイルに)出てくる。あの方たちは再調査をしないとおっしゃっているが、再調査される側の立場。再調査しないという立場ではないと私は訴えていきたい」

 ところが、安倍前首相は「再調査される側」と指摘されたその日に、自分が隠蔽しようとした赤木さんが遺したファイルを利用して「報道しない自由」などとネトウヨを煽るツイートをのうのうとおこなったのである。公文書の改ざんという国家的犯罪を強いられたことで良心の呵責に苛まれた赤木俊夫さんを自殺に追い込んでおきながら、その鬼畜ぶり隠そうともしないこの男を、けっして許すわけにはいかないだろう。(編集部

 元稿:LITERA・リテラ(本と雑誌の知を再発見) 主要ニュース スキャンダル 【事件・森友学園への国有地売却をめぐる公文書改ざんの経緯を記した「赤木ファイル」が開示された】  2021年06月25日  11:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【社説】:赤木さん訴訟 卑劣な幕引き許されない/12.21

2021-12-26 06:43:00 | 【公文書・国民の知る権利・国民共有の知的資源・情報公開・権力者による隠ぺい】

【社説】:赤木さん訴訟 卑劣な幕引き許されない/12.21

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:赤木さん訴訟 卑劣な幕引き許されない/12.21 

「ふざけるな」という妻の悲痛な叫びは国には届かないのか。

 森友学園問題に関する決裁文書改ざんを命じられ自殺した財務省近畿財務局の元職員赤木俊夫さんの妻雅子さんが起こした訴訟は、国が請求棄却を求める主張を突然撤回して賠償請求を全面的に受け入れ(認諾)、終結した。

 雅子さんは口頭弁論で「夫が自ら命を絶った原因と経緯を明らかにすること」が裁判の最大の目的だと陳述していた。だが突然の「認諾」によって、裁判で経緯を明らかにする機会が失われた。「不都合な事実」を隠蔽(いんぺい)する卑劣な幕引きは許されない。

 岸田文雄首相は16日の参院予算委員会で、改ざん問題などに真摯(しんし)に向き合っていくと語った。それなら、誰が何の目的で指示をしたのか。改ざんの過程を再調査し、問題点を明らかにすべきだ。

 なぜなら公文書は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」(公文書管理法)だからである。改ざんは民主主義の根幹を揺るがす。

 そもそも、森友学園の国有地売却問題を巡り、国会で安倍晋三元首相の妻昭恵氏の関与が取りざたされた。安倍元首相は国会で森友問題に自分や妻が関係していた場合は「首相も国会議員も辞める」と明言した。この答弁をきっかけに文書改ざんが始まったとされる。

 ところが、国は改ざんの全容解明に後ろ向きだった。麻生太郎前財務相は、2018年に実施した調査のやり直しを否定し、改ざんの過程をまとめた「赤木ファイル」の存否も「探索中」としていた。だが、裁判所に提出を促されためようやく存在を認め、財務省本省が近畿財務局に再三メールで修正を指示していた記載内容が今年6月に判明。組織的な改ざんの実態が浮かび上がっていた。

 認諾とは、民事訴訟法で確定判決と同一の効力があるとされる。和解と違い双方が同意しなくても訴訟は終了する。雅子さん側は、認諾を防ぐために高額な賠償請求額を設定して提訴したというが、国の突然の認諾で一方的に訴訟を打ち切られた。

 認諾は「不都合な事実」にふたをする国の常套(じょうとう)手段である。厚生労働省の局長だった村木厚子さんが巻き込まれたえん罪事件で、村木さん側は国家賠償訴訟(10年)を起こして事件の真相を究明しようとした。だが、国は今回同様に認諾をして真相解明はされなかった。日米合同委員会の議事録公開を巡る国家賠償訴訟(19年)でも国は認諾した。

 では今回はなぜ認諾に踏み切ったのか。参院選を来夏に控え、世論の批判を浴びているこの問題を早期終結させたいと思惑があると指摘されている。国が支払う損害賠償額は約1億円。国民の税金である。税金を使ってもみ消しを図るとしたら言語道断だ。岸田首相は、真相を究明する責任を果たすべきだ。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年12月21日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:[森友訴訟強制終了]疑惑にふた許されない/12.20

2021-12-26 06:42:50 | 【公文書・国民の知る権利・国民共有の知的資源・情報公開・権力者による隠ぺい】

【社説】:[森友訴訟強制終了]疑惑にふた許されない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:[森友訴訟強制終了]疑惑にふた許されない 

 公文書を改ざんした上に、真相解明に背を向け、そこに多額の税金を投じる。あまりに不誠実でひきょうなやり方だ。

 森友学園を巡る問題で決裁文書改ざんを強いられ、自殺に追い込まれた財務省近畿財務局の元職員赤木俊夫さんの妻雅子さんが、真実を知りたいと起こした訴訟は、国から明確な説明がないまま終結となった。

 請求棄却を求めて争ってきた国が一転して賠償責任を認め、1億円余りの請求を受け入れる「認諾」の手続きを取ったからだ。

 雅子さんが提訴したのは昨年3月。「夫が死を選ぶ原因となった改ざんは誰が何のためにやったのか」。裁判で明らかにしたいと訴えていた。

 財務省が2018年に公表した調査報告書は、当時の安倍晋三首相が夫妻の関与を全面否定した国会答弁を機に財務省理財局が改ざんに手を染め、首相への忖度(そんたく)が読み取れる内容だった。だが安倍氏は答弁とは無関係だとし、説明を回避し続けた。

 国側は今年6月、赤木さんが改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」を開示した。しかし改ざんの具体的な指示系統や、理財局長だった佐川宣寿氏らの関与は曖昧なままだった。

 賠償請求受け入れに当たり鈴木俊一財務相は「国の責任は明らか」と話した。詳しい経緯の説明もなしに「明らか」と言われても、納得がいかないのは当然だ。

 突然の幕引きに雅子さんは「夫は国にまた殺された」と強い口調で語った。

 胸に深く突き刺さる言葉である。

■    ■

 認諾は民事訴訟法で確定判決と同一の効力があるとされる。

 雅子さん側は認諾を防ごうと賠償請求額を高く設定したが、賠償責任を認める「奇策」によって訴訟は一方的に打ち切られた。

 財務省幹部らの証人尋問などで新たな証拠が出る前に、1億円を払ってでも幕を引きたかったとの思惑が透けて見える。

 もちろんお金を払えば済む問題ではないし、しかもそのお金は国民の税金である。税金で隠蔽(いんぺい)を図るというようなことがあっていいのか。

 公文書の改ざんは、議会制民主主義の土台を破壊する行為である。

 時の政権や官僚の都合で書き換えられたり、廃棄されたりしては、民主主義そのものが成り立たない。

■    ■

 岸田文雄首相は自民党総裁選に出馬した際、「わが国の民主主義が危機にひんしている」と語った。

 安倍、菅政権が残した「負の遺産」と正面から向き合う覚悟をにじませた言葉である。

 訴訟の終結を受け岸田氏は「森友問題について政府として真摯(しんし)に向き合っていきたい」と答弁した。

 「夫はなぜ死ななければならなかったのか」という雅子さんの悲痛な叫びに、真摯に向き合う姿勢こそが問われている。

 解明に向けた再調査を求めたい。

 元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2021年12月20日  07:02:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:「森友」国請求認める 真相にふたをするのか/12.17

2021-12-26 06:42:40 | 【公文書・国民の知る権利・国民共有の知的資源・情報公開・権力者による隠ぺい】

【社説】:「森友」国請求認める 真相にふたをするのか/12.17

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:「森友」国請求認める 真相にふたをするのか/12.17 

 森友学園問題に関する決裁文書改ざんを強いられ、それを苦に自殺した財務省近畿財務局元職員・赤木俊夫さんの妻雅子さんが国に損害賠償を求めた訴訟が終結した。国側が主張を一転させ、1億円余りの賠償請求を全面的に受け入れたためだ。

 国は赤木さんの「公務災害」を認めながらも、何が死につながったのかなど詳細を明らかにしないまま、不誠実な対応を繰り返してきた。

 雅子さんが訴訟を起こしたのは、夫が死を選ぶまで追い詰められた原因を知りたかったからである。国は賠償責任を認めて早く裁判を終わらせ、真相にふたをするつもりだろうか。これで幕引きは許されない。

 改ざんを巡って財務省は、2018年に調査報告書を公表している。それには、当時の安倍晋三首相が17年2月に国会で、森友学園への国有地売却について、妻の昭恵氏も含め関与を全面否定したことが、きっかけになったことなどが記されている。しかし、誰が何のために、どのように改ざんを指示したかなどはなお不明のままだ。

 安倍氏や当時の麻生太郎財務相は調査のやり直しを否定し、国会で追及されてものらりくらりとかわしてきた。赤木さんが改ざんの経緯をまとめた文書「赤木ファイル」の開示を国会に求められても、「探索中」として応じなかった。存在が確認できたのは訴訟でのこと。雅子さんが求め、ことし6月ようやく開示された。裁判所に促されなければ、国は開示しないつもりだったのではないか。

 ファイルによって、財務省理財局が近畿財務局に再三メールで修正を指示していたことなど組織的な改ざんが判明した。しかし指示内容や詳細なやりとりまでは分かっていない。

 雅子さんは今後の訴訟の中で佐川宣寿・元理財局長や当時の局幹部らを証人として呼ぶ方針だったという。だが国による突然の幕引きでできなくなった。

 雅子さんは佐川氏を相手取っての訴えも起こしており、そちらの審理は続く。しかし佐川氏側は裁判所に書面を提出し、公務員個人は責任を負わず国が賠償すると主張している。

 国側は一転して請求を受け入れる理由を、いたずらに訴訟を長引かせるのは適切ではなく、決裁文書の改ざんという重大な行為が介在している事案の性質などに鑑みたとしている。

 国家賠償請求訴訟で、国が訴えをそのまま認めて終結させるのは異例のことだ。雅子さんの弁護士は「国は隠したい事実があるのではないか」と疑問を投げ掛けた。国はこうした疑念も晴らす必要があろう。公文書改ざんという民主主義の根幹を揺るがす重大な不祥事である。

 しかし安倍、菅政権を受け継いだ岸田文雄首相も再調査に否定的な考えを示している。一方、きのうの国会では「政府として真摯(しんし)に問題に向き合う」と述べていた。ならばこれまで請求棄却を求めて争ってきた国がなぜ一転して認めたのか、決定までにどんな経緯があり、1億円余りの賠償金を税金から支払うのか。国民に納得のいく説明が求められよう。

 その上で、遺族が求める改ざんの指示系統など詳細も含め、第三者による調査のやり直しをし、森友学園を巡る問題の全容解明を急ぐべきだ。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年12月17日  06:37:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張】:森友訴訟終結 国民への説明責任生じる/12.17

2021-12-26 06:42:30 | 【公文書・国民の知る権利・国民共有の知的資源・情報公開・権力者による隠ぺい】

【主張】:森友訴訟終結 国民への説明責任生じる/12.17

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張】:森友訴訟終結 国民への説明責任生じる/12.17 

 「認諾」とは、民事訴訟で被告側が原告の請求を正当と認め、裁判を終わらせることをいう。

 学校法人「森友学園」をめぐる財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題で自殺した近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんの妻が国に損害賠償を求めた訴訟で、これまで請求棄却を求めて争ってきた国側が一転して「認諾」の手続きを取り、約1億円の賠償請求を受け入れた。

国側が請求を認諾したことについて会見で説明する赤木雅子さんの代理人弁護士=15日、大阪市北区

 国側が請求を認諾したことについて会見で説明する赤木雅子さんの代理人弁護士=15日、大阪市北区

 国家賠償請求訴訟で国が請求を認諾するのは極めて異例だ。事前の通告もなく、突然表明された認諾により、真相究明の場としての国との訴訟は打ち切られ、高額の賠償金のみが支払われる。

 国側は認諾の理由を「いたずらに訴訟を長引かせるのは適切ではなく、決裁文書の改竄という重大な行為が介在している事案の性質などにかんがみた」とし、妻は「負けたような気持ちだ。真実を知りたいと訴えてきたが、こんな形で終わってしまい、悔しくて仕方がない」と述べた。

 認諾は訴訟を強制終了させる、いわば奇策ともいえるが、原告側の同意は要せず、手続き上の問題はない。原告側は訴訟当初から国側が認諾する可能性を懸念する発言をしていた。

 高額の賠償請求は認諾を防ぐためともされていたが、国側はあっさりとこれをのみ、訴訟の終結を優先させた。妻が「なぜ夫が死ななければならなかったのかを知りたかった。お金を払えば済む問題ではない」と憤った気持ちは、十分に理解できる。

 岸田文雄首相は16日の参院予算委員会で、訴訟について「ご遺族の気持ちを考えると痛恨の極みだ」と述べるとともに、「森友問題について真摯(しんし)に説明責任を果たしていくことを指示した」などと述べた。行動と発言が、あまりに乖離(かいり)してはいないか。

 約1億円の高額賠償の原資は国庫であり、税金である。

 提訴から約1年9カ月を経て主張の手のひらを返し、受け入れに転じた理由の説明責任は、納税者である国民に対しても生じる。木で鼻をくくったような釈明では納得を得られない。

 だいたい、いたずらに訴訟を長引かせてきたのは、赤木さんが改竄の過程をまとめた「赤木ファイル」の開示をめぐり、不誠実な対応を繰り返してきた国側の責任が大きい。改めて国は、妻や国民に説明責任を果たすべきである。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム  【主張】  2021年12月17日 05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録】:赤木さんの裁判/12.17

2021-12-26 06:42:20 | 【公文書・国民の知る権利・国民共有の知的資源・情報公開・権力者による隠ぺい】

【天風録】:赤木さんの裁判/12.17

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:赤木さんの裁判/12.17

 1880年のきょう、日本で「最後の仇討(あだう)ち」があった。幕末に父母を惨殺された福岡の旧秋月藩士が復讐を決意。時を待ち、12年後に果たす。しかし既に明治の世。江戸期に武士の美風とされた仇討ちも禁止になっていた

 ▲近代以降の日本では殺人として扱われて罪に問われる。当然だろう。となると、大切な人を奪われた遺族は無念をどう晴らせばいいのか。裁判で全て明らかにされ、とがを負うべき者が罰せられることによってだろう

 ▲ところがその裁判が突然、幕引きされてしまう。財務省の決裁文書改ざんを苦に自殺した元職員赤木俊夫さんの妻が起こした訴訟である。これから新たな証言などが出て真相に迫れるか―という時に国が一転、賠償責任を受け入れた

 ▲「ふざけんな」。賠償金を払うことで真相解明を避ける国に妻は憤る。調査やり直しの拒否や黒塗りファイル提出など不誠実な対応がずっと続いてきた。裁判に問うても闇に葬るつもりか。「夫は国にまた殺された」

 ▲裁判の強制終了とも言えそうな対応。「だまし討ちだ」と妻側の弁護士も切り捨てる。再調査を進め、遺族の無念を晴らします―。そんな「大岡裁き」を政治が示してはどうか。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2021年12月17日  06:37:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳】:森友裁判幕引きに「国民の理解」は?/12.17

2021-12-26 06:41:10 | 【公文書・国民の知る権利・国民共有の知的資源・情報公開・権力者による隠ぺい】

【政界地獄耳】:森友裁判幕引きに「国民の理解」は?/12.17

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳】:森友裁判幕引きに「国民の理解」は?/12.17 

 ★14日、立憲民主党幹事長・西村智奈美は会見で「今日で沖縄の辺野古の埋め立てから3年がたつ日」としたうえで「辺野古の新基地移設については予算の面からも工期の面からも、米軍の考え方などから含めても、もう固執する理由は全くない。中止すべきと考える」とした。まさに「国民の理解が得られない、ずさんな計画」ということだろう。

 ★同党の2人の女性議員がそれぞれ代表を務める政治団体が昨年、コロナに関連して「両立支援等助成金」を受け取っていたことが分かった。このことで西村は「国民の理解を得られず返金する」と説明した。この助成金も違法なものでないと言いながら「国民の理解を得られない」という。実は政治家にとって、この言葉はポピュリズムを利用する禁断の言葉ではないか。政治は国民の理解を得られないことだらけだ。国民の理解を得られないまま、政府が押し通したこと、うやむやになっているもの、放置されてきた事柄はたくさんある。それぞれの事案で国民は我慢を強いられるか、泣き寝入りとなる。

 ★森友事件で元首相・安倍晋三夫妻の名前を削除するなど関与を隠蔽(いんぺい)するために近畿財務局勤務の赤木俊夫さんが決済文書改ざんをさせられ自殺した事件。国に真相解明を求めた民事訴訟は、国の認諾、つまりあっさり認めてしまうことで裁判が成立しなくなった。これで裁判に関係者を引っ張り出すこともできない。幕引きになる。政権が変わり「聞く耳」を持つ首相・岸田文雄の判断が官房副長官・磯崎仁彦の「赤木さんが公務に起因する心理的、肉体的負荷が原因で亡くなられたことについて、国の責任明らかとの結論に至り、損害賠償請求を認めた」という言い方になった。このまま裁判を続ければ「国民理解得られない事態広がるからだろう。政治はこの「国民の理解を得られない」を使い分けてはいけない。すべての政治は「国民理解得る努力をするもの」ではないのか。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2021年12月17日  08:17:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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