【社説】:[文通費改正先送り]責任は及び腰の与党に/12.21
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:[文通費改正先送り]責任は及び腰の与党に/12.21
金を使ったのならば領収書を添えて使途を報告する。余っていれば残金を返還する。
そんな当たり前のことができていないために国民から批判の声が上がっている。なのになぜ見直しが実現しないのか。
国会議員に歳費とは別に月額100万円支給される手当「文書通信交通滞在費」を見直す法改正が見送られた。
10月末の衆院選で当選した新人議員らに10月分が満額支給されたことに端を発した文通費問題は、いまだ決着を見ていない。
問題を提起した日本維新の会は国民民主と共同で、立憲民主は単独で、現行の月割りから日割り支給への変更に加え使途の公開、残金の国庫返納を可能にする法案を提出した。
与党はこれに難色を示し、日割り支給への変更を先行するよう訴え、主張は平行線をたどった。
文通費の問題は過去にも指摘された経緯がある。
それでも見直されなかった背景には「第2の歳費」とも呼ばれ、使い勝手の良いカネをそのまま残しておきたい、との思惑も見え隠れする。
「議員の身分保障、処遇に関わる問題」で合意が難しいと言って日割りの改正だけで済ませるのは、お茶を濁すようなものだ。
「文書」や「通信」など名目通り使われているかどうか確かめようもない手当の在り方のままでは国民の理解を得られまい。
責任は改革に後ろ向きな与党にある。
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自民は会期末前日になり、使途公開や国庫返納について各会派が話し合う枠組みの設置を野党に申し出た。
ただ、新たな枠組みをつくっても、使途公開が実現するのかどうか、それがいつなのかが見通せなければ、「その場しのぎ」的なものになる恐れがある。
期限を決めて集中的に議論し、抜本的な改正に確実につなげるべきだ。
残念なのは自民党総裁である岸田文雄首相の姿勢だ。
今国会での論戦では、法改正について「議員自身が考えなくてはならない課題だ。しっかり議論してほしい」と述べるにとどまった。
岸田氏は総裁選では政治とカネの問題は「国民に丁寧に説明し、透明性を高める」と語っていた。
今回、結果的に問題が放置されることになった責任は自民にあることを認識してもらいたい。
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地方議会では、議員の政務活動費について使途や領収書の公開が進んでいる。領収書をインターネットで公開している議会も少なくない。
政治資金に向けられる市民の厳しい視線に、地方議会は改革を進め、国会はこれまで背を向けてきた。
維新は各議員の文通費の使途報告書を領収書と合わせて公開している。政党支部などへの寄付の項目もあり、十分と言えないが前向きな対応だ。
こうした改革の取り組みを野党で競い合いつつ、与党に法改正を強く働き掛けてもらいたい。
元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2021年12月21日 07:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。