路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

《社説①》:泊原発の運転差し止め 安全軽視を糾弾した判決

2022-06-02 02:05:50 | 【電力需要・供給、停電・エネルギー政策・原発再稼働・核ゴミの中間最終貯蔵施設他

《社説①》:泊原発の運転差し止め 安全軽視を糾弾した判決

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:泊原発の運転差し止め 安全軽視を糾弾した判決 

 北海道電力泊(とまり)原発の運転を禁じる判決を札幌地裁が出した。

 津波対策の不備が理由である。11年前の東京電力福島第1原発事故の教訓を重く見た判断だ。

 泊原発には防潮堤が設けられているが、判決は津波に対する安全性を欠いていると結論づけた。

 周辺住民ら原告側は、地震が起きれば地盤が液状化し、防潮堤が沈下する危険性を指摘していた。

 北電は、そのリスクは低いと反論しながら、資料を基にした証明をしてこなかった。新たな防潮堤を建設すると説明したが、その構造は決まっていなかった。

 判決がとりわけ問題視したのは、安全対策を巡る姿勢だ。

 提訴から10年以上たつにもかかわらず、いたずらに主張を続けようとしていることを批判した。裁判の引き延ばしを図っていると判断したといえる。

 住民側がいつまでも振り回される状況は、許容できないと指摘した。こうした北電の態度は「安全面での問題の多さ、大きさをうかがわせる」とも言及し、不信感をあらわにした。

 北電は9年前、泊原発の再稼働に向けた安全審査を原子力規制委員会に申請した。今も審査が続いていることを、裁判で明確な対応が取れない理由にしていた。 

 だが、規制委からは度々、説明不足や体制の不十分さを指摘されてきた。

 審査中の原発は他にもある。これまでに申請された原発27基のうち、審査を通過したのは17基にとどまる。

 原発の再稼働を推進したい自民党からは、審査の効率化を求める声が上がっている。

 しかし、現在の審査体制や安全基準は、福島第1原発事故のような惨事を二度と起こさないために導入された。安全性を最優先することは当然だ。 

 福島の事故後、原発の運転を認めない司法判断は9例目である。原発に対する裁判所の見方は、ますます厳しくなっている。

 脱炭素化や世界的なエネルギー不安を受け、政府・与党内では原発回帰を探る動きがある。だが、電力の安定的な供給源として位置づけることは現実的ではない。

 原発に依存しないエネルギー政策こそが求められている。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年06月02日  02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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《社説②》:マイナ保険証の迷走 国民の視点を欠いている

2022-06-02 02:05:40 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・能動的サイバー防御・優生訴訟・公権力の暴力】

《社説②》:マイナ保険証の迷走 国民の視点を欠いている

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:マイナ保険証の迷走 国民の視点を欠いている

 マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせる「マイナ保険証」の取り組みが迷走している。国民の理解を得られないままでは、普及は進まない。

 本格運用が始まったのは昨年10月だ。患者が加入する公的医療保険の情報を把握することで、年間150万件近くあった保険事務のミスを減らせる。どのような薬を処方してきたかといった情報を医師が確認でき、災害時などに役立つと期待される。

 しかし、マイナ保険証の登録者は国民の1割に満たない。対応可能な医療機関も全体の約2割にとどまる。

 技術的なトラブルで稼働が半年以上遅れたうえ、新型コロナウイルス対応などで医療現場の準備が滞った。利用者が少ないとして二の足を踏む開業医も多い。

 政府の普及策もちぐはぐだ。4月からは、マイナ保険証を利用すれば診療報酬を加算する制度を導入した。病院や薬局の背中を押す狙いだが、患者にとっては負担増となる。批判を受けて、早くも見直しが検討されている。

 今年度末までにほぼすべての医療機関でマイナ保険証を使えるようにする計画だが、誤算続きで実現は見通せない。

 慌てた政府は、来年4月から医療機関に対応を義務付ける力ずくの姿勢に転じた。将来は保険証を原則廃止する方針も打ち出した。

 だが、問題が起きるたびに泥縄式に対処するのでは、制度への信頼は醸成されない。

 今回の経緯を振り返れば、国民との意思疎通を欠いていたことは明らかだ。反省を踏まえた取り組みが求められる。

 世界には、マイナンバーにあたる共通番号が普及している国もある。米国では1930年代、恐慌を契機に生活を支援する手法として導入された。北欧では戦後の社会保障の基盤を担ってきた。

 政府は、所得や健康などの情報をマイナンバーやカードと連携させ、セーフティーネットを強化する議論を進めている。ただ、制度の意義やプライバシー保護に関する理解が深まることが前提だ。

 国民の視点を欠けば、デジタル社会の実現はおぼつかない。政策を練り直すとともに、実績を重ねて制度の利点を示す必要がある。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年06月02日  02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【余禄】:津波を意味するアイヌ語の「オレプンペ」には…

2022-06-02 02:05:30 | 【電力需要・供給、停電・エネルギー政策・原発再稼働・核ゴミの中間最終貯蔵施設他

【余禄】:津波を意味するアイヌ語の「オレプンペ」には…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:津波を意味するアイヌ語の「オレプンペ」には…

 津波を意味するアイヌ語の「オレプンペ」には「沖に住む者」の意味があるという。アイヌの人々は口承で災害の記憶を伝えてきた。神がキツネに姿を変えて津波を知らせ、村を救ったという民話も残る

 ▲北海道沿岸には戦後も津波が襲ってきた。1993年の北海道南西沖地震で奥尻島(おくしりとう)が壊滅的な津波被害を受けたことは記憶に新しい。日本海中部地震(83年)の教訓から防潮堤をかさ上げしていたが、役に立たなかった

 ▲東日本大震災では東京電力が1000年に1度の巨大地震に伴う津波への対応を怠っていたことが明らかになった。専門家が指摘していたにもかかわらずである。全国の原発周辺の住民が安全性への懸念を高めたのは当然だろう

 ▲札幌地裁が津波対策の安全性が立証されていないと北海道電力に泊(とまり)原発の運転差し止めを命じた。防潮堤すら基準を満たしていないと判断された。原子力規制委も北電の対応能力を疑問視していたというから責任は重い

 ▲提訴から10年が過ぎ、地裁は立証を先延ばしにしてきた北電の姿勢にしびれを切らしたようである。規制委の安全審査も長期化している。裁判所が再稼働の是非について独自に判断を下すのも司法のあり方だろう

 ▲政府は今年の「骨太の方針」から昨年にはあった「可能な限り(原発の)依存度を低減する」という表現を削ったという。エネルギー価格の高騰もあり、再稼働を進めたい思惑がうかがえる。あくまで地元の理解と安全優先が前提であることをお忘れなきよう。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】  2022年06月02日  02:04:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【追跡】:米小学校乱射1週間 「銃に寛容な州」あだ 18歳、購入は「大人の証明」

2022-06-02 02:05:25 | 【事件・未解決事件・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・旧統一教会を巡る事件他】

【追跡】:米小学校乱射1週間 「銃に寛容な州」あだ 18歳、購入は「大人の証明」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【追跡】:米小学校乱射1週間 「銃に寛容な州」あだ 18歳、購入は「大人の証明」

 米南部テキサス州ユバルディの小学校で児童19人と教師2人が死亡した銃乱射事件は、発生から1週間が過ぎた。突入した国境警備隊員に射殺された容疑者の男性(18)は、なぜ銃を手に取ったのか。学校で起きた銃撃事件としては歴史に残る犠牲者数となった惨劇を受け、米国では銃規制を巡る議論が再燃している。【ユバルディ鈴木一生】

 

銃乱射事件の現場となったロブ小学校前で花を手向ける親子=米南部テキサス州ユバルディで5月31日

銃乱射事件の現場となったロブ小学校前で花を手向ける親子=米南部テキサス州ユバルディで5月31日

 店の入り口にバーベキュー用のグリル、内部には水着や浮輪といったレジャー用品などが所狭しと陳列されている。剥製のシカの頭部が壁に飾られ、「一時閉鎖」と張り紙がされた奥の部屋に向かうと、黒光りするライフル銃が整然と並べてあった。、残り2475文字(全文2745文字) 

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【追跡】  2022年06月02日  02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【発言】:革新性高める日米同盟に=ジョナサン・バークシャー・ミラー 日本国際問題研究所シニアフェロー

2022-06-02 02:05:20 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【発言】:革新性高める日米同盟に=ジョナサン・バークシャー・ミラー 日本国際問題研究所シニアフェロー

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【発言】:革新性高める日米同盟に=ジョナサン・バークシャー・ミラー 日本国際問題研究所シニアフェロー

 5月下旬のバイデン米大統領の訪日は、国際安全保障の緊急課題が山積する中でのタイミングとなった。日米同盟は依然としてインド太平洋地域の平和と安全の礎であるが、地域に焦点を当てるだけではもはや十分ではない。ウクライナでのロシアの不

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2022/06/02/20220602ddm004040124000p/5.webp?1" type="image/webp" /></picture>

 日本の歴代政権はロシアとの関係を均衡させ、リスクを回避しようと考えてきたが、岸田文雄政権はまっさきにロシアに経済制裁を科した。主要7カ国(G7)などと結束を保とうとした背景には、いくつかの要因があろう。

 侵略行為に対して国際的な対抗を欠けば、武力行使によって現状を変えようとする国家を助長させる恐れがあるとの懸念を日本政府は抱いた。つまり、ウクライナでの戦争は欧州の危機ではなく、世界の安全保障の危機なのだ。国際法や行動規範を無視して現状変更を図ろうとする国家についての問題である。、残り915文字(全文1296文字)

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【木語】:脱露を阻む核のゴミ=会川晴之

2022-06-02 02:05:15 | 【ロシア・北方領土・シベリア開発・サハリン石油天然ガス・ウクライナ侵攻犯罪】

【木語】:脱露を阻む核のゴミ=会川晴之

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【木語】:脱露を阻む核のゴミ=会川晴之

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 欧州連合(EU)は5月30日、ロシア産原油の輸入量を年末までに9割減らす対露制裁に合意した。すでに日本を含む主要7カ国(G7)は全面禁輸を決めており、これに準ずる措置となる。

 欧州がロシアに支払うエネルギー購入費は日額10億ドル(約1300億円)に達する。このうち原油が4億ドルで、これだけで日額3億ドルとされるロシアの戦費を上回る。制裁によりロシアの収入を減らし、ウクライナでの戦争を一日でも早く終わらせることを狙う。

 ロシアは原油、天然ガス、石炭だけでなく、原子力分野でも世界有数の供給国だ。、残り761文字(全文1020文字)

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【記者の目】:The Mainichi創刊100年 普遍的価値を世界と共有=花岡洋二(英文毎日室)

2022-06-02 02:05:10 | 【新聞社・報道・テレビ・ラジオ・公共放送NHKの功罪・マスコミ・雑誌】

【記者の目】:The Mainichi創刊100年 普遍的価値を世界と共有=花岡洋二(英文毎日室)

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【記者の目】:The Mainichi創刊100年 普遍的価値を世界と共有=花岡洋二(英文毎日室)

 毎日新聞の英字日刊紙「ザ・オオサカ・マイニチ」が1922年4月12日に創刊してから100年を迎えた。

 今はインターネットで国内外の外国人向けに発信している無料ニュースサイト「ザ・マイニチ」=QRコード=の起源だ。

 マイクロフィルムに残る古新聞の小さな記事2本を手がかりに、日本発の英語ジャーナリズムの意義を考えたい。、残り1696文字(全文1853文字)

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【科学の森】:どうなる、露の学術的孤立 侵攻影響、国際協力停止の動き

2022-06-02 02:05:00 | 【ロシア・北方領土・シベリア開発・サハリン石油天然ガス・ウクライナ侵攻犯罪】

【科学の森】:どうなる、露の学術的孤立 侵攻影響、国際協力停止の動き

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【科学の森】:どうなる、露の学術的孤立 侵攻影響、国際協力停止の動き 

 ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、欧州を中心にロシアとの研究協力を停止する動きが広がっている。旧ソ連時代にも研究が海外から孤立し、分野の低迷や若い研究者が育たないなどの事態を招いた。今回の侵攻はロシアの科学技術にどのような影響をもたらすのか。歴史をひもときながら、科学史の専門家と考えた。

ロシア北西部のプレセツク宇宙基地から発射される新型大陸間弾道ミサイル「サルマト」=2022年4月20日、ロスコスモス提供・AP

 文部科学省科学技術・学術政策研究所によると、論文数の世界ランキングでは、旧ソ連時代の1980年代の大半は5位だったものの、現在のロシアは15位(2017~19年平均)と低迷している。

 それでも存在感を示しているのが、旧ソ連時代に国策として推進された宇宙や原子力分野だ。宇宙分野では、国際宇宙ステーション計画に参加し、ソユーズ宇宙船で宇宙飛行士の輸送を担ったり、各国から人工衛星の打ち上げを受注したりしている。21年のロケット打ち上げ数は中国の55回、米国の51回に次ぐ25回に上る。原子力分野もトルコや中国などに原発を輸出し、20年5月には世界初の船舶型原発の営業運転を始めた。、残り2028文字(全文2464文字)

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《社説①》:首相の新しい資本主義 アベノミクスに逆戻りだ

2022-06-02 02:04:50 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

《社説①》:首相の新しい資本主義 アベノミクスに逆戻りだ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:首相の新しい資本主義 アベノミクスに逆戻りだ

 当初唱えていた「分配重視」はどこに行ってしまったのか。

 岸田文雄首相が看板政策に掲げる「新しい資本主義」の全体像がまとまった。

 きっかけは、新型コロナウイルス禍で格差が深刻化したことだ。

 成長と効率を優先する新自由主義的なアベノミクスの下、非正規労働者が4割近くも占めるようになった。雇用の調整弁とされ、コロナ禍で次々と職を失った。

 日本経済のひずみを是正することが求められた。首相も昨秋の自民党総裁選に出馬表明した際、「分配なくして成長はない」と新自由主義からの転換を訴えていた。

 だが、今回強調されたのは、デジタルや科学技術などに積極的に投資し、「徹底して成長を追求していく」姿勢である。

 分配も「人への投資」と位置付け、非正規労働者のデジタル技術を高める職業訓練の拡充を打ち出した。政策の力点が、立場の弱い人の不安解消から、成長戦略の推進にずれていったように見える。

 さらに後退を印象づけたのは株など資産所得の扱いだ。

 世界的なカネ余りによる株高で富裕層ほど資産所得を増やした。本来、余力のある人に負担を求めて所得再分配を図るのが筋だ。

 だが首相は、意欲を示していた資産所得への課税強化を棚上げし、逆に資産所得を倍増させる方針を表明した。株を持つ余裕のない人が置き去りにされかねない。 

 ウクライナ危機に伴う物価高で格差是正の必要性は増している。生活必需品の値上がりが多く、低所得者ほど負担が大きい。

 政府は物価対策を決めたが、アベノミクスから続く日銀の異次元緩和が円安を加速し、物価高に拍車をかけている。矛盾は明白だ。 

 にもかかわらず首相は「大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略を進める」とアベノミクスを踏襲する考えを繰り返す。最大派閥を率いる安倍晋三元首相の影響力を意識しているのだろうか。

 これでは政策転換どころか、逆戻りである。

 経済をコロナ前に戻すだけでは格差を生み出した構造が温存されかねない。分配の仕組みを整え、働く人の不安を和らげる。それこそが消費を活性化させ、経済再生につながる土台となるはずだ。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年06月01日  02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②》:子どものマスク 顔が見える日常へ工夫を

2022-06-02 02:04:40 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

《社説②》:子どものマスク 顔が見える日常へ工夫を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:子どものマスク 顔が見える日常へ工夫を

 新型コロナウイルス対策のマスク着用について、文部科学省が学校生活で不要な場面を例示した。

 子ども同士の間隔が十分に確保できれば、体育の授業や部活動、登下校時には着用する必要はない。鬼ごっこのような密になりにくい遊び、会話がほとんどない自然観察や写生の際もマスクなしでかまわない。

 政府が、大人を含めて着用に関する考え方を示したのを受け、学校向けに整理したという。

 高温多湿の環境では、マスク着用による熱中症のリスクが高まる。特に子どもの場合、汗をかく機能が未成熟なため体に熱がこもりやすい。文科省はマスク着用よりも熱中症対策を優先するよう促している。 

 距離が十分取れる場合にはマスクは不要という指針は、これまでも示されてきた。

 だが、学校での感染防止の取り組みが求められてきたため、現場では着用が常態化している。屋外での体育の授業時でさえ、着用させているケースが少なくない。

 マスクを巡る考え方は、子どもや保護者によって温度差があるため、教師は一律に外すよう指導しづらい。暑さで苦しい時は外してかまわないと呼びかけている学校も多いが、子どもの側にもためらう空気があるという。 

 混乱を招かないよう、不要なケースについて教育委員会や学校が子どもと保護者に丁寧に説明することが大事だ。その際、着用を希望する子らへの同調圧力につながらないよう注意する必要もある。

 長引くマスク生活が子どもたちの成長に与える影響を心配する声も出ている。

 人は言葉だけでなく、表情からも相手の心情を推し量る。マスクで顔の大部分が見えないと、子どもがそうしたコミュニケーションを学ぶ機会は失われがちだ。

 子どもたちはこの2年間、友達と親しく遊ぶ機会を制限されてきた。つながりが薄れたことで、心身の不調を訴える子が増えたという指摘もある。子どもらしい生活ができないことの心理的な影響についても目配りが必要だ。

 感染状況は地域によって異なる。工夫を凝らしながら、子どもたちの顔が見える日常を少しずつ取り戻していきたい。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年06月01日  02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【余禄】:新型コロナウイルスの流行後…

2022-06-02 02:04:30 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【余禄】:新型コロナウイルスの流行後…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:新型コロナウイルスの流行後…

 新型コロナウイルスの流行後、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は陰謀論者から標的にされてきた。今度はサル痘である。SNS上で「ゲイツ氏がサル痘の世界的流行を予言していた」といったフェイクニュースが流されている

 ▲自身の財団を通じて世界保健機関(WHO)に多額の寄付を行い、感染症対策の必要性を訴えてきたことが影響しているのだろう。天然痘ウイルスなどを使った生物兵器テロにも警鐘を鳴らしてきた。そうした発言が曲解されたらしい

 ▲2001年9月の同時多発テロ後、米国のメディアや政治家に炭疽(たんそ)菌が送られる事件が起きた。生物兵器テロへの警戒が世界的に高まり、1980年に根絶宣言が出された天然痘ウイルスが危険視された

 ▲多くの国で70年代に種痘が中止され、若い人たちは免疫を持たなかったからだ。米国は医療関係者らにワクチン接種を推奨し、ワクチン備蓄を進めた。日本も当時、約250万人分の備蓄を決めた

 ▲動物由来の感染症であるサル痘の患者が欧米を中心に20カ国以上で約250人確認された。アフリカ中西部の風土病で天然痘に症状が似ている。感染経路がはっきりせず、WHOも「異例」と警戒しているが、死者は出ていない

 ▲天然痘ワクチンが有効というから未知のウイルスだった新型コロナとは事情が違う。ワクチンは備蓄があり、国内で生産されている。「陰謀論」にあおられて不安を高める必要はあるまい。すっかり忘れていた肩の種痘の痕を確かめてみた。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】  2022年06月01日  02:09:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【記者の目】:「WEリーグ元年」を振り返る 新たな女性活躍の形を=尾形有菜(東京運動部)

2022-06-02 02:04:10 | 【女性が輝く社会と社会参画・選択的夫婦別姓・女性差別・女性を取り巻く諸問題】

【記者の目】:「WEリーグ元年」を振り返る 新たな女性活躍の形を=尾形有菜(東京運動部)

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【記者の目】:「WEリーグ元年」を振り返る 新たな女性活躍の形を=尾形有菜(東京運動部)

 近年、国内でプロまたはプロ主体のリーグが次々と誕生している。Bはバスケットボール、Tは卓球、では「WE」は何の競技か。どれほどの人が知っているだろうか。国内初の女子プロサッカーリーグとして2021年9月に開幕した「WE(ウィー)リーグ」は5月で初年度を終えた。観客数が伸び悩み、課題が残るシーズンだったが、数字だけで判断するのは早計だ。

 
<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2022/06/01/20220601ddm004070125000p/9.webp?1" type="image/webp" />今季最多の1万2330人の観客が詰めかけた国立競技場での一戦。伸び悩む集客は最大の課題だが、リーグの価値は数字だけでは測れない=5月14日、猪飼健史撮影</picture>
今季最多の1万2330人の観客が詰めかけた国立競技場での一戦。伸び悩む集客は最大の課題だが、リーグの価値は数字だけでは測れない=5月14日、猪飼健史撮影

 WEリーグは日本の「女性活躍社会」を引っ張るとして、それを意味する「Women Empowerment」の頭文字をリーグ名にした。ただし、創設の背景にあるのは、世界で勝てなくなるとの危機感だ。日本サッカー協会は19年、女子のプロ化に向けて動き始めた。11年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会で優勝し、12年ロンドン・オリンピックで銀メダルに輝き、なでしこブームが起きたが、その後は人気低迷。米国や、急…、残り1510文字(全文1879文字)

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《社説①》:ウイグルの人権問題 大国の信頼損なう弾圧だ

2022-06-02 02:03:50 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、国家の個人等の権利を抑圧統治】

《社説①》:ウイグルの人権問題 大国の信頼損なう弾圧だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:ウイグルの人権問題 大国の信頼損なう弾圧だ

 民族の文化を封殺するかのような中国当局の人権弾圧である。

 中国新疆ウイグル自治区に住む少数民族が「再教育施設」などに多数収容された実態を示す大量の内部資料が明るみに出た。

 過去の共産党幹部の発言記録や収容者リストなどだ。毎日新聞を含む各国のメディアが報じた。

 自治区の共産党トップが「数歩でも逃げれば射殺せよ」と命じていた。手錠や足かせ、覆面をつけられた収容者の写真があった。

 「宗教は社会主義に合わせなければならない」との方針から、イスラム教の信仰さえ厳しい管理下に置く同化政策が強化された。コーランを学び、ひげを伸ばしたことを理由に処罰された事例さえあったという。

 苛烈な取り締まりはテロ対策として正当化されてきた。背景には分離・独立運動に対する習近平国家主席の警戒感がある。

 欧米は中国への非難を強め、制裁を発動した。中国は弾圧を「でっち上げだ」と全面否定するが、相次ぐ証言や資料を前に説得力を失っている。

 しかも、「国家の安全」の名の下、個人の権利や自由を抑圧する強権統治は、チベットや香港など中国全土を覆っている。

 新疆を視察した国連のバチェレ人権高等弁務官は「国際的な人権基準」に沿って政策を見直すよう求めた。人権部門の責任者が現地に足を運び、「疑念と懸念」を提起した意味は重い。中国政府は真剣に向き合わなければならない。

 国連は当初、独立性の高い調査を求めていたが、中国政府が応じなかったため、バチェレ氏の行動は大きく制約された。こうした対応が自国のイメージを損ねていると自覚すべきだろう。

 中国は「尊敬される大国」を目標に掲げている。そのためには国際秩序を支える基本的な価値である人権の保護が欠かせない。

 習氏はバチェレ氏とのオンライン会談で「人権問題で非の打ちどころのない国はなく、他国に偉そうに指図する『教師面』をすべきではない」と述べた。

 だが、他国を声高に批判しても、自らの抱える問題が覆い隠せるわけではない。独善的な振る舞いを続けている限り、国際社会の信頼は得られない。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年05月31日  02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②》:10兆円大学ファンド 研究の多様性守る運営を

2022-06-02 02:03:40 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

《社説②》:10兆円大学ファンド 研究の多様性守る運営を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:10兆円大学ファンド 研究の多様性守る運営を

 大学の研究力を世界トップレベルに引き上げるため、政府が10兆円規模の大学ファンドの運営を始める。対象となる大学の要件を定める法律が、今国会で成立した。

 来年度、「国際卓越研究大学」として数校を選び、翌年度以降、ファンドの運用益から年間数百億円ずつを配分する。画期的な研究の創出や先端的な研究の整備に充てられる。

 ただし、対象の大学には、寄付金や産学連携の収入などによって年3%の事業成長を目指すことが求められる。外部人材が半数を占め、経営戦略などの意思決定を担う合議体を設置する組織改革も要件となる。

 日本の研究開発費の総額は、欧米や中国に比べて少なく、伸びも鈍い。世界の大学ランキングでも振るわない。 

 政府は「画期的な研究成果は将来的な経済成長にもつながる」として、科学技術振興を成長戦略の柱に位置付ける。大学への支援が必要なのは確かだ。

 しかし、今回の大学ファンド方式には課題も多い。

 事業成長を重視するあまり、すぐに成果が見込まれ確実に稼げる分野に研究が偏る恐れがある。基礎研究のような、もうからない分野は冷遇され、多様性が損なわれるとの指摘もある。

 過去に日本がノーベル賞を受賞したのは、制約の少ない環境で取り組まれた基礎研究が中心だ。独創的な探究を数多く育んでこそ、世界をリードするような成果が生まれる。

 大学の研究や教育は学長が担うとされるが、合議体が事業成長を最優先に位置付けて介入するようなことがあれば、大学の自治や学問の自由が脅かされかねない。 

 日本の研究力向上には、大学全体の底上げも欠かせない。

 2004年の国立大学法人化後、公的研究費の多くが成果の出やすいテーマに配分されるようになり、多様性が乏しくなった。

 人件費が削減された影響で任期付きのポストが増え、若手研究者の地位が不安定になった。その結果、大学院への進学者が減り、人材の先細りが深刻になっている。

 自由な発想を支える研究費の拡充や、幅広い人材への投資も忘れてはならない。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年05月31日  02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【余禄】:中国に「大一統」という言葉がある…

2022-06-02 02:03:30 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、国家の個人等の権利を抑圧統治】

【余禄】:中国に「大一統」という言葉がある…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:中国に「大一統」という言葉がある…

 中国に「大一統(だいいっとう)」という言葉がある。儒教の書物「春(しゅん)秋(じゅう)公羊伝(くようでん)」に出てくる。天命を与えられた王者による国家統一を理想とする考え方である。秦の始皇帝が天下統一を果たして以降、分裂、統一を繰り返す中国史の背景で引き継がれてきた

 ▲ソ連をモデルにした中国だが、民族政策は違った。レーニンは民族自決を唱えて共和国による連邦制を敷いた。一方の中国は自治区を作り、民族団結を強調してきた。伝統的な「大一統」の影響が指摘されている

 ▲新疆は新しいフロンティアを意味する。かつて西域と呼ばれた地域と重なる。10世紀ごろからトルコ系のウイグル族が移り住み、イスラム教を信仰した。清朝が支配下に置いたのは18世紀である

<picture class="bbc-yfiktt e1enwo3v1">China's President Xi Jinping (L) talks with Premier Li Keqiang during a celebration meeting marking the 40th anniversary of China's "reform and opening up" policy at the Great Hall of the People in Beijing on December 18, 2018.</picture>

 中国の習近平国家主席(左)と李克強首相(右)らがウイグル族弾圧に関与していることを示す文書が浮上した。写真は2018年12月の改革開放40周年祝賀大会の様子

 ▲その新疆ウイグル自治区での人権弾圧を示す内部文書を小紙など世界のメディアが入手して共同で検証した。テロ対策を名目にウイグル族の老若男女が過酷な扱いを受け、刑務所や再教育施設に収容されている実態が中国側の記録で裏付けられたといえる

 ▲自治区を訪問した国連のバチェレ人権高等弁務官は実態に迫るような調査を認められなかった。中国がいくら否定しても、隠された文書の方に真実があると考えるのが普通の感覚だろう

 ▲「多民族の『大一統』は先祖から受け継いだ重要な財産である」。習近平国家主席の言葉だ。その実現のために言語や文化の統一を強いて宗教まで「中国化」しようというのが今の民族政策である。21世紀の人権基準とかけ離れた「時代錯誤」と言うほかない。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】  2022年05月31日  02:04:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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