【衆院選】:維新が地盤の大阪で大苦戦 公明とのガチンコ勝負、比例復活なしの「背水の陣」は吉と出るか?
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【衆院選】:維新が地盤の大阪で大苦戦 公明とのガチンコ勝負、比例復活なしの「背水の陣」は吉と出るか?
「自民党、政治とカネの問題、裏金議員だって結局は公認している。クリーンな政治とか言っている公明党も自民党、裏金議員を推薦している」<button class="sc-1gjvus9-0 cZwVg" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26"></button><button class="sc-1gjvus9-0 cZwVg" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26"></button>
大阪府内で応援演説をする維新の吉村共同代表(dot.)
■【写真】維新の苦戦の原因のひとつはこの人の問題
衆院選初日、大阪府堺市の繁華街で自民党や公明党を批判していたのは日本維新の会の共同代表、大阪府の吉村洋文知事だ。
だが、集まった聴衆はまばらで、拍手もパラパラと起こる程度。維新が議席を大幅に拡大した2021年の衆院選、22年の参院選、23年の統一地方選では、吉村知事が街頭演説をすれば大勢の聴衆で埋め尽くされていたのに、大違いの風景だ。
維新のスタッフに聞いても、
「前に同じ場所でやった時はすごい人で、歩行者の通路を確保するにも一苦労だった。今日とはえらい違いです」
と寂しげに語っていた。
とくに維新の発祥の地・大阪で、その人気はすさまじかった。21年の衆院選では、大阪府内19の小選挙区のうち、公明党候補がいる4選挙区を除く15選挙区すべての小選挙区で自民と維新の候補が対決したが、維新が全勝。ダントツの強さを見せつけた。
今回、維新は公明党候補がいる選挙区含め19選挙区すべてに候補を立てた。そして、維新は10月8日、候補者決定が直前になった9区をのぞく大阪府内18選挙区で、候補の比例重複を見送ることも公表した。小選挙区で敗れたら議席を失う、「背水の陣」で選挙に臨んでいる。
だが、自民党が10月に実施した情勢調査の結果を入手すると、維新が自民や公明の候補を相手に大苦戦していることがわかってきた。
直近の調査によると、19選挙区のうち、6選挙区で与党の自民や公明の候補がリード。1選挙区では立憲民主党候補がリードしていた。他の小選挙区でも、接戦のところが多く、維新の藤田文武幹事長も、自民党候補とデッドヒートの状況だった。
この情勢について、10月17日、大阪市内で演説をしていた大阪4区(大阪市北区など)の維新前職の美延映夫氏を直撃すると、
「維新に逆風とまではいかなくてもかなり厳しい状況。ただ自民党の裏金への有権者の批判は強く、演説でも反応がいいので、徹底して訴えている」
と話し、こう続けた。
「維新の支持が落ちている一番の理由は兵庫県の斎藤元彦前知事の問題だと思います。万博もいろいろ指摘はあるが私の周りではそう影響はない」
同じ大阪4区では、自民党から元職の中山泰秀氏が出ている。中山氏は裏金で処分を受けた議員だ。美延氏は、こう話した。
「大阪で比例復活がないのは確かにきつい。ただ相手(中山氏)も裏金事件で比例名簿の登載がなく、復活当選もない。お互い同じなのでちょうどいいのではないか」
一方、大阪1区(大阪市中央区など)で立候補している自民元職の大西宏幸氏は、こう言う。
「前回の衆院選では、選挙戦が進むにつれ、維新の突風が吹いて、見えないところまで離された。それがこの選挙では、維新の候補といい勝負になっている手応えがある。それに大阪で公明党が維新との関係を絶って自民党についてくれているのが心強く感じます」
自民党では茂木敏充前幹事長が維新に対抗すべく、「大阪刷新本部」を立ち上げて、新たな候補者の発掘などに力を注いできた。それも自民にプラスになっている模様だ。
これまでの衆院選と今回で大きく変わったのは維新と公明党の関係だ。
維新は掲げてきた大阪都構想の住民投票実現に向け、大阪府議会や大阪市議会で公明党の支援を受けていた。そのため、これまでの衆院選では、公明党が大阪と兵庫で議席を有していた6つの小選挙区には候補者を立てなかった。
しかし、今回は公明党に「宣戦布告」し、6つの選挙区すべてに候補者を擁立し、ガチンコの戦いとなっている。
そのうち、大阪16区(堺市の一部)では、維新、公明、立憲民主の3候補が激しく争っている。この選挙区は公明党の北側一雄元国交相の地盤だったが、北側氏の引退を受け、公明は参院で当選4回とキャリア豊富な山本香苗氏が衆院へくら替えして出馬。維新は堺市議だった黒田征樹氏、立憲民主党は前回比例当選した前職の森山浩行氏が立候補している。
公明党の堺市議に聞くと、こう話した。
「前回の衆院選までは、表向きは連立与党の自民党をやっていると見せつつ、維新へも支援していたのは事実です。それに吉村知事の人気、知名度が凄かったので、うちの支持者もそれに飲み込まれて維新に投じていた人もいます。全国的にもそんなことが許されていたのは大阪だけでしょう。しかし、今回は維新との協力関係もなくなり、まずは自分の党、プラス自民党って感じですね。維新が6つの小選挙区に候補を当ててきたので、負けてなるものかって雰囲気になっている」
また、立憲民主党の大串博志選対委員長は、こう語る。
「大阪16区は維新と自民党で票が割れるとこちらが浮上できる。関西は自民党、維新、そしてうちという構図。自民党の裏金議員がいる小選挙区ではさらに力が入る」
16区の隣りで、堺市の一部を選挙区とする大阪17区は、維新の馬場伸幸代表の地盤だ。前回は自民党候補を比例復活させないほど、大差で勝利した馬場氏は、地元では、選挙の強さで知られるところだった。だが、自民党の公示前の調査では馬場氏と自民党候補が互角。直近の調査になってようやくリードを広げてきた。
維新の国会議員秘書を務めたことがある選挙コンサルタントの藤川晋之助氏は、こう話す。
「初日から吉村知事が16区の応援に入ったのは、当然、17区の馬場代表の堺市であることも意識してですね。馬場代表が党幹部になれた理由の一つが、選挙に強い絶対的な地元の支援です。今回、馬場代表になって初めての衆院選であり、自民党にプラスして公明党とも全面対決する選挙。代表なので、過去の選挙とは違って応援に時間をとられ、選挙区に戻れる時間がほとんどないのもきついでしょう」
維新にとって鉄壁を誇った地盤、大阪での苦戦状況。藤川氏はこう続ける。
「維新は大阪で勢いをつけて、全国へと広がってきた。その大阪で苦戦しているということは、全国でもかなり厳しい選挙になりかねない。前回比で10議席以上減らすのかな」
(AERA dot.編集部・今西憲之)
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元稿:AERA dot. 主要ニュース 政治 【政局・選挙・2024衆院選】 2024年10月18日 16:32:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。