【社説①・02.13】:選択的夫婦別姓 子供の立場を考えているのか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.13】:選択的夫婦別姓 子供の立場を考えているのか
親と子で、また兄弟姉妹で姓が異なった場合、家族の一体感は損なわれないのか。子供の健全な育成が妨げられる恐れはないのか。
夫婦が同姓にするか別姓にするかを選べる「選択的夫婦別姓」の導入は、家族や社会のあり方に重大な影響を与える。慎重な議論が必要だ。
今国会では選択的夫婦別姓の是非が一つの焦点となりそうだ。
導入に前向きな立憲民主党は関連法案を提出する方針だ。自民党は作業部会で議論を始めた。
民法は夫婦同姓を義務付けている。夫婦はどちらの姓も選べるが、婚姻の際、妻が夫の姓に改めるのが一般的だ。2023年には婚姻届を提出した夫婦のうち、95%が夫の姓を選んでいる。
女性の社会進出の拡大に伴い、政府は、女性が職場などで不便を感じることのないよう、旧姓を通称使用できる仕組みを整えてきた。現在、運転免許証やパスポート、不動産・法人の登記簿などは旧姓併記が可能となっている。
一方、旧姓では口座を開設できない銀行は今もある。また「パスポートが旧姓併記の場合、海外で説明を求められ、負担を感じる」といった声も出ている。政府は、現状の課題を洗い出し、国会での議論に役立ててほしい。
夫婦が別姓にする場合の重要な論点は、子供の姓をどうするかだ。法制審議会は1996年、子供の姓は夫婦が婚姻時に定めるとした民法改正案を答申した。その場合、子供の姓は全員同じとなる。
他方、立民など野党が2022年に提出した民法改正案は、子供が生まれるたびに、父母が協議して姓を定めると明記した。
兄弟姉妹で姓を変えることを認めたのは、夫婦の「互いの姓を承継させたい」という希望を 叶 える狙いがあるが、一つの家族であるのに姓がバラバラという状況を、子供はどう感じるだろう。
野党案はまた、子供の姓を巡って夫婦がもめた場合、家庭裁判所の審判で定める、としている。夫婦で決められない姓をどうやって家裁が決めるというのか。
野党は「多様な価値観を認めるべきだ」と唱えているが、多様な家族像を求めているのは親であって、子供に選択の余地はない。
選択的夫婦別姓はこれから結婚する人だけの問題ではない。法制審案、野党案ともに、既婚の夫婦も法施行から一定期間内なら旧姓に戻せるという。全ての夫婦が同姓を維持するか別姓にするか、選択を迫られることになる。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月13日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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