【社説②・02.14】:ホンダ日産破談 大変革期に挑む覚悟足りない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・02.14】:ホンダ日産破談 大変革期に挑む覚悟足りない
世界をリードすることが期待された自動車業界の大型再編が、わずか1か月半で破談とは。100年に1度と言われる変革期に挑んでいく覚悟はあるのだろうか。
ホンダと日産自動車が、経営統合に向けた協議の打ち切りを決めた。昨年12月下旬に交渉入りし、新たに設立する持ち株会社の傘下に両社を置く計画だったが、業績不振の日産のリストラ計画を巡って、溝が埋まらなかった。
実現すれば、世界での販売台数が700万台を超え、有数の自動車メーカーの連合となっていただけに、極めて残念だ。
自動車産業は関連する取引先が多く、日本経済への影響も大きい。株主だけでなく、従業員や地域社会の失望も大きいだろう。
窮地にあるのが日産である。内田誠社長が就任した2019年に、世界販売台数は約520万台に上ったが、米国や中国などの市場で商品力が低下し、24年は約330万台にまで落ち込んだ。
工場閉鎖など大胆なリストラ策の必要性を指摘する声は多い。
こうした中、台湾電機大手・鴻海精密工業が出資を模索したことから、経営の自律性を確保するために統合を急いだと言われる。
見切り発車のような交渉入りの発表だったが、ホンダは、統合を成功させるには、日産の大規模な再建策が不可欠との立場だった。だが、日産側の取り組みが十分ではないと考えて、主導権を握るために子会社化を打診した。
これが「対等の精神」を強調していた日産側の強い反発を招き、破談の引き金になったという。
日産経営陣の現状認識は甘いと言わざるを得ないが、ホンダ側も事前にもっと丁寧に意思疎通を図るべきではなかったか。今後、電気自動車(EV)分野などで協業の検討を続けるという。不信感を残したままでは難しかろう。
両社が再編へと動いたのは、EV時代の到来を見据えて、このままでは中国BYDや米テスラなど新興企業に勝てないという危機感があったはずだ。
EVの競争力は、自動運転技術やソフトウェア、バッテリーなどがカギとなり、巨額の開発費用を要する。中国メーカーなどは豊富な資金力を誇る。企業規模を拡大し、量産効果を高めなければ、太刀打ち出来ないのが実情だ。
事業環境の変化は激しく、スピード感が必要だ。ホンダと日産が単独で生き残るのは容易でない。それぞれが、新たな提携先など早急に次の戦略を描いてほしい。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月14日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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