【社説①・11.19】:函館線貨物脱線 教訓生かされなかった
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・11.19】:函館線貨物脱線 教訓生かされなかった
渡島管内森町のJR函館線で16日未明、コンテナ貨物列車の脱線事故が発生した。
函館―札幌間の特急などが運休し、3日間で観光客を含めて2万人近くが影響を受けた。
不通となった森―長万部間は1日約40本の貨物列車が走る物流の重要区間でもある。
JR北海道はきのう、脱線が起きたとみられる踏切で破断したレールに著しい腐食が見つかり、脱線の原因の一つになった可能性が高いと発表した。
踏切のレールは敷板に覆われている。だが9月の超音波検査でエコーが途切れる異常があったにもかかわらず、社内ルールに基づいてレール頭部を目視するにとどまっていた。
JRは2013年に函館線の大沼駅構内で起きた貨物列車の脱線事故をきっかけに、レール検査データの改ざんが発覚し、事業改善命令を受けた。
安全最優先を誓ったはずではなかったか。教訓は生かされなかったと断じざるを得ない。
再発防止に向けて、保線作業のあり方を根本から見直さなければならない。
問題のレールは腐食で通常15ミリある腹部の厚さが3ミリになっていた部分もあった。JRは定期検査で発見できず、10月6日に行った通常の保線でも問題なしとしていた。
超音波検査でデータに異常があった場合、敷板を外して確認するのが望まれるのに、社内でルール化していなかった。
レール底部の腐食に着目した検査は行っていたが、腹部の腐食からレールが損傷する事態は予見していなかったという。
JRは今回の現場と条件が似た10か所について超音波検査を行って安全を確認したほか、今後点検の範囲を拡大するとしている。早急に着手し、範囲を広げるべきだろう。
腐食したレールは1992年から使われていた。設備更新の時期や予算に問題はなかったかの検証も欠かせない。
国土交通省の運輸安全委員会は「非常に重大な事故」として調査している。レールの腐食に関するJRの対応や情報収集が適切だったかを含め、徹底的に調べてもらいたい。
JRによる代行バス手配も不十分だった。交通手段を失った乗客から不満の声が上がった。
バス業界も人手不足にあるとはいえ、バス事業者や航空会社と代替輸送の体制づくりや、シミュレーションを不断に行っていくことが肝要である。
乗客への案内や周知でも課題が残った。情報発信のあり方も見直す機会とすべきだ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月19日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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