【社説①・12.13】:ICCへの圧力 大国の横暴排除せねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.13】:ICCへの圧力 大国の横暴排除せねば
個人の戦争犯罪などを訴追する国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長が年次総会の冒頭演説で「(ICCが)国連安全保障理事会の常任理事国からテロ組織のように脅迫されている」と訴えた。国際法と国際司法の危機にほかならない。
日本政府は「法の支配」を守るため大国の圧力に屈せず、ICC擁護の姿勢を鮮明にすべきだ。
ICCは11月、パレスチナ自治区ガザでの戦闘に絡む戦争犯罪などの疑いで、イスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出した。
同国首相府はICCを「反ユダヤ的」と非難。米国のトランプ次期政権で大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に内定したウォルツ下院議員も「(2期目が始動する)来年1月にはICCと国連の反ユダヤ的な偏向に強く対処できる」と対抗措置を示唆した。
1期目のトランプ政権はアフガニスタンでの戦闘に加わった米兵たちの戦争犯罪捜査を巡り、ICCの主任検察官に米国内の資産を凍結する制裁を科している。
ICCはロシアのウクライナ侵攻でも昨年3月、プーチン大統領に戦争犯罪の疑いで逮捕状を発行したが、ロシアは報復措置として赤根氏らを指名手配した。
ICCは大量虐殺などを犯した個人を追及する独立の常設機関で2002年に活動を始めた。日本は07年に加わり、最大の資金拠出国だ。現在124カ国・地域が加盟するが、安保理常任理事国の米国、ロシア、中国は未加盟だ。
米国はICCによるプーチン氏逮捕状を歓迎する一方、ネタニヤフ氏の逮捕状は非難する「二重基準」を隠そうともしない。
加盟国は逮捕状執行の義務を負うが、加盟国モンゴルがプーチン氏訪問を受け入れるなど、政治的利害優先の骨抜きも広がる。放置すれば、重大な人権侵害に国際法を適用して再発防止を促すICCの創設理念が崩れかねない。
赤根氏は「歴史の転換点に立っている」とも警告した。日本政府は「法の支配」を目指す赤根氏を力強く支え、「力の支配」をもくろむ大国の横暴を排除する先頭に立つべきである。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月13日 07:28:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。
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