【ファクトチェック・ニッポン!・11.09】:NHKが健全な公共放送になる日は来るのか 元記者の葬儀に森元首相から弔花が届いた
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・11.09】:NHKが健全な公共放送になる日は来るのか 元記者の葬儀に森元首相から弔花が届いた
今年8月、元NHK記者が死亡した。その葬儀に贈られた花を参列者は複雑な思いで見た。送り主が森喜朗元首相だったからだ。
私は2021年に、「指南書問題」という記事を書いた。その詳細は「NHK記者がNHKを取材した」(電子書籍)で確認していただきたいが、問題発言で政権崩壊の危機にあった当時の森首相に危機を切り抜けるための指南書を記者が書いていたというものだ。当時は誰かは不明とされたが、私の取材でそれがNHKの当時の首相官邸の記者だったことがわかった。
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健全な公共放送になる日は来るのだろうか…(C)日刊ゲンダイ
葬儀は指南書を書いたとされる元記者のものだった。実は当時から指南書を書いたのはNHKの記者だとの指摘はあった。しかしNHKは当時の海老沢勝二会長がそれを否定。私の記事に対しても、NHKは当時の会長答弁を繰り返した。私は記事で、NHKにその検証を求めた。それがNHKの再生に不可欠だと考えたからだ。しかし当事者の死で、その機会は失われた。
本来、報道機関とは何か問題が起きれば事実を解明すべき存在だ。では、NHKは自らに不都合な問題が起きた時、それに向き合ってきただろうか? 私にはその印象はない。どちらかというと、世間が忘れるのを待つというのがその印象だ。そのひとつがこの指南書問題であり、もうひとつが小欄で何度も取り上げている佐戸未和さんの過労死の問題だ。小欄も残すところ2回となった今回、やはりこの問題を取り上げないわけにはいかない。
その未和さんの勤務先だった東京都庁の記者クラブでキャップとして勤務していた記者も過労死している。NHKはその際、「再び労災認定を受けたことは痛恨の極みであり、大変重く受け止めています」とのコメントを出しているが、そもそもNHKは未和さんの過労死を教訓にしていない。そう断言できるのは、未和さんの過労死について調査報告書さえ存在しないからだ。その結果、この問題を小欄で取り上げている私にNHKの現役の職員から「あれは持病によるもので過労死ではない。遺族がうるさいのでNHKが過労死にしてあげた」などとする指摘が届いている。もちろん、これは事実ではない。過労死と認定した労働基準監督署は未和さんの健康診断のデータも確認した上で判断を下している。また、NHKが未和さんの情報を積極的に労基署に提出したという事実もない。
実はNHKには在職中に職員が死亡するケースが少なくない。2017年までの10年間で、91人が在職中に死亡している。多い年で12人、少ない年でも6人が死亡している。それらの中で労基署が調査したら過労死と認定されるケースはあるのではないか? 未和さんの過労死についての調査報告書がない事実が、そうした疑念を抱かせる。
未和さんのご遺族の要望は、調査報告書の作成と健全な公共放送の運営だ。これは冒頭の指南書問題にも通じる。世間が忘れるのを待つという姿勢を変えない限り、NHKが健全な公共放送になる日は来ない。NHKは現在、改革を声高に叫んでいる。しかし自らに厳しい目を向けない限り、その体質は変わらないだろう。
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元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ファクトチェック・ニッポン!」】 2022年11月09日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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