《社説②・12.02》:危険運転の要件見直し 法律に市民感覚の反映を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.02》:危険運転の要件見直し 法律に市民感覚の反映を
悲惨な交通事故を招いた悪質運転に対し、市民感覚に沿った処罰をするための仕組みが必要だ。
自動車運転処罰法で定められた「危険運転致死傷」について、適用要件の見直しを求める報告書を法務省の有識者検討会がまとめた。
車の制御が困難な高速度で走行したり、飲酒で正常な運転が難しい状態だったりして、死傷事故を起こした場合が対象となる。
ただ、条文の表現が曖昧なこともあり、適用されるケースは限られているのが現状だ。
2018年に津市で、時速146キロで走行していた乗用車が、前方を横切っていたタクシーに衝突し、4人を死なせるなどした。
だが、危険運転致死傷に当たらないとの判決が確定した。タクシーを避けられる速度かどうかを考慮する必要はないと判断された。
15年に大阪市で飲酒運転の車が3人を死傷させた事故でも、正常な操作ができないほどではなかったとして、危険運転と認めない判決が確定している。
報告書では、「他の車や歩行者に対処できないスピードでの走行」を要件に加えたうえで、速度の基準を示すことが提案された。現場の最高速度の2倍や1・5倍が例示された。
飲酒運転についても、呼気や血中のアルコール濃度で数値基準を設け、達していれば処罰する方策が考えられると記載された。
実現すれば適用するかどうかの判断がしやすくなるのは確かだ。一方で数値にこだわると、交通事情や道路環境に即した対応ができなくなる恐れもある。適正な処罰に向け、議論を深めるべきだ。
政府に見直しを迫ったのは、事故被害者の遺族たちだ。実際の処罰が、運転の悪質さに見合っていないとの声が上がっていた。
危険運転で相手や同乗者を死なせた場合、最高刑は懲役20年だが、不注意による過失運転とされれば懲役7年となる。
近年は遺族らの要請を受け、過失運転から危険運転に起訴内容が変更される例も相次ぐ。時速194キロで走行した車による死亡事故で大分地裁は危険運転と認めた。
昨年の交通事故は件数、死者数とも前年より増加した。輪禍をなくしていくための対策と取り締まりを徹底しなければならない。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月02日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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