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【社説・01.08】:学術会議の改革案 独立性、これで保てるのか

2025-01-09 07:00:45 | 【日本の学術(理学・工学・基礎科学・生命科学・人文・社会科学・教養・教養教...

【社説・01.08】:学術会議の改革案 独立性、これで保てるのか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.08】:学術会議の改革案 独立性、これで保てるのか 

 日本学術会議の在り方を議論していた政府の有識者懇談会が最終報告書をまとめた。現行の「国の特別機関」から法人に移行させるという。

 会員の首相任命をなくし、国に助言する権限や国からの財政支援を保障するなど、学術会議側の要望を受け入れた部分もある。とはいえ、活動状況を確認する「評価委員会」に加え、予算や業務の執行をチェックする監事も首相が任命するとした点は疑問だ。政治介入の余地が残り、独立性が損なわれかねない。

 政府は、法改正案をまとめる構えだが、懸念の残る改革を急ぐ必要はない。

 問題の発端は、2020年に当時の菅義偉首相が学術会議の推薦した会員候補105人のうち6人だけ任命を拒否したことだった。6人は政府方針に異を唱えたことがあったが、政府は「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を求める観点から判断した」と説明するだけ。具体的な理由は今なお明らかにしていない。

 任命拒否に対し、学術会議側は「学問の自由の侵害」だと強く抗議した。ところが、政府は「組織の在り方に問題がある」と論点をすり替え、4年余り議論を重ねてきた。

 政府の真の狙いは何か―。これまでの議論から透けて見える。コントロールの利く組織にしたいのだろう。学術会議が1949年の発足以来、一貫して軍事目的のための科学研究に明確に反対してきたことが背景にある。過去の戦争協力に対する反省から生まれた軍事研究反対の姿勢が気に入らないようだ。

 政府は近年、防衛力強化を目指し、大学や研究機関を軍事関連分野の研究に引き込もうと努めている。15年度に始めた、軍事応用も可能な基礎研究に助成する防衛省の公募制度などだ。これに対し、学術会議は17年、「研究の進捗(しんちょく)管理などで政府による介入が著しく、問題が多い」と批判した。政府にとっては厄介な組織なのだろう。

 それだけに、政治介入の余地を残す法人化は問題だ。政府は年10億円に上る税金投入を理由として挙げているが、任命を拒否する前は特段、問題視していなかった上、運営に口も出してこなかった。今になって、税金投入を理由に関与を強めようとするのは理解し難い。

 その前に政府には、やるべきことがあるのではないか。「自民党1強」態勢で強行した6人の任命拒否について理由や経緯を、きちんと説明する必要がある。

 感染症や気候変動など、科学と社会の関わりは、かつてなく深まっている。例えば生成人工知能(AI)は私たちの暮らしを便利にし、経済発展の礎ともなりそうだ。ただ、悪用されれば、人殺しの武器をさらに強力なものに変えてしまいかねない。

 AIをはじめ、新たな分野の研究を進めるのは科学者の務めだろう。それでも、軍事目的に陥ることのないよう、歯止めを設けることが不可欠だ。学術会議にこそ期待される役割である。軍事研究をしないという戦後の原点を改めて誓うことにもなる。 

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月08日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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