《社説①・12.26》:貸金庫で窃盗 背景の徹底分析が必要だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.26》:貸金庫で窃盗 背景の徹底分析が必要だ
顧客の大切な資産を扱う銀行にとって最も重要なのは信頼だ。それを根底から揺るがす事態を、なぜ防げなかったのか。
行員による貸金庫の窃盗問題について三菱UFJ銀行が記者会見を開き、半沢淳一頭取が謝罪した。今後さらに調査を進め、自身を含めた役員の処分も検討していくという。
盗みを働いた行員個人にとどまらず、貸金庫ビジネスの管理のあり方に関わる問題である。背景を徹底的に分析し、再発防止策につなげなくてはならない。
顧客の指摘を機に10月31日に発覚した。40代の女性行員が、勤務していた東京都内の2支店で計約60人の貸金庫を無断で開け、時価十数億円相当の金品を盗んだことを認めた。2020年4月から発覚した24年10月まで、約4年半にわたって繰り返されていた。
三菱UFJは一連の経緯を11月22日に公表し、この行員を懲戒解雇したと説明。今月16日になって開いた記者会見で、新たに数十人から被害の可能性について申告があったと公表している。
貸金庫は、重要書類などの貴重品を盗難や災害から守るため、銀行内の保管庫を貸し出すサービスだ。B4サイズの書類が入る箱形が多い。利用者以外に中身は知られないことになっている。
開錠には顧客の鍵と銀行の鍵の両方が必要な仕組みで、顧客の鍵には予備の合鍵があり、銀行が保管している。元行員は各支店で予備鍵を管理する店頭業務責任者を務めていたため、悪用して開けることができたという。
同行は対策として、予備鍵を各支店ではなく本部で一括保管する方式に変更すると説明。貸金庫関連の手続きを見直し、行員の管理を強化するとした。
不可解なのは、なぜ4年半にもわたって発覚を免れることができたのか、ということだ。実効性ある対策には、その詳細を明らかにしていく必要があろう。
半沢頭取は会見で、金庫の管理業務が一人に集中し「相互けん制が十分にできていなかった」と説明。過去に貸金庫の不祥事がなかったため鍵の点検方法の適切な見直しがなかったとも述べた。
顧客にすれば、銀行ならば不祥事を防ぐための行員間の相互けん制などは当然できている、と考えるのが一般的な感覚だろう。
巨額窃盗の公表から3週間余りを経ての会見には、説明責任軽視との批判もある。不祥事に際し丁寧な対応を欠くようでは、信頼回復は遠のくばかりだ。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月26日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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