【HUNTER・12.25】:【鹿児島県警の闇】:警察庁が隠した元生安部長告発文書、県警の不開示決定で存在明らかに
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・12.24】:【鹿児島県警の闇】:警察庁が隠した元生安部長告発文書、県警の不開示決定で存在明らかに
元日に起きた能登半島地震を受けて全国から集められた警察官が厳しい条件下で復旧作業にあたっていた2月初旬、野川明輝本部長(当時)をはじめとする鹿児島県警のほとんどの幹部が九州管区警察局長と宴会を開いていた(既報)。この愚行を止めようとしたのは、県警内部の闇を明るみに出そうと行った内部通報を、情報漏洩だと決めつけられ国家公務員法違反の疑いで逮捕された本田尚志元鹿児島県警生活安全部長。同氏は1月下旬、宴会の予定と経緯を明らかにした上で、中止指導を求める文書を警察庁に送付していたとされる。しかし、ハンターが別の目的で行った同庁への情報公開請求では、当然あるはずの告発文書の存在自体が隠される格好となっている。
■警察不祥事、のり弁で隠ぺい
今年7月、ハンターは警察庁に対し、令和3年から本年7月5日までの間に「鹿児島県警職員の非違事案や不適切行為に関する告発、苦情、相談等の記録及びそれぞれの件ごとに提出を受けた文書、データ」を開示請求した。不祥事続きの同県警について、上級庁の警察庁に寄せられた告発や抗議の件数と内容を知るためだった。
その結果、件数だけをカウントした記録を含めて全部で43件がヒット。うち8件が形のある文書として開示された(*下の画僧参照)。開示文書は内容がすべて黒塗りで、どのような不適切事案が示されているのかまるで分からない。
電話による告発や苦情などの詳しい内容を記した文書はなく、「広聴事案・受理処理簿」や「電子メール処理簿」に件数などが記されている程度。組織の「闇」は見えてこない。
◇ ◇
次いで10月、警察庁に対し「令和6年1月以降に警察庁に送付されたすべての内部通報」を開示請求。結果として存在が明らかとなったのが下の4件だが、開示されたものは、やはり“のり弁”状態でどのような公益通報だったのか分らないよう処理されていた(*画僧参照)。
この時の開示請求も、警官の違法行為が続出する警察組織の闇の深さを調べるために行ったもの。「公益通報」であることを明示して送付されていたメールが3件、郵便物が1件となっている。ただし、対象文書を鹿児島県警の件に限定していないため、告発対象がどこの警察組織なのか分からない。
問題は、公益通報として適切に処理されたのかどうかの判断さえできないことだ。これでは内部通報者を守ることは不可能で、警察の不祥事も表面化しない。
■守られぬ公益通報者
今年、「公益通報」の在り方が注目されるきっかけとなった事案が2件起きた。まず、元鹿児島県警生活安全部長によるジャーナリストへの「内部通報」。そして県議会百条委員会で審議が進む兵庫県職員による「内部通報」である。前者のケースは警察庁主導で“情報漏えい”とみなされ告発者が逮捕・起訴されており、後者事例の当事者は県知事に対する誹謗中傷を行ったとして懲戒処分を受けた後、自殺している。いずれの場合も、通報者は守られなかったということだ。
勇気ある告発者が守られない限り、公益通報制度自体が有名無実化することは言うまでもない。公益通報者保護法は通報者捜しや通報者の不利益な扱いを禁じているが、鹿児島でも兵庫でも、告発対象となった県警本部長や県知事が「公益性」を否定し、告発者を犯罪者に仕立て上げた。「正義」は否定され、「悪」がはびこる現状だ。
権力側に対する投書や苦情なら、個人情報を完全に隠す形で一定程度開示し、それに対する回答まで公開するのが「公」の努めだろう。それが「公益通報」の窓口に送られた告発事案なら、なおさらだ。また、鹿児島県警の件で明らかなとおり、警察組織の不祥事を告発した内容が公益通報か否かの判断を、指さされた警察組織が下すというのは筋違い。犯罪者が自分の犯罪を裁けばどうなるか、子供でも分かる話だ。公益通報の在り方については、政治が見直しを検討すべきだろう。
■警察幹部「宴会」の告発文書
鹿児島県警の闇について調べるために始めた一連の開示請求だったが、記者は最近になって、あるはずの「内部告発」文書がないことに気付いた。先日、本サイトで報じた九州管区警察局長と鹿児島県警幹部による非常時下での「宴会」に関する告発文書だ。
問題の宴会は、元日に起きた能登半島地震を受けて全国から警察官が災害派遣され難航する復旧作業にあたっていた2月初旬に、鹿児島市内の日本料理店で、本部長はじめとする鹿児島県警のほとんどの幹部が九州管区警察局長と開いたもの。この「宴会」を問題視し、事前に警察庁に「内部通報」したのが、情報漏洩の疑いをかけられ国家公務員法違反の疑いで逮捕・起訴された本田元鹿児島県警生活安全部長だったとされる。しかし、これまでに行った2回の開示請求で入手した資料の中には、該当する期間の文書はない。存否応答拒否や情報公開法の適用除外となった文書があるという“不開示理由”も示されていない。つまり、存在自体が否定された形なのだ。「隠ぺい」を疑わざるを得ない。
そこでハンターは12月初め、県警と警察庁に同じ内容の開示請求を行った。求めたのは「本田尚志元鹿児島県警生活安全部長が井上昌一元鹿児島県警刑事部長の名前を使って発出したとされる文書」である。
県警はこれまでの記者会見で、内容も送り先も伏せたまま、本田元部長が逮捕容疑となった小笠原淳氏への内部通報とは別に、井上刑事部長(当時)の名前を使ったもう1件の文書を発出していたことを明かしている。わざわざ2通目の文書の存在に言及したのは、いずれ「宴会」が表面化するのを見越して、本田氏の狙いが「公益通報」ではなく、井上氏を貶めることにあったと印象付けるためだろう。姑息という他ないが、警察庁が存在さえ認めようとしなかった文書があることを、先に県警が認めてくれた。それが下の不開示決定通知である。
対象文書は、鹿児島県情報公開条例の「適用除外」であり、その根拠を「弁論の公開を禁止した事件の訴訟記録又は一般の閲覧に適しないものとしてその閲覧が禁止された訴訟記録は(略)訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があって特に訴訟記録の保管者の許可を受けた者でなければ、これを閲覧することができない」という刑事訴訟法の規定に求めたものだ。要は、刑事裁判の証拠書類だから開示できないということ。これで、対象文書が「ある」ということを、県警が証明した格好になる。井上前刑事部長の名前を使ったにせよ、本田氏は、問題の宴会を不適切だと考え警察庁に是正措置を求めたがかなわず、次の内部通報を北海道のジャーナリスト・小笠原淳氏に送らざるを得なかったという見立てが成り立つ。
ちなみに、県警は本田氏が井上前刑事部長の名前を使って内部告発したことを「井上氏をおとしめるための行為」と繰り返してきたが、日本語の使い方を間違っている。「おとしめる」とは、“ばかにする”とか“さげすむ”という意味。不正を暴く行為は「正義」の発露であって、名前を使われたのが誰であれ、それを以て名義人が「おとしめられた」ということにはなるまい。もちろん、本田氏が郵送した文書はいずれも警察の不祥事を暴いたもので、それが事実である以上、公益通報に他ならない。
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・話題・鹿児島県警・県警内部の闇を明るみに出そうと行った内部通報】 2024年12月25日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます