《社説②・12.18》:沖縄海兵隊移転 負担軽減はまやかしだ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.18》:沖縄海兵隊移転 負担軽減はまやかしだ
2006年の日米合意から既に18年。しかも、まだわずか100人が移転するに過ぎない。政府が言う「基地負担の軽減」のまやかしがあらわだ。
沖縄に駐留する米海兵隊の米領グアムへの移転である。先遣隊となる第1陣の移転が始まったことを、中谷元・防衛相が明らかにした。しかし、第2陣以降の日程はなお「白紙」だという。
ハワイや米本土への移転を含め全体で9千人を沖縄から移す計画が、いつ完了するのかも分からない。米軍が移転計画を決めていないことを理由にする政府の姿勢はおよそ主体性を欠く。
日米両政府は06年、在日米軍再編のロードマップ(行程表)を取り決め、米軍普天間飛行場の移設とともに、海兵隊の移転を柱と位置づけた。12年に再合意した再編計画で、グアムには4千人以上を移すことを決めている。
第1陣は、そのごく一部にとどまる。日本政府は移転先の基地整備に、負担の上限に近い3700億円余を既に支出したという。にもかかわらず、移転は遅々として進んでいない。沖縄の負担軽減に努めた成果のように言うのは、ごまかしでしかない。
米軍任せでは、移転そのものが止まる可能性もある。沖縄の玉城デニー知事が中谷氏との会談で、具体的な移転スケジュールの明示と、一日も早い移転の完了を求めたのは当然だ。
沖縄に駐留する海兵隊は1万9千人とされるが、実数は公表されていない。移転完了後の兵員数が実際にどうなるか、はっきりしないのが実情だ。その点も政府は明確にする必要がある。
沖縄の基地負担は、軽減するどころか増しているのが現実だ。名護市辺野古では、民意と自治を踏みつけにして米軍基地の建設が強行されている。先島諸島には自衛隊の駐屯地が相次いで開設され、軍事要塞(ようさい)化が急速に進む。
政府が負担軽減を言うなら、何より、辺野古の工事をいったん止め、沖縄県と協議の場を持つべきだ。加えて、取り組まなければならないのが、在日米軍の地位協定の改定である。米軍に特権を認める協定の下、深刻な犯罪や事故によって沖縄の人々は尊厳と暮らしを脅かされ続けている。
石破茂首相は自民党の総裁選で地位協定の見直しに「着手する」と表明した。沖縄の演説会でのその発言は、首相に就任したことで一段と重みを増している。党内の議論が大事だと繰り返すばかりでは、責任を果たせない。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月18日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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