【卓上四季・11.20】:谷川俊太郎さん
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季・11.20】:谷川俊太郎さん
18歳になった若者は途方にくれていた。集団生活が大の苦手。学校嫌いがひどく成績はどんどん落ちていく。なんとか高校を卒業したけれど、この先どうしたらよいのだろう
▼父親から今後の進路を問われ、詩を書きためたノートを差しだす。それが三好達治の手に渡り激賞される。作品は詩集「二十億光年の孤独」にまとまった。谷川俊太郎さんは彗星(すいせい)のように世に現れた
▼目の前の世界を眺めて、工作するように言葉という部品をつなぐと、世界のひな型みたいなものができあがる―。その楽しさを原点に70年以上も詩作を続けた
▼<人類は小さな球の上で/眠り起きそして働き/ときどき火星に仲間を欲しがったりする>。透明感ある叙情詩や恋愛詩があれば、やさしい言葉によるユーモラスな詩も。<かっぱかっぱらった/かっぱらっぱかっぱらった/とってちってた>。作風の多様さと作品の多さに驚く
▼詩にとどまらず好奇心のおもむくままに活動した。「鉄腕アトム」の主題歌もスヌーピーの翻訳もこの人の仕事である
▼90歳を超え、なお新作を発表した。永遠に書き続けるようにみえた大詩人にもお別れのときがきた。晩年の作品「さようなら」を思い出す。<もう私は私に未練がないから/迷わずに私を忘れて/泥に溶けよう空に消えよう/言葉なきものたちの仲間になろう>
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】 2024年11月20日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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