【社説】:プラ新法 削減へ抜本策欠かせぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:プラ新法 削減へ抜本策欠かせぬ
使い捨てプラスチック製品の削減を目指す新法「プラスチック資源循環促進法」が今月、施行された。プラ製品を客に多く提供する企業に、使い捨ての削減を義務付けた。対象の製品はフォークやスプーン、歯ブラシなど身近な12品目にわたる。
コンビニが石油由来プラの使用量を減らしたスプーンに切り替えたり、ホテルが衛生用品を客室ごとに置かず必要な人だけに渡す方法にしたりと、既に対応を始めている。クリーニング業界では衣類用カバーの使用量をどう減らせるかを模索している。各分野でプラ削減への取り組みを促すことだろう。
とはいえ対象としたプラ製品は、日本で1年間に排出される約800万トン超のうち、数万トン程度にすぎない。しかも取り組みの度合いは企業任せで、客に使うかどうかの意思を確認するだけでも「削減」と見なすという。効果の高い有料化を義務付けたわけではない。
使い捨て容器の使用やプラ製ストローの販売を禁止した、欧州連合(EU)各国の強い規制に比べ、あまりに緩く見える。
新法はプラ製品全ての製造、販売、回収・リサイクルの過程で資源循環を目指す。これまでの法が、容器包装や家電など製品別でリサイクルに重点を置いていたのとは異なる。つまり製造段階からごみを極力減らす設計をした上で、プラを使う場合も再生可能な素材に切り替え、リサイクルを徹底させる考え。EUの水準にようやく近づいたと言える。
だが個々の取り組みを促す強制力が弱すぎる。とりわけ製造販売の事業者には、自主回収して再び資源として使う計画の策定を求めただけだ。プラ製品を世に送り出す事業者に削減の責任をより重くする抜本策がなければ、解決にはつながるまい。
製造販売の事業者に、自社の製品がごみになった後のリサイクルや回収の費用負担を求める「拡大生産者責任」の原則が、EUをはじめ国際的に広まっている。事業者がごみ削減対策を進める動機になっている。
新法で進められる削減には限界があり、実効性にも疑問があある。政府は及び腰にならず、「拡大生産者責任」に踏み込む必要があるのではないか。
プラ削減の出発点は、深刻な海洋汚染への国際的な危機意識だ。波や紫外線の作用で5ミリ以下になったマイクロプラが生態系に及ぼす危険性は、広く知られるようになった。使い捨てプラの廃棄量が世界4位の日本も当然、対処を迫られる。
瀬戸内海の沿岸域でも、北太平洋と同レベルのマイクロプラが検出されている。ごみの大半は地元の川から流れ出ていると専門家は指摘する。今年2月に改定された瀬戸内海環境保全基本計画に、プラごみの汚染が顕在化した新たな課題として盛り込まれたばかりだ。広島県は県内から海に流出するプラごみを2050年にゼロとする目標を掲げた。地域ぐるみの削減を加速させる必要がある。
企業の意識や取り組みを変えるために、私たち消費者がプラ削減への意識を高めるのも大切だ。20年7月からのレジ袋有料化をきっかけにマイバッグが普及し、レジ袋を使わない人の割合が増えた。使い捨てプラを当たり前のように受け取ってきた生活様式を変えねばならない。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月03日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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