【社説①・02.11】:京都市の予算案 持続可能な財政へ緊張感を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.11】:京都市の予算案 持続可能な財政へ緊張感を
京都市が2025年度当初予算案を発表した。1年前に就任した松井孝治市長が、実質初めて編成した通年予算である。
一般会計は前年比0・1%増の9575億円で、新型コロナウイルス対策で膨張した21年度に次いで、過去2番目の規模となった。第2子以降の保育料無償化や新興企業の支援拡充など、松井氏の市長選公約を実行する予算も盛り込んだ。
借金(市債)返済に備えた基金の取り崩しなど、特別な対策をとらずに収支を均衡させたのは3年連続となる。好転の要因は市税の増加で、コロナ後の経済正常化や賃上げ、物価高などで過去最大の3360億円を見込む。持続可能な財政へ一歩前進と映るが、予断を許さない。
コスト高による中小企業の倒産は後を絶たず、国際経済の不透明感は京都企業からの税収見通しにも影を落とす。日銀の利上げによる「金利ある世界」は市の借金利払いにも響く。
急速な高齢化で、今後も税収の伸びを超える福祉の需要増が予想される。高い緊張感を持った財政運営を求めたい。
政策では、松井氏が掲げる「攻めの都市経営」を反映し、経済分野を重視する姿勢が目を引く。海外からの企業誘致や新興のスタートアップ支援を強化し、「都市の活力と成長を支える産業を育てる」ことで、人口流出を防ぐ狙いもあるという。
自治体間の競争が激しい分野であると同時に、産業振興は京都府が主導してきた経過もある。「府市協調」の中で役割分担を明確にし、大学などとの幅広い協働も欠かせない。
懸案のオーバーツーリズム対策は、市バスの車内混雑度の発信や、地域と連携した散乱ごみ解消など地道な施策が中心となった。公約である市バスの市民優先価格の導入には、国との調整などに時間を要するという。
宿泊税収の伸びもあり、対策の財源は増えつつあるが、年1兆円を超える市内の観光消費額が、経済・財政にどんな効果を生んでいるのか、わかりやすい分析と説明が必要ではないか。
市民生活に影響が大きいのは、高齢者が多く加入する国民健康保険料の引き上げである。
将来世代の負担軽減につなげるとはいえ、物価高に直面する家計への圧迫が避けられない。丁寧な議論を尽くすとともに、国や府と抜本的な制度見直しの議論を加速させるべきだ。
予算案の発表に合わせて、20年以上続く市長と副市長の給与カットを4月から取りやめる方針も示された。市政運営で一層の結果責任が問われよう。
公約を手堅く一定反映させたものの、前例の見直しや国への問題提起の面では物足りない。28年ぶりに市役所外からトップに就いた松井氏が、思い切った改革や政策に踏み込むには、庁内の意識刷新を浸透させられるかが鍵となろう。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月11日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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