《社説②・01.28》:元兵庫県議の死亡 許されぬSNS上の中傷
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・01.28》:元兵庫県議の死亡 許されぬSNS上の中傷
言葉の暴力は、時に人を死に追いやる。根拠を欠いた無責任な発信と、言論の自由をはき違えてはならない。
斎藤元彦・兵庫県知事のパワーハラスメントなどの疑惑を追及していた竹内英明元県議が亡くなった。自殺とみられる。
![](https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/28/20250128ddm005070144000p/7.jpg?1)
県議会調査特別委員会(百条委)の委員だった竹内氏に対しては、出直し知事選の告示前後からSNS(ネット交流サービス)での中傷が激しくなっていた。
疑惑を告発した県幹部の文書について、竹内氏が「作成に関与した」「書かせた」などの根拠不明の情報が拡散した。「斎藤知事をおとしめた主犯格」とのレッテル貼りも横行した。
主要な発信源となってきたのは政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏だ。
選挙期間中には、百条委委員長の自宅兼事務所前で「出てこい」「自死されたら困るのでこれくらいにしておく」などと演説する様子を動画配信した。その際、竹内氏の事務所にも行く、と直接的な嫌がらせをほのめかしていた。
竹内氏は周囲に「家族が家から出られない日が1週間も続き、身も心もボロボロになった」などと話し、知事選の直後に辞職した。
さらに悪質なのは、立花氏が竹内氏の死後も中傷を続けたことだ。「逮捕が怖くて自ら命を絶った」などと発信し、県警本部長が否定すると一転、誤りを認めた。
ネット上の中傷行為に対して名誉毀損(きそん)罪や侮辱罪が適用されたケースもある。虚偽の事実を示した場合は死者の名誉毀損も成立する。違法行為があれば捜査当局は厳正に対処しなければならない。
プラットフォーム企業による投稿管理も重要だ。
他人の権利を侵害する投稿への対応を義務づける情報流通プラットフォーム対処法が今春にも施行される。表現の自由を侵害しないよう基準を明確にした上で、投稿削除やアカウント凍結など迅速な措置が求められる。
拡散する人にも責任がある。中傷投稿の転載について損害賠償を命じる判決が複数出ている。
ネット上では暴言や虚偽の情報が増幅しやすい。その特性を踏まえた対策を、社会全体で講じることが急務である。
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