《24色のペン・01.10》:働く=稼ぐ? 「数値化する社会」を問う=清水有香
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《24色のペン・01.10》:働く=稼ぐ? 「数値化する社会」を問う=清水有香
働くのはお金を稼いで生きるため。でも、その「生」が脅かされているとしたら、働く意味はどこにあるのだろう。過労死防止法の施行から10年を経てもなお、過酷な労働による健康被害や自殺は後を絶たない。
「今の世の中、働くことがすごく矮小(わいしょう)化されていると思うんです」
奈良県東吉野村で私設図書館を開く思想家の青木真兵(しんぺい)さん(41)は語る。「労働力を提供し、その対価として賃金をもらう。これは働くことの一部でしかない」と。
ならば、働くことの本来の意味はどう捉えたらいいのか。青木さんは「数値化できないもの」というキーワードを挙げる。
◆自宅を開放した「彼岸」の図書館
奈良市内から車で約1時間半。山のふもとの小さな橋を渡り、杉木立を抜けた川のほとりに平屋の古民家がある。“彼岸の図書館”をうたうそこは、青木さんと妻・海青子(みあこ)さん(39)が2016年から自宅を開放して運営する「ルチャ・リブロ」だ。
館の名前は、メキシコのプロレス「ルチャリブレ」と、本を意味するスペイン語「リブロ」にちなむ。どちらも青木さんが愛してやまないもの。板張りの居間や和室の棚には、歴史や哲学書、文学を中心とした約3000冊が並ぶ。本に貼られた数々の付箋が、夫婦の蔵書であることを物語る。
2人は9年前にこの山村に移り住むまで、兵庫県西宮市で暮らしていた。
青木さんは当時、古代地中海史の研究者として…
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