【社説・12.19】:エネルギー計画 福島の教訓踏まえたのか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.19】:エネルギー計画 福島の教訓踏まえたのか
原発回帰への方針転換が鮮明になったが、福島の教訓を十分踏まえたか心もとない。前のめりに原発の「最大限活用」を進めるのではなく、安全性確保と立地地域の理解が大前提だと再確認したい。
政府はエネルギー政策の中長期的な指針「エネルギー基本計画」の改定案を有識者会議で示した。
最大の特徴は、2011年の東京電力福島第1原発事故以降、記してきた「原発の依存度を低減する」との文言を削除したことだ。
岸田文雄前政権が原発の最大限活用に方針転換し、計画の文言と矛盾するとして、自民党内や経済界などが削除を求めていた。
原発は再生可能エネルギーとともに最大限活用すると明記した。
40年度の発電量全体に占める原発の割合は2割程度とした。30年度に20~22%としている現行計画と同水準だが、2割程度は事実上、東電柏崎刈羽原発を含む既存原発のフル稼働を意味している。
一方、再生エネの割合は4~5割程度とした。最大電源に位置付けたものの、現行目標の36~38%から大きな上積みがあったとは言い難い。現行計画にある「最優先で取り組む」の文言も削除した。
注目されるのは、原発の建て替え要件を緩和し、同じ電力会社なら、廃炉を決めた原発の敷地外でも建設できるようにしたことだ。電力の安定供給と脱炭素化を同時に達成するため、一定規模で原発を維持する狙いがあるだろう。
政府は、データセンター増設や半導体産業の強化で電力需要が高まっているとしており、安定的な電力供給には、天候に依存する再エネだけではなく、原発が欠かせないとの立場だ。
しかし、原発は建設コストが高騰し、工期も長期化している。敷地内では使用済みの核燃料が増え続けている。
新増設は十分な検討と、慎重な判断が不可欠だろう。
気になるのは、次期計画を検討する有識者会議のメンバーは原発推進派が多いとされることだ。原案に賛同する声が大勢で、大きな論争もなく終わった。
次期計画は、事故を受けた福島の復興・再生を最重要課題としているものの、地元との話し合いに割かれた時間は短かった。住民不在の懸念は尽きない。
柏崎刈羽原発の再稼動には「再稼動への理解が進むように政府を挙げて対応する」と明記した。
新潟日報社が10月に行った調査では、柏崎刈羽原発の再稼動に「反対」など否定的な回答は46・5%で、「賛成」など肯定的な回答の36・2%を上回った。原発の安全性に対する県民の不安や不信が払拭できたと言い切れない。
原発の利用で生じる高レベル放射性廃棄物は数万年に及ぶ管理を必要とするなど、影響は将来世代に及ぶ。原発を維持するなら、課題の先送りは許されない。
元稿:新潟日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月19日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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