路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説①・12.01】:週のはじめに考える 一体、何を選んだのか

2024-12-03 07:51:50 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【社説①・12.01】:週のはじめに考える 一体、何を選んだのか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.01】:週のはじめに考える 一体、何を選んだのか 

 「バタフライ効果」という言葉があります。米国の気象学者ローレンツの『予測可能性-ブラジルで蝶(ちょう)が羽ばたくとテキサスで竜巻が起こるか?』という論考に由来し、<初期の微(かす)かな差異が時間とともに予測不能な巨大な変化に至る>みたいなことのようです。
 
 似たことなら、気象でなく社会でも、偶然生じた差異でなく「選択」であっても言えそうです。ある選択が一つの結果を導き、その影響で何かが起きて、さらにその出来事が予想外の事態をもたらし…。気づいていないだけで、私たちの人生でも一つの選択が、いわば「風が吹けば桶(おけ)屋が儲(もう)かる」式に連鎖して何かが起きたり、起きなかったりしているのでしょう。

◆あの大統領がいる世界

 今、「選択」と言うと選挙を連想する人が多いでしょうか。まだここひと月ほどの間に、日本では衆院総選挙、米国でも大統領選がありましたから。総選挙では自民・公明の与党が過半数割れに追い込まれましたが、実は、このところ先進国の選挙では軒並み「与党」が厳しい審判を受けていて結局、米大統領選もそうなりました。
 
 無論、自民党の「裏金」のように各国与党ごとに個別の事情はあるのでしょうが、何か共通する問題があったのでしょうか。
 
 まず経済が思い浮かびますが、日、米とも「株価」は高く「失業率」は高くないので、あるとすれば「物価」かもしれません。ほぼ国の別なく苛烈な物価高は庶民を苦しめています。当然、トランプ氏の得票のうち一定数も、物価対策に失敗した民主党政権への不満票だったのだろうと推測します。
 
 トランプ氏は既に表明した中国など他国からの輸入品に高関税を課す方針なので、逆に物価を押し上げそうですが、一方で選挙中も「ドリル、ベイビー、ドリル(掘りまくれ)!」と繰り返していた人ですから、石油や天然ガスなどの増産により家計の燃料コストは下がるかもしれません。でも、地球はどうなるのでしょうか?
 
 地球温暖化を止めるため、脱炭素=脱化石燃料に国際社会が躍起になっているとき、世界2位の温暖化ガス排出国がそれを無視して正反対のことをするわけです。温暖化防止の国際ルール「パリ協定」からも再離脱の意向。世界一丸となるべき気候危機への対応に大きな穴があくのは必定です。

 ◆地球も、世界も燃える

 それだけではありません。ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領はじめ独裁的指導者に対して、トランプ氏が示している「共感」や「親近感」はかなり剣吞(けんのん)です。例えば、身勝手な主張で武力行使しても、米国は「容認」するとのメッセージになりかねない。あるいは、やはり、年々、独裁色を強める中国の習近平国家主席も、台湾侵攻のハードルが下がったと感じるかもしれません。
 
 「法の支配」や人権、反差別、報道の自由など民主主義の価値観を軽視する姿勢とも相まって、国内のみならず、各地の「トランプ風」指導者の振る舞いに影響を与える恐れもあります。さて、世界はどうなるのでしょう?
 
 20XX年-。台風やハリケーンは一層凶暴化し、異常な高温、異常な豪雨や少雨が常態化して災害は多発。作物は枯れ、人類は飢餓の危機に瀕(ひん)する。一方、多くの民主主義陣営の指導者が権威主義化し、武力による現状変更に遠慮がなくなって戦火は広がり、市民の自由と民主的権利の制限、司法への介入に躊躇(ちゅうちょ)がなくなって…。
 
 「心配性のプロ」とは記者の別名であって、幸い、地球や世界がそうなると決まったわけではありません。でも、こうは言える気がします。現実を、この「暗黒シナリオ」通りにしたいとしたら、その可能性を高める最も有効な方法の一つは、多分、トランプ氏を世界一の超大国のリーダーに選ぶことだ、と。
 
 そして、もし、本当に世界がそうなってしまったら、例えば「物価高への怒り」から彼に投票した人はこう自省するのでしょうか。「私が入れたのはたった1票だ。確かにトランプは選んだが、こんな未来まで選んだつもりはない」

 ◆少し先なら想像できる

 一人一人がAとBのどちらを選ぶかという、いわば「初期の微かな差異」が巡り巡って世界に混沌(こんとん)をもたらしかねないと思えば、選択とは怖いものです。無論、蝶の羽ばたきを見て何千キロも離れた場所の竜巻を想像できる人などいません。でも、これを選ぶとどうなり、その先はこう、さらに先はああなるかも、程度なら…。そうした想像を助ける手掛かりは、メディアなどから案外、簡単に得られます。私たちは多分、選択の前には常に、こう自問すべきなのでしょう。「この選択で、自分は一体何を選ぶことになるのか」と-。
 
  元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月01日  08:24:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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