【社説・12.31】:2024年を振り返る 今こそ「命どぅ宝」を誓う
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.31】:2024年を振り返る 今こそ「命どぅ宝」を誓う
沖縄の最も大切な命題は「命どぅ宝」である。そのために軍事力によらない「人間の安全保障」を訴え続けてきた。この1年を振り返ると、その実現はさらに遠のいていると言わざるを得ない。今こそ「命どぅ宝」を誓いたい。
辺野古新基地建設で、沖縄の民意を踏みにじることにもはや躊躇(ちゅうちょ)のない日本政府は、今年も年末に動いた。軟弱地盤改良の着手だとして海底に砂をまいた。費用も工期も土砂の調達先も詳細を示さないまま、既成事実化に躍起だ。
米軍関係者による事件事故、爆音やパラシュート降下訓練など、今年も県民は危険にさらされた。米兵による16歳未満少女の誘拐性暴力事件は、起きてから半年も隠蔽(いんぺい)されていた。6月に発覚すると県民の怒りが広がり、県議会が全会一致で抗議決議をし、12月には女性団体主導で県民大会が開催された。
自衛隊基地の増強は今年も進んだ。日米共同演習も、民間インフラを使い、規模を拡大しながら実施された。「台湾有事」を想定した避難訓練も行われ、南西諸島を戦場化する準備が着々と進む。
6月の県議選では「オール沖縄」が敗北し、少数与党になった。そんな中、不適切な県政運営が明らかになった。ワシントン事務所の法人化に伴う手続きミスや、沖縄本島北部豪雨での災害救助法適用への対応遅れなどだ。緩みがあったとの批判は免れない。県として反省し、県議会では政争にはせずに緊張感のある議論をしてほしい。
国会に目を転じると、10月の総選挙で自公は過半数割れし、少数与党となった。野党優勢の国会運営の中、昨年から続く自民党派閥裏金事件は、年末に慌ただしく行われた政治倫理審査会でも全容解明に至っていない。政治とカネの問題で、政策活動費の全廃は実現したが、企業・団体献金問題は越年する。
1月の能登地震、さらに能登を含む各地で豪雨被害が相次いだ。それらの救援・復興にも政府対応の不十分さが指摘されている。「年収103万円の壁」、大軍拡の財源問題など、与野党の対立案件はいくつもある。国会の与野党の緊張状態は、沖縄県が知事と県議会による二元代表制の力を発揮して国政と渡り合う好機だ。日米地位協定改定や沖縄予算、防災、子どもの貧困対策、経済振興など、堂々と要求すべきだ。
ウクライナやガザをはじめ、中東各地やミャンマーなどで戦火はやまない。世界中で自国中心の傾向が強まっており、第2次世界大戦以前の世界に戻ってしまったかのようだ。国際協調による平和の確保は困難になるばかりだ。大量の核兵器の存在も人類への脅威だ。地球温暖化対策も遅れている。この1年、世界はさらに危険になっている。
人類全体の幸福のために「命どぅ宝」「人間の安全保障」を沖縄から訴え続けなければならない。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月31日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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