【社説・12.01】:教員の待遇/まず多忙に見合う改善を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.01】:教員の待遇/まず多忙に見合う改善を
教員のなり手不足が深刻だ。授業だけでなく、学校行事や保護者への対応など多忙を極める上に、それに見合う手当が支払われる仕組みになっていない。
そんな「ブラック職場」のイメージを払拭し、教員不足解消につなげようと、文部科学省は、残業代に当たる「教職調整額」を現在の月給4%相当から3倍超の13%に増やす案をまとめ、2025年度当初予算の概算要求に関連費用を計上した。
これに対し財務省が示した案は、授業以外の業務削減を進める条件で教職調整額を月給の4%から段階的に10%に増やし、順調に勤務時間が減れば実態に応じ残業代を支払う。勤務実態を明確にして、財源を削る狙いがある。
ただ教員の仕事が直ちに大きく減らせるとは考えにくい。教員志望者を増やすためにも、まず待遇改善は欠かせない。
教員給与は都道府県なども負担している。地方財政にも関わる問題だけに、必要な財源の確保に国は力を尽くすべきだ。
教職調整額は、1972年施行の教員給与特別措置法(給特法)に基づく。公立校教員に残業代を支払わない代わりに、月額給与に4%相当を上乗せする。8時間分に相当するが、当時の残業時間が積算の根拠であり、現状にはそぐわない。
文科省の2022年度調査では、月45時間の残業時間上限を超える教員は小学校で64・5%、中学校で77・0%に上る。精神疾患による休職も6千人を超え過去最多となった。取り巻く環境の厳しさがうかがえる。
業務負担軽減のため、文科省は小学校の教科担任を2160人拡充し、中学校には不登校やいじめに対応する教員1380人を配置する案も示した。実現すれば、問題を抱える子どもを含め一人一人と向き合う余裕も生まれるだろう。
一方で財務省が指摘するように実効性のある業務削減策も求められる。部活動の民間移管や保護者への対応の効率化をさらに進めることが重要だ。働き方改革を促し仕事と生活のバランスを保つ仕組みも必要になる。
子どもの知性と豊かな心を育むことができる人材を確保するためにも、国は投資を惜しんではならない。
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