【社説②・12.03】:代表質問始まる 合意探る国会に程遠い
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.03】:代表質問始まる 合意探る国会に程遠い
石破茂首相の所信表明演説に対する各党代表質問が衆院で始まった。少数与党への転落後、初めての論戦だが、初日の質疑を聞く限り、与野党が幅広い合意を探る新しい国会の姿には程遠い。
首相には野党に歩み寄る謙虚さを、野党には政権批判にとどまらない積極的な提案を求めたい。
立憲民主党の野田佳彦代表は自民党派閥の裏金事件を受けた政治改革を巡り、首相が演説で企業・団体献金の禁止に言及しなかったことを「なぜ議論の俎上(そじょう)に載せようとしないのか」とただした。
これに対し、首相は「自民党としては不適切だと考えていない」と譲らず、使途公開が不要な政策活動費の廃止についても野田氏の全廃要求を拒否。外交上の秘密やプライバシーに関わる一部の使途を非公開とする自民党案を維持する考えを示した。
首相は、野党の理解を得なければ、法案も予算案も成立させられない厳しい国会の状況を理解しているのか。自民党の主張はあるにせよ、与野党合意に努めることが少数与党の首相の責任だと自覚すべきである。
野田氏は一般会計の歳出が約14兆円と巨額になった2024年度補正予算案に関し「そもそも経済対策になじまないものも多数含まれ、スリム化を図る必要がある」と減額を求めたが、首相は「必要な施策を積み上げた」と取り合わなかった。野党第1党の要求を拒否して、どう成立を図るのか。
選択的夫婦別姓の導入を巡っても、立民の石川香織氏が実現に向けて決断を促したが、首相は賛否を明言しなかった。
賛意を示していた9月の自民党総裁選からは明らかな後退だ。衆院で賛成派が多数を占めた現実を直視すべきである。
野党が政府・与党の問題点を追及し、与野党合意に向けて譲歩を引き出すことは当然だ。野田氏が唱える国会での「熟議と公開」による政策決定も支持したい。
少数与党の国会では、野党も政策決定の責任を与党と共有していることを忘れてはならない。
代表質問はきょう3日から参院でも始まる。政府と各党が原則的立場を主張する場合が多いとはいえ、問題点は明確になる。5日からは一問一答形式の予算委員会が始まる。率直かつ活発な論戦が、国民に分かりやすい形で行われることを期待したい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月03日 07:53:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます