《社説②・12.03》:プラごみの削減 条約の実現へ粘り強く
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.03》:プラごみの削減 条約の実現へ粘り強く
プラスチックごみを減らす国際条約づくりの政府間交渉が物別れとなった。今年中に条約案をまとめることになっていた。来年以降に持ち越される。
増え続けるプラごみを抑えるには、元をたどって大量生産の段階から規制する必要がある。そこが最大のネックになっている。
欧州連合(EU)や海洋汚染にさらされる島国などは生産量の削減目標をつくるべきだと主張。一方、原料の石油を産出する中東諸国などはプラごみを減らす対策にとどめるべきだとして、溝が埋まらなかった。
生態系はもちろん、人体への悪影響も指摘されるプラごみの削減は、国際協調で解決を目指さねばならない差し迫った課題だ。世界有数の排出国である日本の責任は極めて重い。速やかな合意に向けて、粘り強く一致点を見いだしていく必要がある。
条約づくりは2022年に国連環境総会で決まった。主に海洋に流出するプラごみを、クジラや海鳥などが餌と間違えてのみ込んだり、絡まって死んだりする被害が注目されていた。
プラごみはさらに増える勢いにある。国連は毎年1900万~2300万トンが湖、河川、海洋に流出していると推計。経済協力開発機構(OECD)は、対策を強化しないと60年に流出量は4400万トンに達するとみている。
生産が拡大すれば、それだけ温室効果ガスの排出も増えると予測されている。地球温暖化防止の意味でも、生産段階での規制は避けて通れない。
人体への影響も見過ごせなくなってきた。捨てられたプラは紫外線や微生物の分解で細かくなる。直径5ミリ以下のマイクロプラスチックより小さい直径1マイクロメートル(千分の1ミリ)以下の超微粒子の存在が明らかになっている。
国内外で人の血液から検出され、腎臓、肝臓などからはプラに添加された化学物質も見つかった。生殖機能や子どもの脳の発達への悪影響が懸念されている。こうした有害な化学物質の規制も積み残された論点だ。
日本は、生産規制は一律でなく各国の実情に応じて行いながら、リサイクルや廃棄管理の強化を進める―との立場を取っている。まず条約を実現し、その後の締約国会議で内容を強化、充実していく選択肢もあるだろう。
プラ製品を日々大量に消費し、捨てている私たちは当事者だ。暮らしの中にある課題として関心を持ち続けたい。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月03日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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