《社説②・12.29》:スマトラ地震20年 教訓を世界で共有したい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.29》:スマトラ地震20年 教訓を世界で共有したい
インド洋の沿岸諸国に津波による甚大な被害をもたらし、計約23万人もの死者・行方不明者を出したスマトラ沖地震から、ちょうど20年が過ぎた。
最大の被災地となったインドネシア・スマトラ島アチェ州のバンダアチェで追悼式が開かれ、出席者が当時を振り返っている。
人口の約3分の1に相当する7万8千人以上が死亡・行方不明となったバンダアチェでさえ、津波の教訓をどう継承していくかが課題になっているという。
現地ではいまも、津波の危険性が高い海岸部に住宅が広がる。地震の後で地価が下がり、津波を知らない人が数多く移り住んだ。他の被災地も同じような課題を抱えているのではないか。
「地震大国」の日本は技術や知見の国際共有を進めてきた。2011年には、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が主導し日米が支援したインド洋の津波警報システムの運用が始まっている。
減災を進める上で重要なのは津波が来る前に安全な高い場所へ逃げる一人一人の意識だ。当時は津波の知識のない住民が多かったという。訓練も欠かせない。
現地と東日本大震災の被災地の間では、防災教育を通じた交流活動が続く。こうした動きをより太くすることなどを通じ、教訓を世界で広く共有したい。
スマトラ沖地震は2004年12月26日、アチェ州沖を震源に発生した。地震の規模を示すマグニチュード(M)が9・1に達する超巨大地震だった。
発生した津波は同州で約35メートル。驚くべき高さだ。スリランカ、インド、タイなどインド洋沿岸の各地に時間をかけて押し寄せ、約6千キロ離れたアフリカ東岸でも漁師らが犠牲になった。
日本人も、観光地のタイのプーケットなどで津波に襲われ40人が死亡・行方不明になった。
地震のメカニズムは、東日本大震災と同じプレート境界型と呼ばれるタイプだった。地球表面を覆う巨大なプレートがゆっくりと動き、ぶつかり合うことで地下深くにひずみが蓄積される。それが解放された際に地震が起きる。
日本列島はプレートの境界付近にあり、歴史的に巨大地震が繰り返されてきた。今後も起きることが分かっている。
今年夏には境界の一部である南海トラフで巨大地震の確率が高まり、臨時情報が発表された。スマトラ島のように地震の集中する場所に住んでいることを意識し、備えを確認しておきたい。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月29日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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