中身よりも規模優先なのだろう。政府が閣議決定した総合経済対策は、これを裏付ける令和6年度補正予算案が13・9兆円程度、民間支出分などを含む事業規模が39兆円程度となり、ともに昨年の経済対策を上回った。
石破茂首相は衆院選で昨年を上回る対策にすると訴えた。その際に政策の中身を軽視していたことは、旧態依然とした施策を漫然と並べた仕上がりをみれば明らかである。
総合経済対策の合意書を交換する(左から)国民民主党の浜口誠政調会長、自民党の小野寺五典政調会長、公明党の岡本三成政調会長(春名中撮影)
深刻な物価高などに適切に対処すべきは当然だ。必要なら大胆な財政措置も求められる。だが、経済の需要不足が縮小する中でこれほど大規模にする必要があったのかは疑問が残る。
政策効果などを十分に吟味すべきなのに、その形跡もほとんど見受けられない。新型コロナウイルス禍で膨張した歳出構造を元に戻す政府方針も石破首相には意味をなさないのか。少数与党の苦境を挽回しようと、ばらまきで国民の歓心を買おうとしているのなら見当違いだ。
物価高対策の一つは住民税が課税されない低所得世帯への3万円の給付金だ。岸田文雄前政権でも実施した。低所得世帯に絞るのはいいが、住民税非課税の高齢者世帯には多くの金融資産を持つ世帯もある。真に支援が必要な世帯を支えているかどうかを見極めるべきだろう。
電気・ガス料金の補助を再開し、ガソリンの補助金は来年1月以降も継続する。これらは再開や延長を繰り返し、既に11兆円規模を投じてきた。脱炭素や省エネに反するとの批判もある施策をだらだらと続けるだけではこの先の展望も開けない。
石破首相が重視する地方創生を巡っては「新しい地方経済・生活環境創生交付金」の創設などを盛り込んだ。だが、交付金を増やせば地方が活性化するという単純な話ではあるまい。地方創生は長年の懸案だ。まずは従来施策の問題点を厳しく検証し、それを打開する効果的な政策を講じていくべきだ。
この点は他の施策も同様である。政策効果の検証や見極めが不十分なままでは、いくら財政・税制措置を講じても政府の目指す「成長型経済」の実現は望めまい。自民、公明両党と国民民主党の合意で経済対策に盛り込み、今後3党で協議する「103万円の壁」の見直しやガソリン減税についても、認識しておくべきことである。
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