フロアーに倒れたまま、「背中が痛い」と少しの動きもさせない父を、私は全く動かせず、ついに119番した。
「台風なんですけれど、お願いできるのでしょうか」とおそるおそる伺うと、父の状態をきいてくださった。「今から行くので外へ出て手を振って合図してほしい、S病院にはそちらで連絡していて下さい」ということだったので、すぐにS病院に電話、むこうの医師の承諾も得た。
こうして父は救急隊員が家にきても、必死に抵抗、4人がかりで救急車に運んだ。
「認知症ですので申し訳ございません」と私は謝り続けた。
そしてS病院に着くと、守衛さんや看護師さんが迎えてくださり、治療室に寝かせる。
医師がこられ、すぐにレントゲンをとり、「何もありませんよ、安心してください、今から帰ったら?台風がひどくなりますよ」・・・でも父をひとりでこの台風の中、タクシーに乗せることはできない。
荷物もあり、また酸素吸入のボンベも持っているのだ。
ケアマネージャーに電話し、いつもお世話になっているヘルパーさんに迎えに来て頂くことになった。
「お休みの日なのに申し訳ありません」・・・でも、こんな日に嫌な顔ひとつせず笑顔で来て下さった。
ありがたいことである。
外は雨、パジャマ姿の父をタクシーに乗せ、帰宅し、手洗い・うがいをさせ、ベッドに寝かした。
台風だからタクシーをお使い下さい、とお願いしても遠慮なさって大雨の中をお帰りになったヘルパーさん。
父は疲れたのかスヤスヤ寝てしまった。
私も疲労困憊で、そのままフロアーに寝てしまった。
父は医師に「何もありませんよ」と言われてから、急に元気になり、さっきまで歩いていた。
今回のことは「台風が予告されている時は、医療機関に行きにくい、また帰りにくい。父をしっかり見護るように」という教訓になった。もちろん徹夜しなくてはならない。
現実は厳しいのだ。介護は大変である。でも無事だったことは本当にうれしい!