ヨーロッパの夏の音楽祭といえば、バイロイトやザルツブルグは有名だろうが、イギリスにもグラインドボーン音楽祭という音楽祭がある。1934年から始まり、夏の間、貴族が自分の邸宅に建てたオペラハウスで、オペラを楽しむというユニークな音楽祭だ。日本では考えられない。西洋の貴族はやることが違う。
せっかく、ロンドンに居るのだから、一度は行ってみたいと思い、今夏の自分イベントの目玉の一つとして、チケット販売開始の2月早々にチケット予約し、この間の13日日曜日に出かけた。劇場は、ロンドン・ヴィクトリア駅から列車で1時間ちょっと乗ったLewisというところから更にタクシーで約10分乗ったところの、大いなるイングランドの田舎にある。
事前の案内では、列車で来る人は12:36の列車に乗れというような案内が来たが、16:10に始まる公演に2時に着いてもしょうがないと思い、その1本後の13:46の列車に乗った。その案内では、駅前にシャトルバスが来るようなことが書いてあったが、駅に着いてみるとそれは12:36発の列車に合わせて1回きりのサービスらしい。手馴れた人は、タクシーを事前に予約してあるらしく、次々と待っているタクシーに乗り込むが、私は結局置いてきぼりにされた形。何とか同じような境遇のファミリーに頼んで、会場まで往復してきたタクシーに同乗させてもらった。タクシーに乗ること約10分、サセックス州の大平原を見渡す丘を通って、北海道の牧場のようなところに、いきなり邸宅とオペラハウスが現れる。
早速到着して、チケットを入手し、会場付近を散策。この絵にかいたような世界は何なんだろう。タキシードに身を固めた紳士たちと華やかなドレスに身を包む淑女、おばさま方。確かにBlackTieが望ましいというようなことが書いてあったが、ここまで皆が着飾ってくるというのには驚いた。タキシードが無い自分は、スラックスにブレザーといういでたちで、まあ、みっともないというほどでは無かったが、男性はほぼ100%はタキシードにボウタイだったし、小学生の子供ぐらいの男の子も黒スーツにボウタイだったので、ちょっと気後れした。この日が、「マクベス」の初日だったからなのか、いつもこうなのかは分からないが、私が見たボウタイ以外の男性は、私を含めて4名だけだった。
初夏のイングランドの陽光が緑の草原に反射し、所々に植えてあるバラや白、黄色、薄紫の花花が咲き乱れている。そして、透き通るような青空。向かいの丘では羊が草を食らうのどかな風景が広がっている。これらの色彩に加えて、ピクニックでの談笑の声、シャンペンを開ける音、そよ風と木々が奏でる風音、そして鳥たちの声が交じり、う〜ん、自分はいったい何処にいるのか分からなくなる。印象派の画家たちの絵に、陽光の中のピクニックの絵を良く見かけるが、そうした絵の中にスリップしたような気になる。一度で良いが、一度は見てみるのは話しのタネになる世界だと思う。
(開演前にくつろぐ人たち)
(芝が広い)
(花壇に植えられた花々が美しい)
(中央の丸いレンガ色の建物が劇場です)
イギリスの夏の飲み物といったらPims。これとプログラムを買って開演までの1時間をゆっくり楽しんだ。
開演15分ぐらい前にホールに入る。劇場はこじんまりしていて感じが良い。木がふんだんに使われているので、オペラハウスにありがちな華美な感じというよりも、とても落ち着いた内装になっている。きっと、音響もすばらしいだろう。この日は、三階席の一番奥の席だったが、オペラグラスなしで楽しめる、とっても素敵な劇場である。
第1幕、2幕が終わり、休憩時間となる。この音楽祭の売り物の一つは、80分もある幕間の休憩時間。再び、外に出てピクニックするグループや併設のレストランで食事をする人たち。結局、ここではオペラが添え物でメインはピクニックや社交ということが良くわかる。しかしオペラを添え物にピクニックを楽しむというのは何という贅沢。日本もワークライフバランスが進んできたとはいえ、この贅沢さ加減はとてもかなわない。見習うべきとはこれっぽっちも思わないが、世界が違うということだけは改めて実感。
(今日はこの草原にはいませんでしたが、いつもは羊もいるらしい)
(庭には池もあります)
(裏の丘には羊たちがいます)
皆が、敷物の上やベンチに腰かけで、シャンペン、ワインとサンドイッチ、サラダなどを食べているのに、私は、日本人として、近所の日本食惣菜屋で買った枝豆といなり寿司、のり巻き寿司、そしてビールで対抗した。こんなところで、一人で対抗したつもりになってもどうしようもないのだが、一人で「どうだ参ったか!」と自己満足に浸る(枝豆とビールの写真を撮り忘れたのが残念)。それにしても、教訓はこのフェステバルは決して一人では行かぬこと。ここはオペラ(だけを)を楽しむところでは無いからだ。
終演後は、電車で来た人はシャトルバスで駅まで運んでくれる(£5)。バスの窓から見える、夕焼けに照らされる雲とサセックスの平原がオペラの興奮を鎮めてくれた。9時22分発のロンドンヴィクトリア行きに乗って、夢の世界から現実のロンドンへ戻ってきた。
2010年6月13日
せっかく、ロンドンに居るのだから、一度は行ってみたいと思い、今夏の自分イベントの目玉の一つとして、チケット販売開始の2月早々にチケット予約し、この間の13日日曜日に出かけた。劇場は、ロンドン・ヴィクトリア駅から列車で1時間ちょっと乗ったLewisというところから更にタクシーで約10分乗ったところの、大いなるイングランドの田舎にある。
事前の案内では、列車で来る人は12:36の列車に乗れというような案内が来たが、16:10に始まる公演に2時に着いてもしょうがないと思い、その1本後の13:46の列車に乗った。その案内では、駅前にシャトルバスが来るようなことが書いてあったが、駅に着いてみるとそれは12:36発の列車に合わせて1回きりのサービスらしい。手馴れた人は、タクシーを事前に予約してあるらしく、次々と待っているタクシーに乗り込むが、私は結局置いてきぼりにされた形。何とか同じような境遇のファミリーに頼んで、会場まで往復してきたタクシーに同乗させてもらった。タクシーに乗ること約10分、サセックス州の大平原を見渡す丘を通って、北海道の牧場のようなところに、いきなり邸宅とオペラハウスが現れる。
早速到着して、チケットを入手し、会場付近を散策。この絵にかいたような世界は何なんだろう。タキシードに身を固めた紳士たちと華やかなドレスに身を包む淑女、おばさま方。確かにBlackTieが望ましいというようなことが書いてあったが、ここまで皆が着飾ってくるというのには驚いた。タキシードが無い自分は、スラックスにブレザーといういでたちで、まあ、みっともないというほどでは無かったが、男性はほぼ100%はタキシードにボウタイだったし、小学生の子供ぐらいの男の子も黒スーツにボウタイだったので、ちょっと気後れした。この日が、「マクベス」の初日だったからなのか、いつもこうなのかは分からないが、私が見たボウタイ以外の男性は、私を含めて4名だけだった。
初夏のイングランドの陽光が緑の草原に反射し、所々に植えてあるバラや白、黄色、薄紫の花花が咲き乱れている。そして、透き通るような青空。向かいの丘では羊が草を食らうのどかな風景が広がっている。これらの色彩に加えて、ピクニックでの談笑の声、シャンペンを開ける音、そよ風と木々が奏でる風音、そして鳥たちの声が交じり、う〜ん、自分はいったい何処にいるのか分からなくなる。印象派の画家たちの絵に、陽光の中のピクニックの絵を良く見かけるが、そうした絵の中にスリップしたような気になる。一度で良いが、一度は見てみるのは話しのタネになる世界だと思う。
(開演前にくつろぐ人たち)
(芝が広い)
(花壇に植えられた花々が美しい)
(中央の丸いレンガ色の建物が劇場です)
イギリスの夏の飲み物といったらPims。これとプログラムを買って開演までの1時間をゆっくり楽しんだ。
開演15分ぐらい前にホールに入る。劇場はこじんまりしていて感じが良い。木がふんだんに使われているので、オペラハウスにありがちな華美な感じというよりも、とても落ち着いた内装になっている。きっと、音響もすばらしいだろう。この日は、三階席の一番奥の席だったが、オペラグラスなしで楽しめる、とっても素敵な劇場である。
第1幕、2幕が終わり、休憩時間となる。この音楽祭の売り物の一つは、80分もある幕間の休憩時間。再び、外に出てピクニックするグループや併設のレストランで食事をする人たち。結局、ここではオペラが添え物でメインはピクニックや社交ということが良くわかる。しかしオペラを添え物にピクニックを楽しむというのは何という贅沢。日本もワークライフバランスが進んできたとはいえ、この贅沢さ加減はとてもかなわない。見習うべきとはこれっぽっちも思わないが、世界が違うということだけは改めて実感。
(今日はこの草原にはいませんでしたが、いつもは羊もいるらしい)
(庭には池もあります)
(裏の丘には羊たちがいます)
皆が、敷物の上やベンチに腰かけで、シャンペン、ワインとサンドイッチ、サラダなどを食べているのに、私は、日本人として、近所の日本食惣菜屋で買った枝豆といなり寿司、のり巻き寿司、そしてビールで対抗した。こんなところで、一人で対抗したつもりになってもどうしようもないのだが、一人で「どうだ参ったか!」と自己満足に浸る(枝豆とビールの写真を撮り忘れたのが残念)。それにしても、教訓はこのフェステバルは決して一人では行かぬこと。ここはオペラ(だけを)を楽しむところでは無いからだ。
終演後は、電車で来た人はシャトルバスで駅まで運んでくれる(£5)。バスの窓から見える、夕焼けに照らされる雲とサセックスの平原がオペラの興奮を鎮めてくれた。9時22分発のロンドンヴィクトリア行きに乗って、夢の世界から現実のロンドンへ戻ってきた。
2010年6月13日