その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

塩野七生 『ローマ人の物語〈20〉悪名高き皇帝たち(4) 』 (新潮文庫)

2010-12-28 20:32:25 | 
 「悪名高き皇帝たち」の第4巻は最終巻として、「ローマ帝国史上最も悪名高き皇帝」ネロの治世が描かれます。

 ネロの悪政は本巻の通りなのですが、私には、本巻の面白さは、アルメニア・パルティア問題の解決に起用された司令官コスプロの軍事・外交手腕にありました。

 コスプロは、パルティア王ヴォロゲセスの弟ティリダテスをアルメニア王に就任させることで、ローマの東方防衛網のアキレス腱であるアルメニア王国の安定を図り、ペルシャ文明圏の盟主パルティアとの関係を安定化させるというウルトラCの解決策を構想します。これまでのローマがアルメニアを同盟国として、ローマの望む君主を王位に就けて強国パルティアの包囲網を作ってきたこれまでの政策と根本的に発想が異なります。

 この構想は彼の卓越した軍事力と外交力、そしてローマ国内の政治力により実を結びます。筆者は、コスプロを評し、「戦争は、武器を使ってやる外交であり、外交は、武器を使わないでやる戦争である。コスプロは、このことを知っていた武人であった」(p144)と評し、彼の提言が実現するのがネロ、元老院の理解が得られず12年が費やされたことを顧みて、「有能なリーダーとは、人間と労苦と時間の節約に長じている人のことではないかと思いはじめている。」(p145)と言います。

 歴代皇帝だけでなく、幾人もの魅力的な人物が登場し、描かれるのが、『ローマ人の物語』シリーズの面白さの一つです。
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