その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

Prom 29: ドゥダメル/シモン・ボリバル交響楽団 マーラー交響曲第2番「復活」

2011-08-05 23:48:10 | コンサート (in 欧州)
 私の今シーズンプロムスの目玉公演であるグスターボ・ドゥダメル指揮シモン・ボリバル交響楽団によるマーラー交響曲第2番「復活」を聴きに行きました。2009年にロンドン公演の際は確か3公演ほどあったのですが、凄い前評判で、全て満員売り切れで、何度となくリターンチケットを狙ったのですが、全く縁がありませんでした。ですので、今日は、私にとってはそのリターンマッチでもあります。チケットも私の本プロムス最高値の55ポンド席です!!!

 ロイヤルアルバートホールの前には今まで見たことのないほど長い当日券を求める列が出来ていて、会場内も熱気プンプンです。

 

 このオーケストラ数年前までシモンボリバル・ユース・オーケストラと言っていて「ユース」が入っていたのですが、最近「ユース」がとれたようです。ただ、ステージに現れた演奏者たちは明らかにユースの人達で、10代後半から20代前半とお見受けする人が殆どでした。(ちなみに、シモンボリバルというのは、「19世紀初頭にスペインの圧政から南米諸国を解放した革命・思想家の名前で、ベネズエラ出身の英雄としてとしての彼の業績を称えたもの」(Wikiより引用)だそうです。)随分、演奏者の数が多いなあと思って、プログラムを数えたら天井近くのギャラリーから演奏する人達も含めて何と総勢184名のオケでした。

 そして、そのマーラーの交響曲第2番は、私にとっては、いろんな驚きや感動や多少の期待外れ感も入り混じった演奏でした。いきなり、第一楽章冒頭の低弦部分は、重いと言うのか、厚いと言うのか上手く表現できないのですが、今まで生で聴いた冒頭部とは随分違った音で驚きました。18名のチェロ、14名のダブルベースによる合奏は、低音好きの私にはたまりません。そして、第1楽章の途中で展開される凄まじい爆発とその余韻は、夏の夜の花火大会の大玉の爆発と夜空に残るその余韻そのもので、一瞬、アルバートホールが花火会場になったかと思うほどでした。荒削りながらも、グイグイと演奏する若者特有のエネルギーがプンプンする演奏で、聴く者は自然と引きこまれます。ただ一方で、ペースの緩急はあるものの、全体にとってもスローテンポで、正直第2,3楽章は危うく眠りそうになってしまったのは、私的には残念。

 圧巻は間違いなく第5楽章。オーケストラ、独唱、合唱が見事にかみ合って、途中で涙が流れそうになるぐらい感動のしっぱなしでした。オケも良かったけど、私はイギリス・ナショナル・ユース合唱団の素晴らしいハーモニーが印象的でした。こちらも160名程度の大合唱団なのですが、とても繊細で洗練された合唱で、荒削りで気合いを前面に出してグイグイと演奏するオーケストラとは好対照。その組み合わせが絶妙なケミストリーをつくっていました。そして、独唱はスゥエーデンの美人ソプラノ、ミア・パーソンの声がとっても綺麗で、良く通っていました。メゾのアンナ・ラーションはちょっと声量がパワー不足だったかも。

 終演後は、ほぼ聴衆全員がスタンディングオベーションで、狂気と言っても良い程の歓声と大拍手。多分、在英2年半の中で最も熱狂的な拍手でした。私もカメラを片手に、かなり激しく拍手をしました。演奏としてもっと上手な楽団は沢山あるでしょうが、この楽団ほど、演奏を通じて観衆に何かを感じさせる力、人の気持ちを揺りうごす力を持っている楽団は世界中でもそうは無いと思います。

(正面の黒いドレスがミア・パーソン)
 

(スタンディングオベーションの観衆)


(常に楽団員を立てて、自分は控えめなドゥダメル)
 

(ステージとコーラス全景)




Friday 5 August
7.30pm – c. 9.10pm
Royal Albert Hall
Choral music and singing events

Mahler
Symphony No. 2 in C minor 'Resurrection' (85 mins)
Miah Persson soprano
Anna Larsson mezzo-soprano
National Youth Choir of Great Britain
Simón Bolívar Symphony Orchestra
Gustavo Dudamel conductor
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロンドン イタリアン・レストラン Da Mario@Covent Garden

2011-08-04 22:38:30 | レストラン・パブ (in 欧州)
 最近、当たりのレストランの確率が高まっていて個人的に嬉しい限りなのですが、今回も当たりレストランです。(写真はレストランのHPから)

 コベントガーデンの北辺にあるイタリアンレストランDa Mario。レストランと言っても、イタリアンですからとっても気楽な雰囲気で、リラックスして食事が出来ます。ちょっと写真は綺麗過ぎに映っています。

 同僚多数と出かけて、私はマグロのカルパッチョとシーフードのスパゲティを頂きました。このスパゲティが麺の茹で方、ソースの味付けともに絶妙。量がこちらにしては中程度で、思わずおかわりしたくなるほどでした。

 あと、このお店を楽しくしているのは、いかにもイタリアのイタリア人のサービスのおじさん。こちらが一言言うと、二言ぐらいヒネリを効かせた陽気で、楽しい反応をしてくれます。やっぱり、イタリアレストランはこうでなっきゃ。

※お店のHPはこちら→
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エコノミスト誌が引き合いに出す日本

2011-08-02 21:40:21 | ロンドン日記 (日常)


 日本では紹介されているかどうか知らないが、今週の「エコノミスト」誌の表紙と巻頭記事を見て、日本もここまで落ちたかと、正直、衝撃は隠せなかった。

 タイトルの”Turning Japanese”とはどう訳すのが良いのか分からないが、表紙の絵から想定するに「振返った日本人」とでも訳すのだろうか?日本の着物を着た独メルケル首相と米オバマ大統領を指しているらしい。

 内容を大胆に要約すると、ユーロ危機に直面するEUと巨大な財政赤字を抱えた米国(日本の赤字の方が更に悪いが)を引っ張るこの2人が、真に必要な決断を行わず、中途半端な政策で、問題を先送りにしているだけだというもの。本記事の結びの一文は、「日本の政治家たちにも改革の機会は何回もあったのだが、改革回避が長びけば長引くほど、改革は難しくなった。西洋の同僚たちはその事例から学ぶべきである。」要はこのままでは第2の日本になりますよということだ。

 ここで参照される日本はすべて悪い事例としてである。
 ・20年前のバブル崩壊以来、改革を常に先送りにするリーダー
 ・政治的麻痺状態
 ・世界最悪の財政赤字
 ・成長の呼び水となる労働市場と製品市場における構造改革の先送り
 ・世代間の不均等
 ・....

 確かに書いてあることにうそは無い。しかし、こんなところで比較対象になってしまう日本はいったい何なのだろうか。こんなタイトルと記事を掲載する「エコノミスト」にも腹が立つが、書かれたことに真っ向反対議論を展開できない自分も悲しい。

 こちらに来て2年半だが、その間日本ネタで話題になったことと言えば、トヨタ車のリコール問題、めまぐるしく変わる首相(私が渡英して3人目。もうすぐ4人目か?)、イギリス、アメリカよりも悪い財政赤字、原発事故などなどで、正直碌なものがない。残念ながら、この2年半だけでも、日本のブランド力が大きく下がっていることが実感できる。中国の台頭が目覚ましだけに、余計に斜陽感が漂う。

 政治家のせいにするのは簡単だが、自戒もこめて、日本人は相当がんばらんといけない。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

PROM 19 オネゲル/ブリッジ/ベルグ/カスティリョーニ/ドビッシー (BBCSO/ オリヴァー・ナッセン)

2011-08-01 23:30:08 | コンサート (in 欧州)
 金曜日と言うことで、仕事が終えてアルバートホールに駆け付けた。チケットは持って無いが、当日券でストール席を購入。

 開演5分前ギリギリに入場したのだが、入ってびっくり。今までお客が最も少なく、寂しいプロモ。上部の席はがらがら。ストール席も7割ぐらいしか埋まってなくて、私の両隣もそれぞれ4人分ぐらい空いている。アルバートホールは大きい分、空席が目立つとかえって寂しさが増してしまう。指揮者とオーケストラが可哀想なぐらい華やかさに欠ける演奏会だった。

 でもプログラムは20世紀音楽が中心の意欲的なプログラムでとても楽しめた。

 1曲目、2曲目はフランスの作曲家アルテュール・オネゲルの小品。1曲目の表題Pacific231は、機関車の車軸配置を表したものだが、機関車がグイグイと車両を引っ張る様子が目に浮かぶような推進力を感じる音楽だった。3曲目はイギリスの作曲家フランク・ブリッジの小品“there is a willow grows aslant a brook”。「ハムレット」の第4幕で王妃がオーフィーリアの死を描写する冒頭の台詞とのこと。張り詰めた緊張感のある曲だった。 4曲目はベルグの『ウイーン』。独唱のClaire Booth は、声はきれいだったが、声量的にはアルバートホールではちょっとパンチ不足のような気も。

 休憩を挟んで最初の曲はイタリアの作曲家カスティリョーニでプロムス初演。11の音楽詩というサブタイトル通り、詩的な音楽で聞きながら絵が浮かんでくるよ。そして、最後はこの日の曲の中で唯一聞いたことがあるドビッシーの海。BBCSOらしい整ったアンサンブルで良かった。

 今日は当日券を買う時に、「ストールの舞台に近いところにしてくれ」と頼んだ。そしたら、たしかにストール席なのだが、チェロの真後ろ、ダブルベースの真横と言う席で、指揮者の斜め前で自分も楽団員になった気分で新鮮だった。コンサート中も音に囲まれるような感覚になり楽しめた。

 最後まで会場の寂しさは無くならなかったが、音楽はとても楽しめたので、とっても満足して会場を後にした。


Friday 29 July
7.30pm – c. 9.45pm
Royal Albert Hall

Honegger
Pacific 231 (7 mins)
Honegger
Pastorale d'été (8 mins)
Bridge
There is a Willow Grows Aslant a Brook (11 mins)
Berg
Der Wein (15 mins)
INTERVAL
Castiglioni
Inverno in-ver (22 mins)
Debussy
La mer (24 mins)

Claire Booth soprano
BBC Symphony Orchestra
Oliver Knussen conductor
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする