その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

平野敦士カール 『パーソナル・プラットフォーム戦略』  (ディスカヴァー携書)

2012-05-08 22:06:06 | 
 最近は、あまり自己啓発書の類の本は読まなくなってきているのだが、タイトルに魅かれて成田空港で買った。

 パーソナル・プラットフォーム戦略とは、個人が「場」をつくることによる相互扶助により、一人ではできないことをできるようにする。そして、「グローバルな市場を相手に、自らのノウハウを武器にして、さまざまな企業や人とアライアンス(提携)し、自分をいろんな人が集まる場=「プラットフォーム」にすることによって、どんな時代になっても何があっても稼いで行ける人」(p8)である「ひとり社長」を目指す戦略である。本書ではそのための、いろんなノウハウが公開されている。

 いろんな気付きがある本だが、特に3点ほど。

■(パーソナルプラットホーム戦略について)まずは自分が動き出し、「わたしはこれをしたいんだ」とか、「わたしにはこれができます」と、積極的にアピールしていくことです(p30)。「「熱い想い」こそが、自分をプラットフォーム化する仕事術の真髄です」(p114)

 →これは、与えられた仕事に対してより高いパフォーマンスを目指すいわゆる日本人サラリーマンとは反対の行動だ。なので、日系企業で飼いならされてきた中年サラリーマンはもちろん若い人も、意外と難しいのではないかと思う。「なんでもやります」と勢いよく言ってくれる若い人は多いが、この発想でのキャリア形成は、自分が気づいていない適性に気づくことがあるというメリットがある半面、パーソナルプラットフォーム化はできない。企業も社員の自律化を口では言いつつ、結構、会社としての人材育成にこだわりを捨てきれない。個人にとっても会社にとっても、この辺りのバランスは難しい。ここを突き抜けられるかどうかが、ひとり社長になれるかの最初のポイントなのだろう。

■(ひとり社長について)自分の価値を知るためには、「人から頼まれることや質問されることが多いことは何だろうか?」(p102)を考えてみる。それがすなわち、「他の人が欲しいものや知りたいこと」で価値がある。

 →これは、納得。確かにこういう視点で、自分と他者とのコミュニケーションを考えたことが無かった。自分というものの気づきにとてもいいノウハウだと思う。

■(プラットフォーム交渉術について)交渉とは、「「相手を言いくるめる」のではなく、「相手と仲よくなる」ようにすること」で、「一緒にやったら面白いかもしれないと思ってもらえること」。「いわゆるビジネス書に書いてあるような交渉術の固定観念を外していくことこそ重要」(p180‐181)

→これも見方としては新しいが、自分の廻りの経験を思い起こしてみると、「確かに」と思いあたるところが沢山ある。筆者も言っているように「敵対してくる人」「嫉妬を抱く人とのパワーゲーム」には、このノウハウは難しいかもしれない。それでも、仕事をしていくうえで、この基本スタンスは非常に大切だ。

 この他にもソーシャルメディァの発信について、「まず自分から、ターゲットとする人が欲しいと思う有益な情報をつねに発信していくこと」。情報収集において「重要なのは「何を知るか」ではなく、「その情報をもとに何を考えてどう自分で実行するのか」」、といった当たり前と言えば当たり前だが、普段から心がけたいノウハウが散りばめられている。

 簡単に読めるけど、活用範囲は広い一冊である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロンドンのリトル・ヴェニス ナローボート・ツアー

2012-05-08 21:19:26 | ロンドン日記(イベント、観光、スポーツ)
<この2週間、仕事の山場に加えてと飲み会まで集中し、ちょっとぐったり。日本は本当に飲み会が多いですね。なのでブログにアップするようなネタもありません。ただ、ちょっと、まだロンドン・ネタでアップできてなかったものがあるので、遅まきながらその当たりを少しご紹介します。(ここまで、2012年11月初掲載)>


 ロンドンのパディントン駅の裏(北)側に歩いて10分程のところにリトルベニスというちょっとした名所があります。ロンドンを通る運河の結節点のようなところで、イギリスならではのナローボートが沢山停泊しています。正直、ベニスの独特の建物と運河の組み合わさった雰囲気を想像すると、似ても似つかぬところがあり、ヴェネティア人からすれば「何故ここがリトルベニスなのか」と言って怒りだすかもしれないようなところなのですが、静かで落ち着いたところで、洒落たCafeなどもありますから、ちょっと散歩で足を延ばしたりするのには良いかもしれません。

 ここから、リージェント運河が東のカムデンロックに向かって伸びており、1時間弱、3‐4キロのナローボートの旅が経験できます。毎年、5月上旬に運河開きのようなイベントが開催され、私も今年初めて出かけました。生憎、雨日でしたが、ちょっとした観光気分を味わうことが出来ましたので、その時撮ったスナップをご紹介します。


(ロンドン中のナローボートが集まったのではと思うほど)


(ボートそれぞれに色んな装飾が施されていて、見ているだけでも楽しいです)


(雨にも関わらず、イベント目当ての観光客で一杯でした)

 
(リトルベニスを出ると、ボートはリージェンツ・パークの北辺を行きます)


(運河から見上げる教会は普段より美しい)


(カヌーの練習?)


(50分ほどでカムデンロックへ到着)


(雑貨、古着、アクセサリーなどなどの露店、ショップの巨大なマーケットエリアです)

 2012年5月8日

 ※リトル・ベニスのご紹介→
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハムステッドヒースのブルーベル

2012-05-07 18:16:44 | ロンドン日記 (日常)
 この3連休は前半国内旅行にでかけ、今日は一日自宅近辺でゆっくりとしました。今日の天気はあまり良くないとの予報だったのですが、朝起きてみると、太陽が出ています。「これは今のうちに走らねば」ということで、ハムステッドヒースまでランニングに出ました、走るのは、ロンドンマラソン以来2週間ぶりです。

 朝の空気はまだ冷たいですが、いよいよ1年で一番良い季節が近づいている実感があります。木々の新緑、鳥の囀り、自然と体が深呼吸を始めるフレッシュな空気、月並みですが春の歓びがここにはあります。

(毎度のジョギングコース)


(右遠くにシティの高層ビルが見えます。左にはハイゲートの教会)


 森の中を走っていると、ここにもブルーベルが咲いているのを目にしました。先日出かけたアシュリッジ・エステートに比べると、小規模な群生です。時期が後半になっているためか、個体も一廻り、二廻りも大きい感じで、前回ほどの可憐さは感じられないのですが、こんな自宅近くで目にするとは思っていなかったので、思わずカメラを向けてしまいました。朝日が差し込んでいたので、綺麗な撮影は難しく、「まあ記憶サポートだから」と割り切りましたが、とんだ収穫でした。

(森の中の群生)




(ケンウッドハウスの敷地内の群生)







 1時間弱のランの予定が、1時間半以上のラン&ウオーキングになって、素晴らしい一日の始まりとなりました。(予報がぴたりと当たり、その後、直ぐに曇り空になり、昼前には雨になりました)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハンプトン・コート・パレスを訪れる

2012-05-06 23:18:56 | 旅行 海外
 先月(4月)の中盤に、常々一度行きたいと思っていたけど、なかなか行く機会が無かったロンドン郊外の観光スポット「ハンプトンコートパレス」を訪れました。今回は車で行ったのですが、列車ならウォータルーの駅から30分弱で行けます。

(完全な逆光なのですが、入り口です)


 ヘンリー8世が臣下のトマス・ウルジ―枢機卿から献上を受けた(無理やり奪った)宮殿で、ヘンリー8世以後も、18世紀のジョージ2世の世代まで時の君主の宮殿として利用されていたそうです。時代時代で増築がされているため、チューダー朝の建築様式や18世紀のゴシック様式の建築も見ることができます。また、宮殿を取り囲む美しい庭園があることでも有名です。

(門を入った最初の中庭であるベースコート)


 宮殿内は、大別してヘンリー8世関連の居室群(アパートメント)や台所、ウイリアム3世の居室群、メアリー2世の居室、ジョージ2世の居室などのエリアに分かれています。バッキンガム宮殿やウインザー城などと同様に、相当数の部屋がありますから、一つ一つ丁寧に見てしまうと丸1日かかるでしょう。知名度では、バッキンガム宮殿やウインザー城には届かないためか、観光客で一杯ということもないので、ゆっくり自分のペースでのんびりと巡ることができます。私は、部屋そのものよりも、部屋に飾ってある幾つもの絵画やタペストリーのロイヤルコレクションに興味があったので、そちらの方を中心に観ました。

(ヘンリー8世の居室にあるグレートホール)


(グレートホールにかかった豪華なタペストリー)




(美しい時計のあるクロック・コート)
 

(ファウンテンコート)


(チューダー朝の衣服を着た人たちが雰囲気を盛り上げます)
 

 庭園のほうも確かに美しかったですが、10℃を下廻る寒い天気であったことや、さほど庭園には興味がないこともあり、一通り眺めただけに留まりました。






 確かに、バッキンガム宮殿やウインザー城と比較してしまうと、華やかさという点で多少見劣りはすると思いますが、家族づれで週末の1日をゆっくりと過ごすには良いかと思います。

 余談ですが、宮殿の後部(庭園よりもさらに奥)には、ハンプトンコートパークと言う公園(というかただの野原)が広がっています。ちょっと、宮殿に入る前に、朝の清々しい空気の中、短いウォーキングを楽しんだのですが、子鹿の群れを発見。時間と体力のある人は、宮殿訪問の前後に入ってみるのも面白いと思います。



 



 2012年4月15日訪問
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロンドン交響楽団/ ピーター・エトヴェシュ指揮/ クリスチャン・テツラフ ヴァイオリン

2012-05-04 23:03:51 | コンサート (in 欧州)
 週末オペラ、コンサートの3連戦最終日。

 既にMiklosさんが書かれていますが、いつも音楽関係のネタで交流させていただいているブログ仲間の面々(Miklosさん、dognorahさん、Voyage2Artさん、feliz2さん)が、予期せず勢ぞろいという、すごい(?)演奏会となりました。

 皆さん既にレビューをアップされていますので、コンサートの模様は、音楽に造詣の深い皆さまのブログをご覧ください。

 dognorah さんのコンサート評はこちら→

 feliz2 さんのコンサート評はこちら→

 Miklosさんのコンサート評はこちら→
 
 というわけで、1週間近くも出遅れた私は、書くことが無くなったので、手短に。

 多くの人のお目当てだってあろう指揮予定者だったプーレーズは残念ながら数カ月前からキャンセル。それで大量のチケットリターンが出たようで、3階は閉じて、1、2階に詰めての演奏会となりました。

 とにかく、2曲目のシマノフスキのヴァイオリン協奏曲を弾いたテツラフが凄すぎ。テクニックと表現力を併せ持ったこの2枚目ヴァイオリニストの演奏は、シャープな音で、くっきりと音影が浮かび上がり、ただただ驚嘆、脱帽です。年齢的にも私とそんなに変わらないのに、随分若く見えるしな~

(エトヴェシュとテツラフ)


 またプレーズの代役となったエトヴェシュの指揮も良かったです。私ははじめて聞く名前だったのですが、代役とは思えない堂々たる指揮ぶりで、LSOを豪快に鳴らせていました。

3ヶ月ぶりのLSOでしたが、LSOはやっぱり上手いなあと再認識した次第です。

(会場は大きく暖かい拍手に包まれました)




London Symphony Orchestra / Peter Eötvös
Scriabin Symphony No 4 (‘Poem of Ecstasy’)
29 April 2012 / 19:30
Barbican Hall

Peter Eötvös conductor
Christian Tetzlaff violin
Ladies of the London Symphony Chorus
London Symphony Orchestra

Debussy Three Nocturnes
Szymanowski Violin Concerto No 1
Scriabin Symphony No 4 (‘Poem of Ecstasy’)





コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロンドン・フィルハーモニック/ トルトゥリエ指揮/ チィコフスキー交響曲第4番

2012-05-02 22:33:48 | コンサート (in 欧州)
 土曜日の夜、久しぶりにロンドン・フィルハーモニックのコンサートに行きました。

 一曲目は、メシアンの「忘れられた捧げもの」。メシアンは私には理解不能で苦手なのですが、イエス・キリストを描いたこの作品は、メシアンの中でも初期の作品のためか聴き易い曲でした。
 
 二曲目は、ベートーベンのピアノ協奏曲第一番。実演で聴くのははじめてです。ピアノ独奏は中国人の若手ピア二ストHong Xu(何と読むンかしら?)。ボクトツとした、ちょっと老けた新入社員のような感じの人で、同じ中国出身でもジャニーズみたいなランランとは雰囲気が随分違います。弾きぶりはとっても堅実だけど、音はとっても優しい。曲もベートーベンとは思えないような、モーツァルトを思わせるソフトで室内楽のような曲で、ゆったりと楽しめました。Hong Xu君は、アクの強い個性は感じませんでしたが、ショー的な派手なところがなく、しっかりと落ちついた演奏は好感が持てます。

 今回の指揮者ヤン・パスカル・トルトゥリエという人も初めてです。とっても大柄な初老の指揮者で、大きい上に腕を大きく振り上げたり、膝を曲げて屈みこんで弦に指示をしたりで、体を激しく動かすので随分目立ちます。3曲目のチャイコフスキーの交響曲第4番は、その全身を使って精力的にオケを煽り、オケも必死に応えていました。ロンドン・フィルは、洗練された上手さというより、全体としての勢いやパワーを感じます。金管陣が緊張感のある、気持ちがよいほどの音を響き渡らせてくれました。あと、一つ発見。ファゴットのお姉さんがとても綺麗な人でした。あんな人いたっけなあと思って、プログラムを見たらLola Descoursというゲスト・プリンシパルさんだったようです。
 
 今日は中高校生ぐらいの若い感じの人が随分沢山いました。そのせいか、拍手が楽章ごとに入って多少ずっこけるところもありましたが、とても暖かい良い雰囲気の演奏会でした。チィコフスキーのあとは、スタンディングオベーションの凄い拍手でした。

※いつも通りのピンボケ写真ですが・・・

(Hong Xu君)


(指揮のヤン・パスカル・トルトゥリエ)


(すごいスタンディングオベーション)



28 April 2012 7:30pm

Royal Festival Hall 2011/12

London Philharmonic Orchestra
Messiaen, Beethoven and Tchaikovsky


Messiaen Les Offrandes oubliées
Beethoven Piano Concerto No. 1*
Tchaikovsky Symphony No. 4

Yan Pascal Tortelier conductor
Hong Xu piano

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロイヤル・オペラ・ハウス/ 連隊の娘 (ドニゼッティ)

2012-05-01 21:57:47 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 ドゼニティのオペラ『連隊の娘』を見に行きました。ロイヤルオペラでは、このプロダクションでは、これまでタイトルロールのマリー役をナタリー・デセイ(Natalie Dessay)が演じ、最高級の賛辞を受けていたのですが、今回は初めてデセイでないソプラノが出演ということで、違った意味で注目を浴びている公演です。

 そのマリー役を演じたのは、パトリツィア・チョーフィ (Patrizia Ciofi) というイタリア人ソプラノです。流石にデセイには歌、演技ともに一歩及びませんでしたが、かといって何か不満があるかというと決してそんなことはなく、安定した歌唱で、しっかりデセイを引き継いでいたと思います。

 前回は、マリーの恋人トニー役にはフローレスが出ていて、これまた大変な評判だったわけですが、私は前回切符を買い間違えたらしく、フレーレスではなくコリン・リーで聞いています。そして、今回はそのコリン・リーが再び登場。前回同様、柔らかで優しく、かつ声量もあるテノールを聞かせてくれ、ソロ、重唱のたびに聴衆から大きな拍手をもらっていました。ちょっと、演技が大根と言えば、大根だと思うのですが、あの歌を聴かせてくれれば、文句は言いません。

 笑いの絶えない楽しいオペラですし、音楽も耳に優しく心地よいです。プロダクションは特に凝ったところはありませんが、明るくオペラの雰囲気を楽しい雰囲気をよくサポートしています。会場全体にとても和やかな、暖かいムードが充満していた公演でした。今回はAmphithatre Upper Slipsという一番高いところからの観劇でしたが、なんと13ポンド。超お値打ちでした。


(コリン・リー)


(パトリツィア・チョーフィ)


(指揮のYves Abelも一緒に)




27 April, 2012/ 19:30

La Fille du régiment
Donizetti's entertaining opera marches onto the stage in Laurent Pelly's witty production. Irrepressible humour, catchy melodies and comic coincidence make for a delightful evening.

Credits
Director: Laurent Pelly
Music: Gaetano Donizetti
Revival Director: Christian Rath
Dialogue: Agathe Mélinand
Set design: Chantal Thomas
Costume designs: Laurent Pelly
Lighting: Joël Adam
Choreography: Laura Scozzi
Revival Director: Christian Rath

Performers
Conductor: Yves Abel
Marie: Patrizia Ciofi
Tonio: Colin Lee
Sulpice: Alan Opie
La Marquise de Berkenfeld: Ann Murray
Hortensius: Donald Maxwell
La Duchesse de Crackentorp: Ann Widdecombe
Corporal: Jonathan Fisher
Chorus Royal Opera Chorus
Orchestra Orchestra of the Royal Opera House
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする