その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

依田高典 『次世代インターネットの経済学』 岩波新書

2012-05-24 00:34:15 | 
 「本書の目的は、発展著しい情報通信産業を経済学から解き明かしていこうというものである」(はじめに)とある通りだが、残念ながら、目的は未達成に終わったという読後感を持った。

 第1章からは3章では其々コンテンツ、ネットワーク、プラットフォームという情報通信の3つのレイヤーを取り上げて経済学の観点から解説し、4章は規制の経済学、終章は政策提言という構成だが、新書という制約からか、どの章も狭く浅くという感じで、消化不良の不満足感が残る。この産業のダイナミックさは、各レイヤーが入り混じってビジネス領域、プレイヤー、技術が常に変化するところにあると思う。この本のアプローチだと、経済学で見るとこの産業のこの部分は、こう分析できますと言っているだけで、産業全体のダイナミックさが描かれていない。今、学者さんに求められるのは、こうした産業のダイナミクスを解き明かすことであって、経済学で説明できるところを絞りこむことではないと思う。分解して分析するというよりも、要素を統合させて全体像を解き明かすことの方が大事だと思う。(まあ、とっても難しいことだとは思うのだが・・・)

 内容もさることながら、これは私の感情的なところだが、筆者の上から目線は気になった。筆者は、プロの経済学者として相当の自負心を持っているようだが、読んでいて「学者さんはそんなに偉いんですかねえ~」と感じるほど、節々でプライドが覗く。「平明な言葉で啓蒙書」(p237)を読んでいるような私は、もっと畏まって、ご説を拝聴しなくてはいけないのかもしれない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イングリッシュ・ナショナル・オペラ/ さまよえるオランダ人

2012-05-24 00:09:14 | オペラ、バレエ (in 欧州)
新プロダクション。良かった。ROH版より個人的に好み。3幕の宴会シーンはゼンダが輪姦されるようなシーンで、少々趣味が悪いが、1幕の映像を取り入れた幻想的かつ視覚的な舞台作りや、2幕のオーソドックスながらも木造と白熱灯によるシックな照明が雰囲気を作っていた。

オーケストラは個々の細かな首をかしげるところはあるが全体として情熱的で劇的な演奏だった。特に3幕の盛り上がりは良かった。
ガーディナーはやっぱり良い。

迫力ある合唱がとても目立った舞台でもあった。タイトルロールはこのやくが持つ怪しさにおいて不十分だったが、バリトンとしては上手い。ゼンダやくが最初かなり不安定でがっかりだったが、尻上がりに調子をあげて、終盤は見事な歌唱だった。ただ喉から絞り出すようなソプラノは好みではない。恋人役は大根役者だったが歌は良い。父親は良い。

しかし空いてたな。97ポンドの席がなんと25ポンドで2階席前から5列目。2階席は後ろ半分は全くの空席だった。どうしてだろう?




The Flying Dutchman
Wagner
New Production

Sat 28 Apr 12 - Thu 24 May 12

Credits
New production supported by a syndicate of individual donors

Conductor Edward Gardner
Director Jonathan Kent
Designer Paul Brown
Lighting Designer Mark Henderson
Choreographer Denni Sayers
Video Designer Nina Dunn

Cast includes
Daland Clive Bayley
Senta Orla Boylan
Erik Stuart Skelton*
Daland’s Steerman Robert Murray
The Dutchman James Creswell
Mary Susanna Tudor-Thomas

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする