日本の近現代史を専門とする著者の書評集。紹介されている本は全部で350冊以上。著者の歴史好き、本好きが痛いほど伝わってくる。加えて、日本の近現代史を見る視点、論点も知ることができる。
紹介されている本の中で、読んだことのある本は数冊しかなかったので、これからのブックガイドとしても有用。文章が分かり易く、ちょっと捻りがきいているのもページが進む。特に、最初の掴みが良い。例えば、こんな感じ。「『日経新聞』朝刊の一番うしろ、文化欄を担当する記者のなかには、超弩級のクマ好きがいると私は睨んでいる。・・・」(p258)
図書館でパッと見で手に取った本だが、手元に置いて本選びの手引きに使いたい。
【目次】
はしがき
I 本の声を聴く
吉村昭 『彰義隊』
伊藤之雄 『明治天皇』
戸部良一 『日本の近代9 逆説の軍隊』
原田敬一 『国民軍の神話』
横手慎二 『日露戦争史』
山室信一 『日露戦争の世紀』
佐々木英昭 『乃木希典』
山口輝臣 『明治神宮の出現』
波多野勝・黒沢文貴・斎藤聖二・櫻井良樹 編集・解題 『海軍の外交官 竹下勇日記』
細谷雄一 『大英帝国の外交官』
永井和 『近代日本の軍部と政治』
池井優・波多野勝・黒沢文貴 編 『濱口雄幸日記・隨感録』
麻田貞雄 『両大戦間の日米関係』
川田稔・伊藤之雄 編 『二〇世紀日米関係と東アジア』
ポール・クローデル 『孤独な帝国 日本の一九二〇年代』
ピーター・ドウス、小林英夫 編 『帝国という幻想』
大江志乃夫 『張作霖爆殺』
臼井勝美 『満洲国と国際連盟』
安井三吉 『柳条湖事件から盧溝橋事件へ』
細谷千博・斎藤真・今井清一・山道雄 編 『日米関係史 戦争に至る十年』全4巻
劉傑 『日中戦争下の外交』
松浦正孝 『日中戦争期における経済と政治』
石田勇治 編集・翻訳、笠原十九司・吉田裕 編集協力 『資料 ドイツ外交官の見た南京事件』
石川凖吉 『国家総動員史』下巻
小澤眞人・NHK取材班 『赤紙』
入江昭 『太平洋戦争の起源』
細谷千博・本間長世・入江昭・波多野澄雄 編 『太平洋戦争』
読売新聞戦争責任検証委員会 『検証 戦争責任I』
高木惣吉 『自伝的日本海軍始末記』
福田和也 『山下奉文』
粕谷一希 『鎮魂 吉田満とその時代』
藤山楢一 『一青年外交官の太平洋戦争』
若井敏明 『平泉澄』
瀬尾育生 『戦争詩論』
長谷川毅 『暗闘』
野中郁次郎・戸部良一・鎌田伸一・寺本義也・杉之尾宜生・村井友秀 『戦略の本質』
粟屋憲太郎 『東京裁判への道』上・下
日暮吉延 『東京裁判の国際関係』
粟屋憲太郎・伊香俊哉・小田部雄次・宮崎章 編 『東京裁判資料 木戸幸一尋問調書』
山田風太郎 『戦中派復興日記』
ドン・オーバードーファー 『マイク・マンスフィールド』上・下
佐藤優 『国家の罠』
安倍晋三 『美しい国へ』
II 潮流をつかむ
明治維新の再解釈進む
今、日露戦争を振り返る意味
回帰する一九三〇年代論
あの戦争の敗因を学ぶ一〇冊
中国人や韓国人の「満州」を総括して戦後が始まる
日中近現代史と歴史認識
地域が支えた戦没者追悼
III 本はともだち
本はともだち
愛書日記——本よみうり堂
戦争を決意させる瞬間
あとがき
索 引