その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

セバスティアン・ヴァイグレ/読響 ベートーヴェン:交響曲第3番ほか

2019-05-27 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

 今シーズンから読響の常任指揮者に就いたセバスティアン・ヴァイグレの演奏会に当日券で乱入。2年前の二期会の「ばらの騎士」で素晴らしい音楽を聴かせてくれたこのコンビこれから期待大です。ドイツもので固めたプログラムにも引き寄せられました。

 冒頭の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲は、今後の任期やこの演奏会への前奏曲と思えるような、スケール大きくかつ堅固に構築されたファンファーレでした。これからやってくれるんでは・・・と皆が期待したでしょう。

 2曲目のシューマンのチェロ協奏曲。独奏のユリア・ハーゲンは、紺のドレスに身を包み、とっても可愛らしい女性チェリスト。音色はとっても落ちついて安定感あふれるものでした。ただ、そのおかげか、一週間の疲れがどっと吹き出し、あっちの世界行き。ごめんなさいでした。

 期待感一杯で向かえた休憩後のベートーヴェンの「英雄」は驚きや感心が入り混じった聴きごたえたっぷりの演奏でした。まず舞台の1/3程が空きスペースになっている小編成。第一楽章は、テキパキと小気味よく進みます。サントリーホールならではの室内楽的な響きがホールを包みます。続く第二楽章から段々熱が上がってきた感じ。この楽章、私の葬式で使いたいかどうかが、好みの演奏かどうかの判断基準という目茶、主観的判断なのですが、今回は〇。理性と感情のバランスが良くとれた、単なるお涙頂戴の演奏でないところが好みです。そして、第3,4楽章は怒涛の一気の演奏でした。面白いと思ったのは、室内楽的な響きとまるで大編成オケのようなスケール感を持たせるところが上手く使い分けられていて、実に多彩な音の組み合わせが展開されていたところです。ただ、それも小手先で表面上の変化を持たせるというよりも、しっかりした基礎の上にちょっと応用を入れましたという感じで、こういう聴かせ方があるんだと大いに感心しました。

 読響は万全だったとは言えない(特にホルン)と思うのですが、緊張感や集中力は優れたもので、気合が2階席奥の私まではっきりとわかりました。こういう時は、ちょっとした傷とかは全く気にならないです。小編成のためか、弦の一人一人の音までが個別に聴きとれているような感覚でした。終演後の満足度はとっても高く、大きな拍手を送りました。

 それにしても、パーヴォ・N響、ノット・東響、大野・都響などなど強力な東京オケ合戦に、ヴァイグレ・読響がこれからどういう風を吹かせるのか。目が離せません。ほんと、時間とカネという有限の資源をどう使うかが悩ましいです。

 

622回名曲シリーズ

2019 5.24 19:00  サントリーホール
指揮=セバスティアン・ヴァイグレ
チェロ=ユリア・ハーゲン 

ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 作品129
ベートーヴェン:交響曲第3 変ホ長調 作品55「英雄」 

Popular Series No. 622

Friday, 24 May 2019, 19:00 Suntory Hall

Conductor = SEBASTIAN WEIGLE
Cello = JULIA HAGEN

WAGNER: "Die Meistersinger von Nürnberg" Prelude to Act I
SCHUMANN: Cello Concerto in A minor, op. 129
BEETHOVEN: Symphony No. 3 in E flat major, op. 55 "Eroica

コメント
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