墓ない人生

　終活の一環として、葬式代や墓代、永代供養代まで用意している奇特な人もいることだろう。
　今は廉価版の小さなお葬式とかあるようだが、それにしても、人間死んだら金がかかるのだ。

　そんなものは無駄だとばかりに、葬式も墓もいらない、火葬だけしてくれ、と声高に言う者もいる。
　そんな奴に限って、ハワイの海や地中海に散骨してくれとか、セスナで空から散骨してくれとか言うのだ。

　私の場合は、葬式や墓もいらないし、火葬したあとは、骨壺ごとほかの不用品と一緒に納戸にでもしまっておけばいい。
　それが嫌なら、誰にも言わず、燃えないゴミの日にそっと出してくれたらいい。

　火葬したあとの骨など、究極の無用の長物だ。
　金をかけずに処分したところで、バチが当たるとも思えない。
　

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難聴の悩み

　この歳になると、加齢による身体のいろんな変調は避けられない。

　目は緑内障、耳は難聴、歯は入れ歯、肩は五十肩、足は外反母趾、顔のシミはホクロ化。
　まあ、命にかかわるような症状がないだけまだましか。

　一番困るのが難聴だ。
　テレビの音声、特に漫才や漫談、コントなどのお笑い系が、喋りは聞こえるのだが、言葉がところどころ聴き取れない。

　最近の若手の芸人は、早口だし、滑舌が悪いというか、発音が不明瞭な連中が少なくない。
　バラエティ番組と違いテロップがつかないので、話の脈絡がつかめないのだ。
　伏線が聴き取れないとオチで笑えない。

　そんなわけで、最近はお笑い番組はほとんどスルーだ。
　趣味の無料映画鑑賞も、吹替版ではなく字幕版で視聴している。

　飲み会などでの会話も、7割方は聴き取れるのだが、あとの3割は肯定の頷きを返している。
　人の話は、同意を求める問いかけが圧倒的に多いので、それでほとんど凌げる。
　万が一、間違えても、アルコールが入っていると、先方は都合のいいように理解するものだ。

　電話の応答も、相手の声が聴き取りにくいので、無意識にボリュームアップしている。
　家内に言わせると、大声大会レベルに聞こえるらしい。

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