痛みの共有

　人の痛みがわかる、あるいは共有できるのがいい人らしい。
　人の身体の痛みがわかるのは、自分がその痛みを経験した人のみだ。

　末期がんや難病などの痛みは、ほとんどの人は経験していないはずだ。
　ゆえに、その痛みはわからないはずだ。

　やっかいなのは、心の痛みだ。
　身体の痛みと違い、それを理解するのはかなり難しい。

　ましてや共有するとなると至難の業だ。
　そもそも心の痛みとは痛みではなく、程度の差こそあれ、それは悩みというものだろう。

　身体の痛みにせよ、心の悩みにせよ、同じ痛みや悩みを共有するということは、自分も同じ状態にならなければならない。
　誰が好き好んで、そんな状態になりたいだろうか。

　痛みや悩みの共有とは、つきつめれば、同情や憐憫、あるいは、ありきたりのアドバイスのことを言うのだろう。
　相手がそれを欲しているのならあげたらいいし、そうでなければ深刻な顔で聞き流せばいい。

　痛みの共有という言葉に、痛みや悩みのない自身の安堵感や、もっと言えば優越感が垣間見えるのは私だけか。
　

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