みなとみらい駅からプロムナードに出ると、ランドマークタワーの威容が頭上に聳えて、横浜の港に君臨しているかのようだった。薄曇りの横浜は、歩いているうちにうっすらと汗ばむような、残暑が尾を引く中にあって、近代的な高層ビルが海に向かって立ち並んでいる。
八月の炎天を避けて、学童の夏休みが終わるのを待っていた『海のエジプト展』、とうとう見る機会が来た。
みなとみらい駅からの眺め
会場『パシフィコ横浜』に行くには、横浜駅から「みなとみらい線」に乗って二つ目の駅で降りるのだが、地下鉄だとは知らなかった。出来れば地上線で行きたかったが止むを得ない。
紀元前二、三世紀ごろの海底遺物を引き揚げ、空気中に曝すためにはかなりの難関を科学的に処理してきたのだろう。感慨深く思うのは、早々と日本で公開されたこと。開港150周年記念と言う大イベントに実行委員会が力を入れたことや、朝日新聞社、TBS,エジプト大使館等の大きな原動力があったからこそであろう。
会場に入る前に、かなりの期待と言うか、感情の高まりもあったのだけれど、
中に入ってみると意外に沈静した空間が展示物を覆っている。
なんか次元を超えた宇宙物体がそこにある、と言う感じで、古代都市「ヘラクレイオン」の神殿前に建っていたという三体の巨体石像の前に立ったときには、潜んでいる気体が私の頭のはるか上を通り越して、ヘラクレイオンの古代遺跡の中に舞い戻っているのではないか?と思わせたほど深い静謐を帯びていた。最初の展示室である海底遺跡「カノープス」では、実物大の「王妃の像」に惹かれる。彫像はプトレマイオス朝(前三世紀ごろ)のお決まりのスタイルでありながら、シースルーの衣服のひだにギリシャ風の特徴が見られるという。
シースルーの衣服の下に美しい裸像が生々しくも表現されていて、観る人の足を長くとどめている。これだけでも入場料2300円の価値はある。あと一つ、印象深いものがある。ヒエログリフと言われる石碑(ステラ)に刻んだ、王の告知文や事績を象形文字で記録したものであるが、五千年も経た今日に解読できることは、併せて凄いことだと思った。数から言えば、金貨とか印章、装身具、その他生活にかかわる道具類等の小品が多かったが、あまり気を惹かなかった。その当時金貨に彫像が描かれていたことは驚くことではあるけれど、金にはあまり縁がないので目を向けないのかも・・・。