ネットの電子書籍を覗いていると、「島尾ミホ著『海辺の生と死』」の文庫本が目にとまった。
彼女については夫、島尾敏雄ともども、よくは知らないのだが、書評によれば
奄美の自然に育まれた、素直で明快な文章が才能を感じさせるというので、1冊注文した。
夫、島尾俊夫が特攻隊長としてどのような人格を持ち、どのように部下の隊員と接していたのか、
間接的に記述されているかも知れないという期待もあった。
結婚自体は終戦の翌年だったから、戦中の部隊生活まではどうであろうか。
何はともあれ、久しぶりの購読である。
もう1冊は、これも文庫本だが、松本健一著「山本覚馬 付・西周『百一新論』」という、馴染みのない題名ではあるけれど
おなじみのNHK大河ドラマ、『八重の桜』に出てくる兄の覚馬である。
まだ完読していないけれど幕末の動乱期に、一人の会津藩士がよくもこれ程に世界の趨勢を観察して、
日本の進むべき時代を提言し、岩倉卿に建白書を差し上げていたとは驚きである。
山本覚馬と云う一人の軽輩が、藩命によって佐久間象山の門下生となり、多くの知己を得る
ことによって時代の感性と云うものを磨いていった。
鉄砲の指南役であったことも、西洋の文明に向き合わせた一因だったろう。
勝海舟に出会ったことは、外洋の見聞を広げたに違いない。
オランダ留学をした西周と出会い、国際法とも言える『万国法』の知識を得たのも
藩制を超えた、世界の中の日本を意識する大きな元になった。
日本を救うことと、会津藩の瓦解を食い止めようと奔走する姿が、同時進行して痛ましい。
じっくりと読んでみたい本である。