自民党総裁選の火ぶたが切られた。候補三者の舌戦は、安倍政権の政治路線を継承すると言う菅官房長官と、『オール・リセット』自民党の姿を一から変えると云う石破さん。透明性と丁寧な政策の説明が必要だと言う岸田政調会長の、それぞれに主張の違いを明確化しようとした姿勢は窺える。『幕が開けたと思ったら、すでに緞帳は下りていた』告示前に大勢は決まっていたわけで、菅さんが5派閥の後押しを受けて本命と目される。その菅さんが告示日に言っていることと、当選後に遂行する政策に大きな違いはないと思うが、安倍政権が何故に政権を放棄したか、その何故を無視して安倍政権のやり残した政策を引き継ぐと云うのか、今ひとつ分からない。苦労人の菅さんは自分の経歴を披瀝して、下隅の地方出身者から横浜の市会議員を振り出しに政界に入ったと、ある意味大衆を意識した、同情を寄せる内容に思えたのだが、実直な東北人と云う印象は残った。実際に強面の官房長官が記者会見する姿は、取っ付きにくい影の宰相のイメージがあって、表舞台に出るには、そこを何とかしなければと云う参謀の指摘もあったかも知れない。これまでの豪腕とも云える施策の遂行が国内では功を奏してきたとしても、国際の場では如何か。来年九月までの仮の政権という見方もあるが、本人はその先も見据えていると新聞評にあるので、安倍政権を継承すると言っても独自の政策を打ち出さないと、持ち堪えられないのではないか。
多くの国民にとって、一党の総裁争いに期待感はさほど無いと思うが、イコール総理であることで破天荒な世界情勢に一石を投じるほどの気概を見せられるか、見所だと思う。
方や多くの党員党友の意見を吸い上げて、ボトムアップを主張する石破さんも、支持票を削がれたことでトーンがやや弱くなった。岸田さんの中間層を重視して格差を是正すると云う経済政策も、何故今まで出来なかったかと、今までの自公政権の性格からして、木で鼻を括った感もする。やはり一強体制のおごりを糺すには野党を育てるしかない。