相変わらず猛暑が続いてますが、週間予報をみると来週半ばくらいまでは今の猛暑が続くようで、「少し」落ち着くのは来週後半の様子です。そんな暑さのせいか、パソコンもつけていると暑くてたまらないので朝のうちにメールチェックだけしてすぐに切り、昼間もほとんど活動らしい活動をせず、ゴロゴロ時折本を読みつつ、寝て暮らしておりました。ただ、こう暑いと室内でも熱中症になる場合もあるといいますから、注意が必要です。水分補給だけは忘れないようにしていましたが、水道水が、蛇口を捻ってしばらくは生ぬるい、というか温かいお湯として出てくるせいか、あまり美味しく感じられません。と言って冷たいものを取り過ぎるとお腹にきて余計バテてしまいますから、なかなか加減が難しいです。
さて、今日はこの1週間ばかり読んでいた本が片付いたので、その感想を記しておきましょう。
本は、ハヤカワSF文庫の「プロテウス・オペレーション」。作者はジェイムズ・P・ホーガンです。ホーガンの作品というと、20年以上前に「断絶への航海」という作品をこれもハヤカワSF文庫で読んでいるハズなのですが、ホーガンが「ハードSF」の旗手だかなんだかと帯に書かれていたのを覚えているだけで、内容は完全に失念してました。当時の感想も正直覚えていないのですが、ネットで調べて、何となくその話の内容と、なるほど、科学的に飛躍した単なるファンタジーではなく、現代科学の延長線上に想定される事象をおさえたしっかりした作りの話だった、という感想を抱いたのを思い出しました。そのホーガンの本だけに、久々に、該博な科学知識のオンパレードが味わえるのかも、と期待して買ってきたものです。
お話は、ナチス・ドイツが世界を支配している1974年のアメリカからスタートします。第二次大戦でソ連を滅ぼし、圧倒的勝利を収めたドイツに対し、今や自由主義社会は、アメリカ合衆国他僅かな国だけに押し込められ、間近く迫る最終戦争によってその自由の火がかき消されてしまうことは確実とされている、暗黒世界です。この事態に対し、時の大統領J・F・ケネディは、突貫工事で作らせたタイムマシンで大戦前夜に特殊部隊を送り込み、ナチス・ドイツの野望を砕き、世界を改変しようという「プロテウス・オペレーション」を発動します。そうして、戦雲迫る1939年のアメリカ・イギリスに送り込まれた特殊部隊の面々の活躍と苦闘で歴史が動き出す様子が描かれます。
いわゆるタイムトラベル物ですが、何故タイムトラベルできるのか、とか言うような話は一切無く、物語の背景と特殊部隊が35年前のアメリカにたどり着くまでの導入部を、わずか17ページで片付けてしまうひとっ飛びな展開です。
何故1974年のアメリカにタイムトラベルできる技術があるのか、という当然の疑問は、ナチス・ドイツが何故世界を支配できたのか、という話と密接に絡みます。ネタバレすると、実は2025年の未来人達がタイムマシンを発明し、ナチス・ドイツに肩入れして原爆や情報を提供し、天下を取らせたのですが、その機密情報を西側の諜報員がベルリンから盗み出し、解析して1974年のアメリカで機械を組み上げた、という設定になっているのです。
物語は、アインシュタインといった科学者やチャーチル、ルーズベルトといった政治家達など、当時の著名人らを絡めつつ進んでいくのですが、全体の印象としては、ハードSFというよりは冒険活劇な要素を強く感じさせるものがあり、「ホーガンってこんな作風だったけかな?」と疑問を覚えつつも、680頁超の分厚い文庫を、割と楽しく読むことができました。
ただ、読み終わって少し首をかしげたのは、この内容って結局ナチスの悪行は未来人たちの介入のせい、という結論になってしまうことです。フィクションだからそれでいいのかもしれませんし、ヒトラーが善人だったのに未来人にそそのかされて悪の道に堕ちた、というような内容でもなく、やっぱりナチスはナチスなのですが、読みようによってはナチスに免罪符を与えかねないようにも感じられましたので、欧米でこの本を出して大丈夫だったのかな? という疑問を覚えたのです。また、これもネタバレになりますが、登場人物たちはそれなりに幸せにはなりますが、結局最終的に最悪の事態は最悪の事態のまま放置されます。果たして世界が救われもせず、といって破滅も描かれず、それで物語としていいのか? という疑問がありました。
あと、設定もちょっとしんどい気がします。技術内容は2025年の情報をドイツから盗み出して真似した、という話になっているのですが、1974年の技術で本当に50年後の技術を再現できるものでしょうか? パソコンの性能一つとってもたった20年足らずでまさに隔世の感がある進化をしているのを見ても、50年あれば先端科学の分野なんてもっとトンデモない進化を遂げていて、到底真似のしようのないものになっているんじゃなかろうか、という疑問を覚えました。
まあこれは、ホーガンの話だから、という期待値が高すぎたか、あるいはベクトルがずれていたから感じる違和感なのだろうな、と解釈しているのですが、それを気にしなければ、改変された歴史が特殊部隊の活躍で正常な歴史(つまり我々が認識している第二次大戦の経緯)に「修正」されていく様子など、歴史ifものとしては上々の出来だったと思います。1週間楽しめた、ファンタジックな冒険譚でした。
さて、今日はこの1週間ばかり読んでいた本が片付いたので、その感想を記しておきましょう。
本は、ハヤカワSF文庫の「プロテウス・オペレーション」。作者はジェイムズ・P・ホーガンです。ホーガンの作品というと、20年以上前に「断絶への航海」という作品をこれもハヤカワSF文庫で読んでいるハズなのですが、ホーガンが「ハードSF」の旗手だかなんだかと帯に書かれていたのを覚えているだけで、内容は完全に失念してました。当時の感想も正直覚えていないのですが、ネットで調べて、何となくその話の内容と、なるほど、科学的に飛躍した単なるファンタジーではなく、現代科学の延長線上に想定される事象をおさえたしっかりした作りの話だった、という感想を抱いたのを思い出しました。そのホーガンの本だけに、久々に、該博な科学知識のオンパレードが味わえるのかも、と期待して買ってきたものです。
お話は、ナチス・ドイツが世界を支配している1974年のアメリカからスタートします。第二次大戦でソ連を滅ぼし、圧倒的勝利を収めたドイツに対し、今や自由主義社会は、アメリカ合衆国他僅かな国だけに押し込められ、間近く迫る最終戦争によってその自由の火がかき消されてしまうことは確実とされている、暗黒世界です。この事態に対し、時の大統領J・F・ケネディは、突貫工事で作らせたタイムマシンで大戦前夜に特殊部隊を送り込み、ナチス・ドイツの野望を砕き、世界を改変しようという「プロテウス・オペレーション」を発動します。そうして、戦雲迫る1939年のアメリカ・イギリスに送り込まれた特殊部隊の面々の活躍と苦闘で歴史が動き出す様子が描かれます。
いわゆるタイムトラベル物ですが、何故タイムトラベルできるのか、とか言うような話は一切無く、物語の背景と特殊部隊が35年前のアメリカにたどり着くまでの導入部を、わずか17ページで片付けてしまうひとっ飛びな展開です。
何故1974年のアメリカにタイムトラベルできる技術があるのか、という当然の疑問は、ナチス・ドイツが何故世界を支配できたのか、という話と密接に絡みます。ネタバレすると、実は2025年の未来人達がタイムマシンを発明し、ナチス・ドイツに肩入れして原爆や情報を提供し、天下を取らせたのですが、その機密情報を西側の諜報員がベルリンから盗み出し、解析して1974年のアメリカで機械を組み上げた、という設定になっているのです。
物語は、アインシュタインといった科学者やチャーチル、ルーズベルトといった政治家達など、当時の著名人らを絡めつつ進んでいくのですが、全体の印象としては、ハードSFというよりは冒険活劇な要素を強く感じさせるものがあり、「ホーガンってこんな作風だったけかな?」と疑問を覚えつつも、680頁超の分厚い文庫を、割と楽しく読むことができました。
ただ、読み終わって少し首をかしげたのは、この内容って結局ナチスの悪行は未来人たちの介入のせい、という結論になってしまうことです。フィクションだからそれでいいのかもしれませんし、ヒトラーが善人だったのに未来人にそそのかされて悪の道に堕ちた、というような内容でもなく、やっぱりナチスはナチスなのですが、読みようによってはナチスに免罪符を与えかねないようにも感じられましたので、欧米でこの本を出して大丈夫だったのかな? という疑問を覚えたのです。また、これもネタバレになりますが、登場人物たちはそれなりに幸せにはなりますが、結局最終的に最悪の事態は最悪の事態のまま放置されます。果たして世界が救われもせず、といって破滅も描かれず、それで物語としていいのか? という疑問がありました。
あと、設定もちょっとしんどい気がします。技術内容は2025年の情報をドイツから盗み出して真似した、という話になっているのですが、1974年の技術で本当に50年後の技術を再現できるものでしょうか? パソコンの性能一つとってもたった20年足らずでまさに隔世の感がある進化をしているのを見ても、50年あれば先端科学の分野なんてもっとトンデモない進化を遂げていて、到底真似のしようのないものになっているんじゃなかろうか、という疑問を覚えました。
まあこれは、ホーガンの話だから、という期待値が高すぎたか、あるいはベクトルがずれていたから感じる違和感なのだろうな、と解釈しているのですが、それを気にしなければ、改変された歴史が特殊部隊の活躍で正常な歴史(つまり我々が認識している第二次大戦の経緯)に「修正」されていく様子など、歴史ifものとしては上々の出来だったと思います。1週間楽しめた、ファンタジックな冒険譚でした。
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