多くのブロガ―のあいだで好評の「ブリューゲル版画の世界」展に行ってきた。会期中は休みなし。しかも夜7時まで開館なので、仕事の帰りになんとか間に合う(金・土は夜9時まで開館)。版画なので一点一点は小さいが、人がまばらな作品もあり、そういう作品ではゆっくりみることができた。
ブリューゲルは油彩画の「雪の中の狩人」、「バベルの塔」、「農家の婚礼」などで私たちにも馴染み深いが、画家になった初めのころは、版画の下絵を多数描いていたそうだ。油彩画に専念したのは亡くなる前の10年くらいらしい。生年は1525年から1530年のあいだと推定され、没年は1569年。意外に短い生涯だったのだ。
今回の展示構成はテーマごとに七つに分類されている(アルプスの風景、宗教的な寓意、帆船、道徳的な教訓、ことわざ、民衆の生活、四季)。そのどれからもブリューゲルらしさが伝わってくる。一言でいうなら、おおらかな明るさといえるだろうか。風刺的な「七つの罪源」シリーズ(貪欲、傲慢、激怒、怠惰、大食、嫉妬、邪淫)でも、どこかユーモアがある。無数の異形の怪物が出てくるが、どれもアニメ的なキャラクターだ。
※図像は主催者Bunkamuraの特集ページ↓でご覧になれます。「七つの罪源」シリーズの「動画を見る」というコンテンツがあります。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/10_brueghel/index.html
上記のサイトはひじょうによくできていて、これをみているだけでも展覧会に行った気分になれるが、実物はやはりちがう。たとえば「大きな魚は小さな魚を食う」(図像は同サイトの「見どころと展覧会構成」で。図像にカーソルを乗せるとズームアップして面白い)は、実物をみるとひじょうに繊細で、おどろおどろしい感じがしなかった。同様に帆船を描いた作品も驚くほど繊細だった(図像は↑と同じ)。
全体に丸みのある形態が特徴的だ。そのためだろうか、ブリューゲルには肯定的な精神が感じられる。生前には先輩画家ヒエロニムス・ボスの再来といわれることもあったそうだが、ボスの描く毒をふくんだ幻影はブリューゲルにはない。
展示パネルでよくわかったが、当時は版画の制作の分業化が進み、下絵を描く人(ブリューゲル)、版を彫る人、印刷する人がいたそうだ。今となっては無名の職人がブリューゲルの素描をもとに版を彫ったわけだ。私はその職人の技量にも感心してしまった。
(2010.8.11.Bunkamuraザ・ミュージアム)
ブリューゲルは油彩画の「雪の中の狩人」、「バベルの塔」、「農家の婚礼」などで私たちにも馴染み深いが、画家になった初めのころは、版画の下絵を多数描いていたそうだ。油彩画に専念したのは亡くなる前の10年くらいらしい。生年は1525年から1530年のあいだと推定され、没年は1569年。意外に短い生涯だったのだ。
今回の展示構成はテーマごとに七つに分類されている(アルプスの風景、宗教的な寓意、帆船、道徳的な教訓、ことわざ、民衆の生活、四季)。そのどれからもブリューゲルらしさが伝わってくる。一言でいうなら、おおらかな明るさといえるだろうか。風刺的な「七つの罪源」シリーズ(貪欲、傲慢、激怒、怠惰、大食、嫉妬、邪淫)でも、どこかユーモアがある。無数の異形の怪物が出てくるが、どれもアニメ的なキャラクターだ。
※図像は主催者Bunkamuraの特集ページ↓でご覧になれます。「七つの罪源」シリーズの「動画を見る」というコンテンツがあります。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/10_brueghel/index.html
上記のサイトはひじょうによくできていて、これをみているだけでも展覧会に行った気分になれるが、実物はやはりちがう。たとえば「大きな魚は小さな魚を食う」(図像は同サイトの「見どころと展覧会構成」で。図像にカーソルを乗せるとズームアップして面白い)は、実物をみるとひじょうに繊細で、おどろおどろしい感じがしなかった。同様に帆船を描いた作品も驚くほど繊細だった(図像は↑と同じ)。
全体に丸みのある形態が特徴的だ。そのためだろうか、ブリューゲルには肯定的な精神が感じられる。生前には先輩画家ヒエロニムス・ボスの再来といわれることもあったそうだが、ボスの描く毒をふくんだ幻影はブリューゲルにはない。
展示パネルでよくわかったが、当時は版画の制作の分業化が進み、下絵を描く人(ブリューゲル)、版を彫る人、印刷する人がいたそうだ。今となっては無名の職人がブリューゲルの素描をもとに版を彫ったわけだ。私はその職人の技量にも感心してしまった。
(2010.8.11.Bunkamuraザ・ミュージアム)