Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

交響曲第1番“HIROSHIMA”

2010年08月16日 | 音楽
 両親が広島で被爆している被爆二世の作曲家、佐村河内守(さむらごうち・まもる)さんの交響曲第1番“HIROSHIMA”の全曲演奏会があった。この曲は2008年に広島の「G8議長サミット記念コンサート」で第1楽章と第3楽章が演奏され、今年4月には東京でも同じ楽章が演奏された。私は東京での演奏会をきいて、苦しみに満ちた強烈な音響に驚いた。ぜひ第2楽章もきいてみたいと思った。今回の演奏会は京都で開催された。

 東京の演奏会では私をふくめた聴衆のテンションが異常に高まり、演奏終了後は会場を揺るがす拍手とブラヴォーが起きた。私もその一人。演奏中はただただその強烈な音響に打ちのめされた。直前に自伝「交響曲第1番」(講談社)を読んでいたので、その内容と重ね合わせてきいていた。

 今回は二度目だったので、冷静なきき方をしている自分に気がついた。演奏も指揮者の秋山和慶さんが2008年の広島に引き続き二度目なので、この音楽をよくわかっている感じがした。このようにきいてみると、第1楽章は不穏な空気のなかに意外なほどの悲しみがこめられているのを感じた。初めてきく第2楽章はその悲しみを敷衍した楽章だった。第3楽章は原爆の劫火のなかにいるような感じだが、その渦中でクラリネットとファゴット、次いでフルートによってコーダの救済のテーマが顔をのぞかせることに気づいた。全体的に今回はメッセージ性よりも鎮魂の音楽を感じた。

 この演奏会は市民の実行委員会によって開催された。私は実行委員の一人とお目にかかる機会があった。情熱にあふれる素晴らしいかただった。感動の心を失わずに生きておられるかただった。そのかたのブログがあって、演奏会終了後の交流会の模様がアップされている↓。佐村河内さんも参加されて楽しい会になったようだ。
※ブログ「やきにく南山 奮戦記」http://d.hatena.ne.jp/yakinikunanzan/

 私は、演奏会終了後、比叡山延暦寺に行ってみた。お盆のこの時期は夜間特別拝観が催されているときいていた。境内を歩いていたら放送があって、6時から根本中堂で法話と祈願法要があるとのこと。さっそく行ってみた。すでに多くの人が集まっていたが、私も末席できくことができた。法話もありがたかったが、祈願法要の声明がよかった。僧侶4人の音程がぴたりと合っていた。声明はゆるいピッチでうたわれるものと思っていたので、これは新鮮な驚きだった。思えば私は天台声明のほんものをきいたことになるのかもしれない。

 お盆のこの時期に原爆犠牲者をいたむ交響曲第1番“HIROSHIMA”が演奏され、夜は比叡山で祈願法要が営まれたことに、私はなにかの関連を感じた。
(2010.8.14.京都コンサートホール)
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