サントリー芸術財団の「サマーフェスティヴァル2011」の最終日。今年のテーマ作曲家ジュリアン・ユーの室内楽の演奏会。曲目はオリジナル曲4曲とムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」の室内オーケストラのための編曲版。
1曲目はヴァイオリン独奏のための「ビーバーによるパッサカリア」。ビーバーは「ロザリオのソナタ」で知られる17世紀ザルツブルクの作曲家だ。本作は古風な音型で始まり、さまざまに展開されるが、あまりピンとこなかったというのが正直なところ。
2曲目はピアノ、2台のヴィブラフォンとグロッケンシュピールのための「閃光2」。楽器編成からも想像できるように、透明な美しさをもった曲だ。肩を張らずに楽しめる曲。オリジナル曲のなかでは、これが一番気に入った。
3曲目は4人の打楽器奏者とピアノのための「チャコンニッシマ」。音のひびきは前の曲の路線上にあるが、もっとリズムが強くなっている。バルトークの「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」を連想した。
4曲目は室内オーケストラのための「フィロペンタトニア」。アンサンブル・アンテルコンタンポランのためにIRCAMから委嘱された曲。なので――といってよいかどうかわからないが――、一番ゲンダイオンガクっぽい曲だった。
そして5曲目「展覧会の絵」。冒頭のプロムナードはヴィオラで始まり、すぐに管楽器の点描的な音型に引き継がれ、途中に中国的な断片も紛れこむ。要するに意外性に富み、透明感のある編曲だ。中国的な断片は、ちょっとしたいたずらというか、作曲者の署名のようなものだろう。
その後の各曲も面白い。たとえば「サミュエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」の金持ちサミュエル・ゴールデンベルクは、コントラバスとティンパニで演奏されて、威圧的な感じがよく出ている。次のプロムナード(ラヴェルが省略した箇所だ)をはさんで、「リモージュ」は、点描的な音型で駆け抜ける、スリル満点の編曲。
本作は2002年の作品だが、2007年に「キエフの大門」が改訂され、「これまでの楽章の主題がフラッシュバックのように対位法的に重ねられていく」(マリオン・グレイのプログラム・ノート)音型が付加された。演奏がそこに来たときには、アッと息をのんだ。
演奏は板倉康明指揮の東京シンフォニエッタ、ヴァイオリン独奏は山本千鶴。皆さん大健闘だった。
(2011.8.30.サントリーホール小ホール)
1曲目はヴァイオリン独奏のための「ビーバーによるパッサカリア」。ビーバーは「ロザリオのソナタ」で知られる17世紀ザルツブルクの作曲家だ。本作は古風な音型で始まり、さまざまに展開されるが、あまりピンとこなかったというのが正直なところ。
2曲目はピアノ、2台のヴィブラフォンとグロッケンシュピールのための「閃光2」。楽器編成からも想像できるように、透明な美しさをもった曲だ。肩を張らずに楽しめる曲。オリジナル曲のなかでは、これが一番気に入った。
3曲目は4人の打楽器奏者とピアノのための「チャコンニッシマ」。音のひびきは前の曲の路線上にあるが、もっとリズムが強くなっている。バルトークの「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」を連想した。
4曲目は室内オーケストラのための「フィロペンタトニア」。アンサンブル・アンテルコンタンポランのためにIRCAMから委嘱された曲。なので――といってよいかどうかわからないが――、一番ゲンダイオンガクっぽい曲だった。
そして5曲目「展覧会の絵」。冒頭のプロムナードはヴィオラで始まり、すぐに管楽器の点描的な音型に引き継がれ、途中に中国的な断片も紛れこむ。要するに意外性に富み、透明感のある編曲だ。中国的な断片は、ちょっとしたいたずらというか、作曲者の署名のようなものだろう。
その後の各曲も面白い。たとえば「サミュエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」の金持ちサミュエル・ゴールデンベルクは、コントラバスとティンパニで演奏されて、威圧的な感じがよく出ている。次のプロムナード(ラヴェルが省略した箇所だ)をはさんで、「リモージュ」は、点描的な音型で駆け抜ける、スリル満点の編曲。
本作は2002年の作品だが、2007年に「キエフの大門」が改訂され、「これまでの楽章の主題がフラッシュバックのように対位法的に重ねられていく」(マリオン・グレイのプログラム・ノート)音型が付加された。演奏がそこに来たときには、アッと息をのんだ。
演奏は板倉康明指揮の東京シンフォニエッタ、ヴァイオリン独奏は山本千鶴。皆さん大健闘だった。
(2011.8.30.サントリーホール小ホール)