Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ピーター・クラッツオゥのマリンバ作品

2011年09月30日 | 音楽
 南アフリカの作曲家ピーター・クラッツオゥPeter Klatzowのマリンバ作品を集めた演奏会。これは欧米各地で活動を続けるマリンバ奏者、小森邦彦のリサイタル。

 クラッツオゥは1945年生まれ。ヨハネスブルグで学んだ後、ロンドンの王立音楽院に留学。卒業後はパリでナディア・ブーランジェにも師事。1966年に南アフリカに帰国。以後、ケープタウン大学で作曲を教えながら、国際的に活躍している――という経歴の人だ。

 今回の演奏会は日経のコラムで知った。実は同日同時刻に、場所も同じ上野でもう一つ聴きたい演奏会があったので困った。そちらのほうは日本人の作曲家だったので、また聴く機会があるだろうと思って見送った。

 南アフリカ、しかもマリンバというと、2008年に来日した南アフリカの「魔笛」公演を思い出す。モーツァルトの「魔笛」を黒人社会に移して、楽しく、感動的な物語にしてくれた。あのときのオーケストラ(?)が各種のマリンバだった。

 もっともあのときのマリンバはもっと素朴な楽器だった。今回のマリンバは現代の楽器。プログラムは5曲で構成され、マリンバ・ソロから始まって、最後はマリンバとパイプオルガンと2セットの混声合唱のための曲に至る。曲を追うにしたがって、だんだんと編成が大きくなる構成だ。

 2曲目の「ヴァイオリンとマリンバのためのソナタ」が気に入った。3楽章のヴァイオリン・ソナタだが、マリンバだとピアノとはちがった透明感が出る。曲のイメージはラヴェルのような洗練された感じ、といったらよいだろうか。本作は小森邦彦とネタ・ハダーリの委嘱によって作曲され、2002年の東京オペラシティ“B→C小森邦彦マリンバリサイタル”で初演されたそうだ。今回のヴァイオリンはアンサンブル・ノマドなどで活動している花田和加子。すばらしかった。

 4曲目の「6声合唱とマリンバのためのReturn of the moon」はイギリスのキングズシンガーズとエヴェリン・グレーニーの委嘱。カウンターテナー2、テノール2、バリトン1、バス1の各声部があるので、前述のソナタよりも複雑なテクスチュアが楽しめた。合唱はセンセイションズというグループ。しっかりしていたが、カウンターテナーが苦しかった。

 ロビーでは南アフリカのお茶、ルイボスティーが供された。紅茶に似ているが、ノンカフェインだそうだ。穏やかで丸みのある味だった。
(2011.9.29.石橋メモリアルホール)
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