Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

宮本文昭/シティ・フィル

2013年03月19日 | 音楽
 東京シティ・フィルが宮本文昭体制になって1年が過ぎた。その1年目の掉尾を飾る定期が週末にあった。

 1曲目はシベリウスのヴァイオリン協奏曲。ソロはパリ管の副コンサートマスター千々岩英一。同氏はすでにベルクとエルガーの協奏曲を共演している。ベルクがすばらしく、エルガーはあまり記憶に残っていない――申し訳ないが――。今回のシベリウスはその中間といったところか。もっとも、これはあくまでもわたしの主観だ。

 それよりもアンコールが面白かった。細川俊夫の「無伴奏ヴァイオリンのためのエレジー」。細かな音が張り巡らされた、いわゆる現代音楽だ。よくこういう曲をアンコールに選ぶものだ。ヨーロッパでは普通の感覚のような気もするが、日本では珍しい。会場の反応もよかった気がする。

 同氏のツィッター(3月17日)を見たら、最初はシベリウスの初稿の第1楽章カデンツァ――後にシベリウス自身が破棄した――を用意していたそうだ。うーん、と唸ってしまった。それも聴きたかった。同ツィッターによれば、「うまい終結方法が思い浮かばず断念」したそうだ。演奏家のこだわりはすごい。

 2曲目はショスタコーヴィチの交響曲第5番。いつもながら――というべきだろう――全身全霊を投入した熱い演奏。昭和の男のロマン、というと、なにか揶揄しているニュアンスを感じる向きもあるかもしれないが、けっしてそうではない。なんのてらいもなくそれをやってのける姿が板についてきた――少なくともわたしのような聴衆にも違和感がなくなってきた――。

 ブラームスだと少し気恥ずかしい面もあったが、ショスタコーヴィチだからよかったのかもしれない。

 ともかく、気合の入った、張りのある音。同フィルは前任の飯守泰次郎時代から、プロのオーケストラとしては珍しいくらい熱い演奏をしてきた。その熱さはそのままに、音が外向的になってきた。それが宮本文昭の色なのだろう。

 同フィルのブログ(3月13日)によると、リハーサル初日に宮本文昭は「俺がプレーヤーだった頃、こんなことやられたら文句言った」といったくらい、自らのこだわりを押し通したそうだ。それができるオーケストラとの関係は幸せだ。

 なお、付言すると、フルートやオーボエなど、木管で時々ハッとするようなソロがあった。これは宮本文昭の指導のたまものかと、微笑ましく思った。
(2013.3.16.東京オペラシティ)
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