Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ヘレヴェッヘ/読響

2013年06月22日 | 音楽
 フィリップ・ヘレヴェッヘが読響を振るのは初めて。もう何度も来日しているが、日本のオーケストラを振るのは初めてかもしれない。プログラムは2種類用意された。一つはベートーヴェン・プロ、もう一つはシューベルトとシューマン・プロ。わたしは両方聴いてみた。どちらも面白かった。

 ベートーヴェン・プロは、「コリオラン」序曲、交響曲第1番そして第7番。なんといっても、真っ先に感じたのは、リズムのよさだ。粒立ちのよいリズム、明快で、曖昧さがなく、粒子が転がっていくようなリズム、さらにいえば、各奏者がすべて均質に整えられているリズム、奏者によってばらつきのないリズム。

 それがもっともよく表れたのは交響曲第1番だ。リズムの飛沫が飛んでくるような演奏。この曲でこんな演奏を聴いたことはない。ヘレヴェッヘという稀有の個性がとらえた作品像なのだろう。一方、第7番はもともとリズム主体の曲で、そのように演奏されてきたわけだが、ヘレヴェッヘの演奏では、たとえば第2楽章の思いがけないところで細かなリズムの動きが見られた。

 シューベルトとシューマン・プロも基本的には同様の演奏だった。まずシューベルトの交響曲第6番。ハ長調の「ザ・グレート」にたいして、「小ハ長調」と呼ばれている曲だ。第2楽章の三連符の連なり――各パートに受け継がれながら鎖のように連なっていく三連符――が目に見えるようだった。また第1楽章第2主題、木管楽器が奏するその主題を支える弦の刻みが、ハッとするほど明瞭に浮かび上がってきた。

 2曲目はシューマンのチェロ協奏曲。独奏はクレメンス・ハーゲン。これも名演。けっして気張ったり、ことさらに大きく見せたりするわけではないのに、音楽的な充実度でホールを満たした。自然体なのに、自ずから生まれてくる充実度がすごい。ハーゲンはアンコールを弾いてくれた。バッハの無伴奏チェロ組曲第1番からアルマンド。ヘレヴェッヘも後ろで聴いていた。

 3曲目はシューマンの交響曲第3番「ライン」。この曲ほど演奏者によって大きく変わる曲もない。一方では高らかにホルンが鳴り、一点の雲もない晴れ渡った空のように晴朗な演奏があるかと思えば、他方ではシューマン特有の(といわれている)モヤモヤしたオーケストレーションそのままの演奏。ヘレヴェッヘは後者だった。この曲のありのままの姿を見せてもらった気がする。なお、第2楽章のテンポが速いなと思った。帰宅してからインターネットでスコアを見てみたら、四分音符=100だった。そのテンポだったかもしれない。
(2013.6.16&21.サントリーホール)
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